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オランダ発『印刷された言葉のデザイナー』カレル・マルテンス

カレル・マルテンスは1939年オランダ南東部リンブルフ州のモーク・エン・ミデラール生まれの80歳近くなるグラフィックデザイン黎明期から独学で活躍するインディペンデント精神溢れるグラフィックデザイナーであり教育者でもありインク臭が匂い立つ実験的な作品でも知られるコンセプチュアルデザイナーです。

彼がアーネム工芸大学を卒業しグラフィックデザイナーとして活動し始めた1960年代は、ウィム・クロウエルらが結成したトータルデザイン社が活躍し、グラフィックデザイナーと呼ばれる職業が市民権を獲得し始めたまだまだ専門課程すら制度化されていない時期だったので、カレル・マルテンスは依頼主とのコミュニケーションの中から彼独自の価値観やコンテキストを探求していました。

また同時期に活躍したオランダの美術団体「ヌル・グループ」の作家たちが芸術の終焉を唱え、日常の廃物や大量生産の既製品を作品に取り入れたことに刺激され、知育玩具メカノのパーツや工具の部品や金属破片などの表面にインクを付けて、ステデリック美術館の古いカタログに印刷する実験的な作品を制作し続けています。

この実験精神は学生時代の教師である画家アダム・ロスカムから、印刷機とともに譲り受けた精神です。(アダム・ロスカムは自然の葉やシダの表面にインクを付けて印刷していた。その作業を学生時代のカレル・マルテンスが手伝っていました。)

オランダ語圏内でのみ活躍していたカレル・マルテンスが世界のグラフィックデザイナーから注目されるようになったのは、「Oase」誌のデザインがA・H・ハイネケン芸術賞を受賞し、その報酬として1996年に制作された作品集「プリンテッド・マター」が、1998年に「世界で最も美しい書物」賞の最高位である「ゴールデン・レター賞」を受賞したことによります。

1960年代当時第一線で活躍していたウィム・クロウエルのトータルデザイン社を「商売に走り、理想を見失ったから衰退した」「ウィム・クロウエルの方法論が一般化するにつれ退屈なものになった」と切り捨てるインディペンデント精神をもっているからこそ生み出せる実験的な作品群を2017年ドイツミュンヘンのアートギャラリーKunstverein Münchenでの「Motion展」から感じていただけると思います。

本当に憧れの存在です。

all images copyright and courtesy of the artist and Kunstverein München

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