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一本のパス
取引先の営業さんにフットサルしてるなら、今度一緒にやりませんか?と、誘われ、今後の付き合いもあるしなと参加したことがあった。
仕事を終えた後、指定されたフットサル場に行き、その場にいたメンツの経歴を訊くと、
・高校サッカー選手権で県大会ベスト4までいきました。
・小学校から大学までサッカーやってました。
という人ばかり。
営業さんは小学校からJリーグのジュニアユース→ユースでプレーし、プロは諦めたけど大学でもプレーというガチ勢。
中には、
高校時代、1年からレギュラー。
2、3年の時に高校サッカー選手権で全国に行き、ベスト4だか8。
サッカーは高校で引退し医大に現役合格。
現在は研修医をしています。
って、人がいた。
その人と一緒に来た同じ研修医の人から、
「Mr.挫折知らず」
と、言われていて試合中も
「挫折知らず、こっち!」
って、あだ名で言っていたので最後まで本名が分からなかった。
僕のサッカーのキャリアは大人になってから友達に誘われて始めました。
格が違いすぎる。
“ なんで俺、呼んだの… ”
アウェーにいる気分だった。
久しぶりなのでアップを入念にしますと言って、皆のプレーを見ているとキックの音が僕とは全く違う。
パススピードも。
そんなスピードのパス、俺、トラップできねーよと思いながら見ていた。
入念なアップで時間をつぶしても限界がある。
営業さんに言われ、同じチームでプレー。
早い。
とにかく早い。
身のこなし、ドリブル、パス、ボールを持った相手への寄せ。何より判断が早い。
全員がほぼ拮抗するレベルの中、足手まといがいると、そいつが勝敗を左右する。
その足手まといが僕。
分かってるけど、どうすれば。
思っていたらボールが来た。
トラップし顔を上げると敵が目の前に2人。
さらに遅れて1人がプレッシャーをかけてきた。
『はやっ!』と、思ってると敵の先に営業さんが見えた。
パスが通ればGKと1対1の好機。
でも、距離があったのでパスを通すには強めのボール。
僕のレベルだとシュートレベルのボールスピードじゃないと通らない。
“ ごめんなさい ”
と、思いながら寄せてきた敵の間を抜いて営業さんにシュートばりのパス。
それを営業さんは利き足じゃない左足で難なく吸い付くようなトラップ。
GKはパスが通ると思ってなかったようで反応が遅れ、営業さんはGKを鮮やかにかわしてゴール。
『すげぇ…』
営業さんのプレーに声が出た。
営業さんは右手をあげ親指を立てて、
「ユリアンさん、ナイス!目ぇ、合ってたし絶対、来ると思ってました」
そう言って抱き着いてきた。
後ろから、
「あんなに寄せられてるのに(2人の)間、通すんだ。すげーな」
って、ベンチからの声が聞こえた。
僕のまぐれのパスは狙いすましたスルーパスと評価されていた。
その試合は確か2-1で勝った。
試合後、初対面のチームメイトに
「さっきのすごかったっすね」
と、言われたが多分、何とも言えない表情してたと思う。
活躍できたのはこの1本のパスだけ。
その後は、
『ちょっと足捻っちゃって』
言い訳して、グラウンド使用時間が過ぎるのを待った。
営業さんから「また、やりましょう」と言われたが色々、理由を作って2度と行かなかった。
レベルが違いすぎて体じゃなく心が疲れた。
高いレベルを経験できた良い思い出とかじゃなく、あまりのレベルの違いにただただ怖かった。
レベルの高いサッカー・フットサルは僕にとってプレーするものじゃなく観るものと分かった。
今日の深夜、FIFAクラブワールドカップの3位決定戦と決勝戦が行われるのを番組表で確認して思い出した出来れば忘れたい思い出だけど、書くことが思いつかなかったので今日のnoteに。
ジュースが飲みたいです('ω')ノ