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ハイパーカジュアルゲーム会社で1ヶ月インターンしてきました!

 この夏、1ヶ月ほどハイパーカジュアルゲームを開発している会社で就業インターンしてきました。本稿では、そこで経験したことを紹介していきます!

なぜハイパーカジュアルゲームに?

 体験談をお伝えするにあたり、冒頭に僕がハイパーカジュアルゲーム会社でインターンした動機について先に明記させてください。以下の3つです!
 1つは、ターゲット層の幅広さです。ハイパーカジュアルゲームをプレイしている人のなかには、普段ゲームをしない人やコンシュマーゲームを持っていない人などゲームにそこまで熱心じゃない人が少なくない印象を受けます。スマホの持つ手軽さを売りに上述した幅広い層に面白いゲーム体験を提供しているジャンルという点でかなり惹かれました。

 もう1つは、ダウンロード数上位の会社がどのように面白いゲームを作っているのか開発現場に興味があったからです。今回、App Annie Japanが公表したゲームダウンロード数ランキング上位の会社でインターンをさせていただいたのですが、トップアプリがどのように生み出されているのか、その一端を知ることができました。

 そして、最後にエンジニアリング能力を高められるという謳い文句に惹かれたことが理由にあります。Twitter等で見聞を広めてみると、ハイパーカジュアルゲーム業界を指してスピード感ある開発や1人でゲームを作り切る底力が求められる、面白いを数値化するなどなど、様々な点において他のゲームジャンルの開発現場とはまた違った学びが多いと言われていました。こういったツイート群をきっかけに今回ハイパーカジュアルゲームにチャレンジしてみました!


1.開発体制

 僕がインターンした会社では、3人1チーム体制でゲーム開発していました。全体を統括するリーダーとデザイナー、エンジニア(私)の計3名です。ゲームの面白さや視覚効果の実装がエンジニア1人の手によって良くも悪くもなってしまうことの責任感に驚く方も多いんじゃないでしょうか。かくいう僕も大規模開発と違ってプルリクしたり、チーム開発然とした開発はしないとは聞き及んでましたが、まさか本当にエンジニア1人とは予想だにしていなくてビビり倒しました。初日は工程通りに行けるのか非常に戦々恐々としていたことをよく覚えています。

2.開発期間

 次に、開発期間についてです。基本エンジニアにヒアリングしてその都度決めますが、だいたい5日でデプロイを目指します。この5日間のうちにゲーム開発や広告用の動画、デザイン素材を作成していきます。このデプロイではユーザーテストを目的に、開発したゲームが売れるかどうか開発の継続/撤退を図ります。その後、ユーザーテストで目標の数値を達成したら本格的にステージの拡張やゲームのブラッシュアップを行なっていきます。

3.開発フロー

(1)3人チームで企画の立案、工数の確認、デザインに関する意見出し
(2)開発!
(3)ゲームをデプロイし、CPIコストが規定値に達するかテスト
(4)CPIコストが規定値に達したら、LTVの改善をするためにゲームをリッチにしたり、ゲームサイクルに手を入れる

 僕が所属したチームでは、上記の開発フローで進んでいきました。面白いなと感じたのはアプリを分析するために様々なSDKを導入し、自分たちが開発したアプリの動向を分析したことです。現場の方が「ハイカジはジャンルではなく、ビジネスモデル」とおっしゃられていましたが、自分が開発したアプリをマーケみたいに色々と分析したことは現場に入らずに個人開発してたら一生できなかった経験でした。特に、初期段階で小さくリリースして広告からの流入率から自分たちが開発したゲームが面白いかどうか判断する点は自分ありきなゲームに収束せず、まさにユーザー視点に適った開発フローだと感じました。

※捕捉
CPIとはCost Per Installの略で広告出稿あたりのユーザー獲得単価のことを指し、LTVはLife Time Valueの略で顧客生涯価値と称してユーザーがどれだけ長くゲームを触ってバナー広告や動画広告から収益を上げられるかを示す指標です。インスタとかfacebookの動画広告で見るアレからCPIを測ってると言ったらわかりやすいでしょうか。ハイカジでは、ああいった動画広告を出して、それを視聴してもらった際にどれだけ多くの人がその動画から「このゲーム面白そう。ちょっとやってみよう」とインストールしてもらえるか、またインストールした後に繰り返しゲームをプレイしてもらえるかを指標にゲームの良し悪しを決めています。開発フローでは、これをCPIをあげるパートとLTVをあげるパートの2フェーズに分けて開発を進めています。

4.実際に開発してみての感想

 チームにアサインしたエンジニアは自分1人なので基本一人で実装していきます。今回、僕はデザイナーさんが渡してくれたモック(xdとかではなく、シーンに配置してくれたもの)やParticleを元に機能実装していきました。
 最初は自分の技術力で通用するのかどうか不安だったんですが、意外とどうにかなりました。一度開発したことがあるジャンルに近かったこと、実装しなければいけない機能に対する知識がたまたまあったことが活きました。一方で、インゲーム開発以外に当たる解析ツールの利用や企画の練り直しによる機能修正等は初体験だったこともあり、天和やんわでした。その結果、工数が想定より伸びてしまうこともあったので工数通りに作り切ることの難しさを痛感することとなりました。
※この節を執筆した後にあまり知見がないジャンルを開発する運びとなり、なんだかんだ挫折感を味わうことになりました。モットツヨクナリタイ...

 また、開発をしていて特に印象深かったのは、GDPR対策やユーザーの継続率や到達率など様々なデータを分析する各種SDKを組み込んだことです。これまでの自分の開発経験にはなかったものなので大変勉強になりました。私がインターンさせていただいたとこでは、Facebook SDK、GameAnalytics SDK、Tenjin SDK、UnityAnalyticsその他内製ものを利用していました。
 この他にも開発途中にコーディング以外にもデザインに口を出したり、ユーザーの訴求効果だったり、ゲームサイクルを瞬時に理解できるかという観点から企画にコメントするなど、幅広くゲームを作り上げていく工程もあったのも大変印象的な体験でした。とくに、リリース済みアプリが既にどれくらいユーザーを獲得できているか分析してくれる、SensorTowerというサービスを利用することでゲームジャンルごとの訴求効果を考えた経験は将来的に個人開発でもやってみたいなと思いました。

5.使用されてる市販アセット

 当然っちゃ当然ですが、インターン中にハイカジ現場で用いられているアセットを知ることができました。ハイカジ特有のモデルやパーティクルが気になってたんですよね。これらは個人開発でもハイカジっぽいゲームを作りたいと考えている人にとって有益な情報だと思いますので以下に紹介します。

クリアエフェクトとか3Dの視覚効果などパーティクル系
カメラエフェクト系
画像をクラッシュする系
3Dオブジェクトを崩すやつ系(木を掘るやつとか、ビーズスライス系)
・人をグニャングニャンさせたり、機敏な動きをさせる時(Puppet Master、Final Ik、Ragdoll Helper、Animation Converter)

6.ハイカジでインターンして良かったこと!

1. 個人開発に活きる!
 もちろん、ハイパーカジュアルゲームというジャンルは100個使って1個当たれば上々(ユーザー獲得単価30円以下)という世界なので、無料広告ビジネスモデルという点も重なって個人開発に全部が全部寄与するわけではないかもしれません。しかし、①インゲームを絶えず作りながらユーザー体験を試行すること、②数値を取ってユーザーにとって魅力的なゲームかどうか考えること、③短い工数でゲームを作り切ることは個人開発にもそのまま活かしていきたい視点だと感じました。
 また、ハイパーカジュアルというビジネスモデルにおいて特に大事にされている印象を受けた、「小さく生んで大きく育てるゲーム開発体制によって1ゲームの当たり外れによる業績への影響を小さくし、そしてCPIテスト等の確かな評価基準に基づいて大きくスケールしていく仕組みづくり」は将来的に個人開発を通して副業チャレンジやっていく上でも心がけていきたいと思いました。

2. 自分の実力とハードルとで丁度いい塩梅だった
 一般のソーシャルゲーム開発会社で長期インターンすると、通信処理や課金処理、アセットバンドル管理、バグ/チート対応等々といった分野で現場で採用されているアーキテクチャのもと共同開発していく運びになることが多いと思います。これらは多くの人が恐らく個人開発の領域であまり触れたことがない分野になると思いますので、いきなりこれを経験するのは結構大変なんじゃないでしょうか。その点、ハイパーカジュアルでの開発は個人開発で培った技術とも重なる部分が多く、自分の知識と地続きで色々とチャレンジできたことは大変魅力に感じました。

3. 現場で使われているUnityアセットとか色々を知ることができた
 内製のデザインとかライブラリは持ち出すことができませんが、Unityのオンラインストアで販売されているアセットなら別!ということで色々と便利なライブラリやデザイン、モデル素材を知ることができました。個人開発のモチベ爆上がりです。

5.やってみて感じた課題感(自分にとって!)

 ハイカジ業界の現場にエンジニアとして入ったことでスピード感ある開発やマーケティング部分、インゲームを全て担当することの面白み等を実際に味わうことができました。一方で、Jobを受ける前から頭では分かっていたのですが、ソースコードを分担して実装したりコードレビュー等を通して自分のコードを評価してもらえるフェーズがないことに少し不安も覚えました。僕はまだUnity/C#学習歴ちょうど1年と新米もいいとこなので、ファーストキャリアにハイカジ業界を選ぶと技術力を向上するための視点が自分のコーディングのみに限られてしまう就業環境のなか、場合によっては自分が望ましいコード/好ましいコードをよく知らないままエンジニア歴を積み重ねてしまうのかもとも感じました。
 もちろん、エンジニアはコードを書くだけが仕事ではないという話を度々お聞きしますし、ハイカジでの働き方はまさに企画立案や数値を見るなどコーディング以外でも売り上げや作品作りに寄与する能力が磨かれるので大変面白かったのも事実です。
 ただ、エンジニアとして就職する以上は「処理が早い/重い記述」とか「設計や擬集性を観点に良いコード」、「人の書いたコードを精読して読解する能力」など、エンジニアリングに関して求められるアセットをはじめに理解・習得した上でスケールが小さい開発現場やスピードが求められる開発現場など個々の現場でそれぞれ求められる技術力に特化した働き方に落ち着いても遅くないのでは?という考えに至りました。(恐らく評価軸が定まらないまま何処か汚いコード書きたくない/良くないコード書きたくないと強く思い込んでるも一因です。)


最後に

 以上、僕が体験したことや感じたことなどをざっくりとまとめてみました!ユーザー視点を挟みながらも色んなインゲームを短期間にいっぱい作る体験はなかなかに面白かったです!

 このnoteを読んでハイパーカジュアルゲームに興味を持った人はUnity JapanさんがVoodooをゲストにハイパーカジュアルゲームの開発フローやゲームジャンル、お金の話について色々解説している動画があるのでそちらも併せてご視聴ください。僕はこれを視聴してからインターンに参加したら進研ゼミ状態になりました!

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