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小説版累計10万部突破!!『呪術廻戦』担当編集と、小説版の担当編集にインタビュー!前編

どうも、JブックスのWEB担当ソラです。

顔_ソラくん

WEB担当ソラ。すっかりライターみたいになってる。


相変わらず編集部でもないのに記事を書いています。今回は、今まさに人気が拡大中のマンガ『呪術廻戦』のマンガの担当編集者と、小説版の担当編集者にインタビューしてみました!

WEB担当 ソラ:JUMP j BOOKSから発売された小説『呪術廻戦 逝く夏と還る秋』『呪術廻戦 夜明けのいばら道』ともに重版出来!!ということで、マンガの担当編集と、小説版の担当編集のお二人にお話を伺いたいと思います!

片山:『呪術廻戦』担当編集片山です。よろしくおねがいします!

片山さん

少年ジャンプ反骨のヒットメーカー・片山さん
別の作品のインタビューでも話題に。
(画像は「呪術廻戦」3巻のオマケマンガより)

中本:小説版の編集を担当した中本です。

顔_中本くん

Jブックスのラッキー重版王・中本さん
最近、奮発して新しい寝具を買い揃えた。

ソラ:よろしくお願いいたします!『呪術廻戦』ですが、年末にアニメが発表され、年始にコミックスは2冊同時発売、さらに小説版も重版と、まさに大人気ですね!

中本:『呪術廻戦 逝く夏と還る秋』は最近また重版がかかりました!これで小説版は累計10万部突破です!

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呪術廻戦 逝く夏と還る秋
小説版が重版=マンガが大人気

小説の企画はいつ立ち上がりました?

ソラ:第1弾、第2弾と短いスパンで小説版が発売され、どちらも重版がかかるほど好評を博しております。
中本さんから聞いたんですが、小説版の企画はかなり早くから立ち上がっていたそうですね。
中本:マンガの1巻が出て、すぐにそういった話をしたんですよ。すると片山さんが「やりましょう!」と即答してくださって。2018年の夏前くらいですかね。
ソラ:でも実はその後、先生とのやりとりに意外と時間がかかったということだったようですね。
片山:芥見先生も自分も、どういう作家さんがどんなふうに書かれるのかを知りたかった。それで中本さんが提案してくれたのですが、いきなり完成原稿を拝見するのでなく、ショートストーリーを北國(ばらっど)先生に書いてもらってから判断させていただく、というやり方になりました。
ソラ:なるほどなるほど。
片山:その時からの僕の印象ですけど、(北國先生が)キャラクターを結構掴んでおり、掛け合いがうまくできているなと。「あ、すごい。ちゃんと『呪術廻戦』を読み込んでいただいている」「キャラを動かせているなぁ」と感じました。

ソラ:中本さんからも北國先生がかなりキャラクターを掴んでいるというお話は伺っていたのですが、片山さんから見ても、そう感じたと。僕も読んでいて違和感がないな、と思いました。

企画から立ち上げまではだいたいどのくらい?

片山:北國先生の執筆速度が早いとおっしゃっていましたが、僕が拝見するプロットになるまでどれくらいかかったのでしょうか?
中本:最初のころはやはり僕も北國先生もキャラクターを捉えられているかわからない部分もあったので何回もやり取りして、結局一ヶ月くらいかかってできたものを片山さんにお見せした感じですね。
第2弾はもっと早かったかなと思います。やはり小説版の一回目は作家さんも初めてその作品に触れることになるので、キャラクターを掴むまでに時間がかかるな、という印象があります。
片山:僕が見て、「じゃあこのプロットでお願いします!」と返事してから、執筆を始めて、大体どれくらいかかるんでしょうか?
中本:大体一ヶ月半くらいですかね…
ソラ・片山:全部で!?
中本:全部です。
ソラ・片山:へえぇーー!早い!
中本:確かに早い…と思います。第1弾は、プロットの戻しが来たのが12月の頭くらいで、1月中旬くらいには原稿があらかた出来てたんじゃないかな…そこから細かく直して、編集部で確認して、2月の頭には片山さんに渡していたはずです。
北國先生は真面目な方なので、早めの締め切りでお願いすると「出来るかわかりません。」とおっしゃるんですけど、すごい頑張ってなんだかんだあげてくださるという…笑。
片山:他に仕事もされてる中で、ですもんね。
中本:そうですね。それに小説版は(発売される)時期が重要になる商品でもあるので、作家さんにこのタイミングまでに書いてもらいたい、という時があるんですよ。コミックスと同時発売にしたいとか、こちらの事情だったりするわけですが。
片山:でも、それは基本にして最大の戦略ですよね。
中本:第2弾も、アニメの発表があって、次にコミックスが2冊同時発売になるという事になって、可能であれば小説もそこに間に合わせる形で発売出来る様にしたいという話になり…。
なので、スケジュール感は少し特殊かもしれないですね。別の編集部だともっと先までラインナップが決まっていたりするらしいですし。
2冊とも北國先生のスピード感があればこその進行でした。

片山:(連載からコミックスまで短いスパンで出るジャンプなどの)定期刊行物で連載出来るかどうかは、人を選びますよ。
その中で、こういうスピード感を持って発売に合わせて書き上げられるのは、なかなかできることではないので、やはり北國先生は凄いですよ。
ソラ:たしかに、自分のペースではないんですもんね。
中本:しかも非常に謙虚な方なんですよね。

小説の監修はキャラクターを見る

ソラ:本編も群像劇の様相を呈してきているので、小説を読んでいても「こんな一幕もありそうだな」と自然に想像ができます。
製作時、監修時にそうした感想は一個人として抱いたり、また編集者として冷静にバランスをとっていたりするのでしょうか。

片山:原作の担当として、小説の監修を行っていますが、それは要は原作と相違ないかという確認になります。例えばキャラ同士の掛け合いに関して、このキャラがこう言ったら、このキャラはこう返すだろうというのに違和感が無いのが、いちばん大切だと思っています。それは突き詰めると結局キャラクターの行動原理に関わることだと思っているので。『HUNTER×HUNTER』に「その人を知りたければその人が何に対して怒りを感じるかを知れ」という言葉がありますが、あれはほとんどのキャラクターの行動原理に言えることだと思っていて、とても分かりやすい例えだと思っています。
そういう観点で、「キャラクターの価値観が見て取れるか」というのをチェックしたとき、北國先生はそれをよくご理解していただいているのでは、と思いました。

ソラ:なるほどなるほど!今の話を聞いて逆にちょっと気になったのが…小説の第1弾に収録されている真人の話…なんですけど。
片山:あの、じいちゃんのエピソードですね。

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じいちゃんの話こと「闇中寓話」『逝く夏と還る秋』収録


ソラ:はい。あれって敵サイドの話じゃないですか。真人の行動や真人の心中って、原作を読んでいても、未だに測りきれないというか、掴みきれない感じはあると思うんですが、この話が原作サイドとしてOKだったっていうのがすごく気になりました。

片山:単純に、面白かったんだと思います。真人が人間の老人と、やり取りしていたというアイデアが面白いしですし。これは僕の希望というか勝手に思っていることでもあるのですが、真人…敵サイドに関することは、なかなか原作で描けないところなので、それを小説で読めるというのは、スピンオフとして醍醐味があるなと思います。
ソラ:中本さんは最初は、真人のエピソードをやるっていう発想はなかったらしいですね。
中本:(Jブックス編集部の)六郷さんから「敵キャラのエピソードも入れた方が良い」とアドバイスをもらって、真人の話でできそうなことがないか北國先生にお尋ねしてみたんですよ。そしたらすごい面白いアイディアがあがってきて。最初は出てくるのが、おじいちゃんじゃなくて少女で、設定も少し違ったんです。ただ5話目(「守鬼幻視行」)でも子どもがメインで出てくるので、かぶらないように変えられないか提案してみたんです。それで結局おじいちゃんになって落ち着きました。結果的に読者に好評だったのでよかったです。
僕自身が主人公サイドに感情移入しがちなタイプなので、この反響はすごい今後の参考になりました。最近、別の編集部の方々が対談している記事で、「少年漫画は主人公しか描いちゃいけないんです」という発言があって、なるほどなと思いました。敵とかのマンガを描きたくなってしまうんだけど、描くと人気が落ちてしまうという…。
片山:そうですね、それでいうと「真人と人間の老人の交流」という、マンガでは絶対に描けないような部分が見えるのが面白いなというのは、改めて思いました。

ソラ:マンガで敵サイドをガッツリ描くっていうのも昨今はあると思うんですが、『呪術廻戦』はそういうアプローチはあまりやらないっていう方針があるんでしょうか?
片山:必要があればこれから描くと思いますよ!でも敵サイドの心象的なものはあまり描かれないですよね。ブリーフィング(作戦会議)しているところは結構ありますけど…
中本:麻雀してましたよね。
片山:そうですね。麻雀していたりとか…行動原理がシンプルなんですよね、呪霊たちは。

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麻雀やってる呪霊たち(呪術廻戦 第90話より)


中本:確かに、何の恐怖から生まれたかというのによるというか…
片山:そう…性格はもちろん違うんですが、欲求に対してシンプルなのが呪霊なので、ことさら描写する必要がないのかもしれないですね。描写の必要性があるとしたら、これから出てくるかもしれません。
芥見先生は「呪霊」というものを敵…というより完全な悪として描いているのではないのは、読んでる方はわかっているかもしれませんが、それは今後、ポイントになってくる可能性があるので…

ソラ・中本:なるほど…。

芥見下々先生ももちろん監修しています

ソラ:原作の芥見下々先生は元々小説を読まれるとのことでしたが、小説版の際は監修されているのでしょうか?
片山 先生ももちろん原稿を拝見していて、主に見ているのはやはり「そのキャラクターがそういうセリフを言うのか」というところだと思います。ただ指摘は少ないです。あとは能力的にこういうことはできないです、という設定に関することも重点的にチェックしていただきました。
中本:そうですね。作品によってはかなり入念に修正することもあるのですが、『呪術廻戦』の小説2冊に関しては少ないほうだと思います。
片山:手順としては、僕が気になるところを先にチェックして、芥見先生がそれに対する回答をしたり、代案を出したり…という流れです。

(以下、いくつかiPadに入っているやり取りを見せてもらう。)

小説のプロットなどの思い出話

ソラ:これまで小説の第1弾、第2弾をあわせて短編が10編となりましたが、プロットの数はもっと多かったのでしょうか?
中本:プロット段階では掲載した短編の倍ぐらいは北國先生に案をあげていただいています。なので、各巻ともに10本ずつぐらいでしょうか。あげていただいた後に、僕からここをこうすると面白くなりそうだ、などの意見を出して、まとまったら原作サイドに提出という感じです。原作担当がチェックして問題なければ、最終的には芥見先生にどの案なら執筆可能かを選んでいただきます。
ソラ:プロットの中で、特に興味深かったもの、採用されなかったもの、もったいなかった、と思ったものはございましたか。
片山:先程お話しした真人の話などは、もちろん面白そうだなと思いましたね。…最初に書いてもらったショートストーリーは、結局使われなかったですよね?
中本:使われなかったですね…使うタイミングがなかった…のかな。
片山:デパ地下に行く話ありましたよね。
中本:そうです、デパ地下っていう舞台は、シチュエーションを設定してもらったほうが書きやすいから、ということで芥見先生にお聞きしたら「ではデパ地下で」となって、北國先生に2本書いていただきました。
片山:面白かったですけどね。とことんふざけたものとかも読んでみたいですね(笑)。
中本:採用されなかったものといえば、第2弾の狗巻と釘崎のエピソード(第1話「野薔薇と棘」)は、別の組み合わせで同じような話を、第1弾を作るときに一度提案したことあるんです。その時は採用されませんでしたが、第2弾の時にあの2人の組み合わせにして再度提出してみたらOKになりました。タイミングもあるかと思います。
ソラ:なるほど!そういうこともあるんですね!

野薔薇と棘の試し読みはコチラ

インタビュー後編では、北國先生の意外な事実や、芥見先生の描き下ろしイラストや、マンガの制作工程など、さらに踏み込んだ話へ!

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『呪術廻戦』は週刊少年ジャンプで大人気連載中!!

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