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「母と暮らせば」を観た

吉永小百合と二宮和也の、「母と暮らせば」井上ひさし を観た。
ずっと泣いてしまった。

前に、宮沢りえと原田芳雄の「父と暮らせば」の母版なのか?と思っていたが、全然違った。

 長崎原爆の話だ。
大学に通っていた息子が、亡くなってしまった。跡形もなく。
遺されたたった一人の母、彼の許嫁、嫁に来るはずだった黒木華。
 助け合う住民たち。
 
終戦を迎え、生活を立て直そうと助け合う人たち。
日本人は、慰め合ったりしない。今生きること、前を向くことを考える。

でも、息子や愛する人を亡くなった人の気持ちはどんなに悲しいだろう。
少し思い出しては少し泣く、でも前を向く。
助け合って、小さなことに喜ぶ。お餅を少し分けてもらったの、
小豆もあるの、これが戦後。
進駐軍は親切だった。お菓子をくれた、そう母から聞いている。

戦争が終わって、私の母も疎開先から戻ってきて学校へ行けるようになったという。進駐軍のアメリカ人はみな、優しかったそうだ。

この映画は、日本人には見て欲しい。
悲惨な戦争のあと、日本人という人種の考え方。
これは、今でも変わらない。言いたくないことは言わなくていい。
だけど、辛くなったら言ってね、助け合いましょう。
今はそっとしておいてあげましょう。

慰めたり、抱き合って泣く、そんな軽い気持ちじゃない。
いつも生きようとしている。
どんなことがあっても、生きようとする。前を向こうとする。
小さな幸せを大切に感じる心が日本人だと、つくづくと思った。

自分だけじゃなくて、少しでも美味しいものをわけてもらうと、
あの人にも、と思う。

大切な人が亡くなっても、みんな同じだから、顔には出さない。
そして忠実でいようとする。

亡くなってしまったほうは無念だ。愛する彼女を誰かに取られるなんて。
でも、自分はもう何もできない。
そばに居て欲しいけれど、幸せを祈ろうと熟考して母に伝えてもらう。

母は、もちろん、さみしい。彼女が娘のようだったから。
ひとりになってしまうことより、彼女の幸せを祈る。

「みんなfamilyだ、家族だ」なんて甘ったれた戯言は言わない。
「私はもう大丈夫。あなたも幸せになって。そのほうがあの子も喜ぶわ」と嘯く。

泣きながら別れを告げる。お互いに何かを期待したり、同情をかうようなことは言わない。きっぱりと別れる。

泣けて泣けて仕方がなかった。
国のための戦争。だからだれも咎めない。理不尽な死を、誰も恨まない。

無駄だと思っているから。いなくなったものは帰ってこないことを知っているから。
日本人はやはり、どこか皆、自分のことは自己責任という考えがある気がする。助け合い、手を差し伸べる、何も持っていなくても。

この映画は、ほんのたったひとつの家族の話。
ハッピーエンドだ。

ハッピーエンドだけれど、泣けて泣けて仕方がなかった。

できるだけネタバレせぬように書きました。
小説が好きな私は、ネタバレは極刑だと思っているから。

皆さんも良かったら、見てください。
日本人の共感できる精神を目の当たりに感じることができます。

吉永小百合、二宮和也、黒木華の演技が秀逸だった。
演技で内容が濃くなって、さみしさを我慢しているのが伝わってきた。

以上、感想文です。映画のね。

さよならさよならさよなら

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