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【連載小説】据え膳、食わぬは~第二話童顔の罠


据え膳食わぬは、男の恥というが、紐川慶一郎、通称ケイちゃんにとっては、これが生きる術。アラサーのフリーターでありながら、その童顔は彼の最大の武器。大学生に間違われることも彼の日常茶飯事。しかし、そんな彼にも変化の風が吹き始めた。

第二話「童顔の罠」

ある日、ケイちゃんはいつものように、街角でふとした瞬間に目が合った女性に声をかけた。彼女は美しく、優雅で、何よりも彼の童顔に心を奪われたようだった。彼女は名をユリと言い、地元の有名な花屋の娘だった。

ユリはケイちゃんを自宅に招き、彼のために手料理を振る舞った。ケイちゃんはその美味しさに舌鼓を打ちながら、ユリの家族が経営する花屋の話を聞いた。彼女の家族は代々続く花屋を守りながら、地域社会にも貢献しているという。ケイちゃんは、自分の生活とは対照的なユリの生き方に、少しだけ羨望の念を抱いた。

食事が終わり、ユリがコーヒーを淹れている間、ケイちゃんはふと花屋の裏手に目をやった。そこには、色とりどりの花が咲き乱れ、彼の心を和ませた。しかし、その中に一つだけ、枯れかけた花があった。それは、彼の心の中にもある何かを象徴しているように思えた。

ユリが戻ってきたとき、ケイちゃんは思わず尋ねた。「その枯れかけの花は何?」と。ユリは微笑みながら答えた。「あれは、誰かが大切にしなければいけない花。放っておけば枯れるけど、愛情を注げばまた咲くのよ」と。

その言葉がケイちゃんの心に響いた。彼は自分の生き方を見つめ直すきっかけを得たのだ。ユリとの出会いは、彼にとってただの食事の誘い以上のものだった。それは、彼の人生に新しい花を咲かせるための、小さな種だったのかもしれない。

次回、ケイちゃんの新たな一歩をお楽しみに。彼は自分の中の枯れかけた花を救えるのか、それとも童顔の罠に再びハマってしまうのか。続きは、またこのページで。

このストーリーはフィクションであり、現実の事柄とは一切関係ありません。

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