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添乗員歴37年!120カ国以上訪れたベテラン添乗員が実感する仕事の面白さ

お客様が安心安全に旅を楽しめるようサポートする、添乗員という仕事。JTBでは、さまざまなツアーに添乗員が同行し、旅のお手伝いをしています。そんな添乗員として、37年ものキャリアを誇るのが、梅津真理です。
訪れた国はなんと120カ国以上!旅行が大好きで「添乗員は天職」と語る梅津。旅行中のトラブル対応やお客様との思い出、自身の体験を通して、添乗員の仕事の面白さや魅力を語ってもらいました。


お客様との一期一会が原動力。添乗員の仕事の魅力。

梅津 真理(うめつ まり)
エスコート商品販売事業部 営業推進部 エスコート課に所属。
入社以来、添乗員一筋で世界中を飛び回る。旅と人が大好きで、誰よりもツアーを楽しむ姿に、ファンになるお客様も多い。旅に必ず持っていくものは、たくさんのお守りとテレホンカード。テレホンカードは、浴槽に栓がないこともある海外にて、お湯をためる際の栓代わりに置くとピタッと吸い付いて重宝するそう。

——まずは、梅津さんが添乗員になったきっかけを教えてください。

新聞に「JTBの海外添乗員募集!」という広告を見つけて応募したのがきっかけです。見た瞬間に「コレだ!絶対になりたい」と思い、すぐに応募しました。旅行好きと接客経験を生かせる天職だと思ったのです。

もともと旅行が大好きで、大学も外国語に強い大学に入学。在学中にはヨーロッパやアメリカを旅行し、海外への憧れと好奇心がますます強くなりました。卒業後はテレビ会社勤務を経て、カナダで開かれた「国際交通博覧会」の日本パビリオンでお客様対応をしていましたが、そのときに「接客業が向いているかも」と感じたんです。帰国後、仕事を探していた時に新聞広告が目に入って…という流れで添乗員になりました。

 ——具体的に添乗員の仕事内容はどのようなものでしょうか?

添乗員の仕事というと、お客様のサポートや観光地のガイディングのイメージをもっている方が多いかもしれませんが、旅程管理が主な仕事です。ツアーが予定通りに進むように管理することを基本としています。例えば、飛行機が飛ばなかったらすぐに代替便を探して予約したり、観光の日程を組み直したりと、トラブルが起きたときにどう対応するかがメインの役割です。そのなかで、お客様の安全確保や体調管理、時には通訳やガイディングなどがあり、仕事は多岐に渡ります。

また、ツアーがないときには、JTBの海外パッケージツアー「ルックJTB」の魅力を知ってもらうためのお客様向け説明会にプレゼンターとして参加したり、ツアーの企画内容や日程について担当者にアドバイスをしたりもしています。 

ペルーのアマゾン川流域の村にて、ジャガーの赤ちゃんと梅津。 

——梅津さんが感じている添乗員の仕事の魅力とは何ですか?

何といっても、自分の大好きな旅行を通してお客様の旅のお手伝いができ、喜んでいただけることですね。とにかく旅行が大好きなので、どこに行っても何をしていても楽しいんです。そして、その楽しさをお客様と一緒に共有できるのが何よりの喜びです。お客様から「添乗員付きツアーに参加してよかった」「今までで一番楽しい旅だった」と言っていただけたときは、添乗員冥利に尽きますね。

それから、お客様との一期一会の出会いを通じて、自分自身も新しい発見や学びを得られるのも魅力です。旅を通してお客様から教わることも少なくありません。

以前、ツアー初日にスーツケースが行方不明になった親子のお客様がいらっしゃいました。なかなか見つからず、旅の途中でそれこそ毎日、必要最低限の衣類や化粧品のお買い物のお手伝いはさせていただきましたが、結局最後まで出てこなくて。最終日の帰りの空港でお二人に「今回は本当に大変でしたね」とお話ししたら、お母様がおっしゃったんです。「いいえ、娘にはとても良い経験になったと思います。今後ひとりで海外に行って、もし同様のトラブルに遭った場合の対処の仕方を学べましたから。それに毎日の娘とのお買い物も楽しかったです。」と。

通常ならショックを受けて旅行を楽しめなくなってもおかしくないくらいなのに、驚くほどプラス思考だったんです。トラブル自体は避けたいものですが、それすらもポジティブに捉えて成長につなげられる。そんな発想の大切さを学ばせてもらいました。

トラブルも最高の思い出に変える、添乗員の手腕


——これまでに120カ国以上訪れ、37年の添乗員経験をもつ梅津さん。ツアー中の忘れられない思い出や、びっくりエピソードはありますか?

もう数限りなくあります(笑)。なかでも特に印象に残っているのは、“パキスタンの桃源郷”と言われるフンザを訪れたツアーです。中国から標高5000m近いクンジュラブ峠を越えて、フンザの村に入るという秘境中の秘境を巡る旅でした。

無事に峠を越えてフンザに到着し、観光を終えて次の町に移動するときのこと。幹線道路を3時間ほど走っていたら、なんと目の前で崖崩れが発生したんです。一本しかない道ががれきで完全に塞がれてしまって、先に進むことも、Uターンすることもできない状況に。半日ほど待っても復旧の目処が立たず、現地のガイドさんと相談した結果、2つの選択肢を提示されました。崖崩れの復旧をバスの中で待つか、それとも全員でバスを降りて崖を下り、土石流の上を渡って反対側に進むか。

お客様と相談した結果、全員で「崖を下りて渡ろう」という結論に。そこからが大変で、足場が悪い崖を下り、土石流を超えて反対側に渡らなければなりません。現地の方が大きな石を投げ入れて飛び石伝いに渡れるようにしてくれたので、そこをなんとか他の方の手も借りて渡り、崖を登った上の道で新しい車を見つけ、ようやく次の町に到着したのが深夜。

しかし、ホテルに行ったら鍵がかかっていて!「来ないと思ったから部屋はない」と言われてしまい……、どうにかお客様のお部屋だけでもとお願いして用意してもらいました。 

——想像するだけでも大変な状況が目に浮かびますが、お客様の反応はいかがでしたか?

それが、皆さんが口々に「今までで一番面白い旅だった!」と喜んでおられたんです。それこそ100カ国以上旅をして来た方も「こんな楽しいツアーは初めてだ」と(笑)。

皆さん最初は不安な様子でしたが、一丸となって困難を乗り越えるなかで、お客様同士で連帯感が生まれたように感じました。私もとても大変だった思い出であると同時に、達成感や楽しかった記憶も強く残っていて。だからツアーって、問題が発生したから全てがダメになるというわけではないんですよね。

海外旅行にはトラブルはつきもの。だから不可避のトラブルなどに見舞われたときにどう対処するかが大事なんです。それによって「忘れられないツアー」になる。もちろんお客様の感覚は十人十色なのでプラスに考えてくださる方ばかりではありませんが、そういったハプニング込みで楽しんでくださる方も多いですね。「大変だったけれど、だからこそ面白かった」と言っていただけると、本当に嬉しいですね。

世界の絶景、秘境へ。ベテラン添乗員おすすめスポット

ブラジル、レンソイスの砂漠。(梅津撮影)

——添乗員として数多くの国を旅してきた梅津さんから見て、まだ日本人にあまり知られていないけれどおすすめしたい場所はありますか?

たくさんありますが、ブラジルの北東部・マラニャン州にあるレンソイスの砂漠はおすすめしたいですね。レンソイスとは、ポルトガル語で「シーツ」という意味があり、名前の通り真っ白な砂丘が風によって波打ったような模様となって広がっています。雨季に行くと、水位が増して砂丘の間に湖が現れるのですが、エメラルドグリーンに輝く水と白い砂丘がすごく美しい。飛行機からの眺めは感動的でした。

サウジアラビアのエッジ オブ ザ ワールド。

もうひとつおすすめしたいのが、サウジアラビアのエッジ オブ ザ ワールドです。「世界の果て」と呼ばれるその場は、首都のリヤドから120km北西にある、荒涼とした砂漠にある断崖です。ここは夕日の時間に行くのがお勧めで、雄大な景色が素晴らしく、「世界は私のもの」という感覚になりました。

ボリビア。紅色に染まるラグナ・コロラダ湖。湖に生息している藻類の赤い色素やプランクトンの死骸の堆積物などによって、赤い湖になっているそう。(梅津撮影)

——どれも初耳ですが、写真を拝見すると素敵なところばかりですね。なかなか気軽には行けそうにないので、ぜひ添乗員ツアーで行ってみたいです。

私自身が「僻地《へきち》好き」なものでして、個人的には少々マニアックな場所に惹かれる傾向があります。以前、ヨーロッパのツアーでご一緒したお客様と僻地のツアーでもご一緒になったことがあったのですが、「あら?梅津さんってヨーロッパの添乗の時より僻地ではずっとイキイキしていらっしゃいますね」と言われたことがあるほど(笑)。南米では、滝を見るため底に足が届かない川に真っ先に飛び込んだり、暴風雨の中のような滝裏を先頭に立って歩いたり、僻地では身体をはって仕事をしてますね(笑)。

コロナ禍もあり、今は僻地のツアーは少なくなってしまったのですが、以前はウガンダ、ルワンダや、ナミビア、リビアなど。あと南米のコロンビアやパプアニューギニアなどのツアーがありました。

——それだけ添乗員さん自身が楽しんでいると、お客様にとっても楽しい旅になるでしょうね!

そうなんです、実は私が一番旅を楽しんでいるかもしれません(笑)。だから「私が楽しいことは、きっとお客様も楽しいと感じてくださるはず」という気持ちで添乗しています。例えば、当初の予定にないことでも「面白そう!」と思ったら、お客様に「ここに行ってみませんか?」とご提案させていただくことも。すると、「梅津さんが面白いって言うんだったら、絶対面白いはず!」と言って付いてきてくださる。もちろんお約束の観光内容はきっちりご案内することが大前提ですが。

実際にすごく楽しくて、帰国してから企画チームに「この観光地がすごく良かったので、次回からはここもツアーに組み込むとお客様の満足度がさらに上がるはず」などとフィードバックして、より良いツアー作りに生かせることもありますね。

期待を超える体験を提供。“添乗員ツアーならでは”を増やしたい!

ボリビアのウユニ塩湖。雨季に見られる鏡に映ったような景色。(梅津撮影)

——ツアーに添乗するうえで心掛けていること、大切にしていることはありますか?

最も心掛けているのは、お客様にご満足いただける旅になるようサポートすることです。お客様は、場所によっては個人でも行けるのに、あえて添乗員付きのツアーに申し込んでくださっているわけです。それだけのメリットや、付加価値を感じていただける旅になるよう全力を尽くすのが、私たちの役割だと思っています。

例えば、移動中のバスの中で、これから訪れる場所や街の歴史について話をします。観光地に到着してから現地のガイドさんの話を聞くだけでも良いのですが、事前により広い範囲の情報を知っておくと実際に行ったときの理解度や楽しみがぐっと上がるんですよね。他にも、食事に行く前には、その土地の食文化や名物料理についてのお話をするなど、工夫しています。

私自身、歴史や土地のことを知るのが好きなので、下調べや事前準備は苦になりません。むしろ知識が増えるほど旅が楽しくなるんです。「旅行に行くなら、次も添乗員付きツアーに参加したいな」と思ってもらえたら良いなと思いながら、仕事をさせていただいています。

 ——これからの目標や、個人的に開催したいツアーがありましたら教えてください。

新しいツアーの企画を目指しています。添乗員をしていると、添乗中にたくさんのものを見聞きして、さまざまな情報が入ってきます。それらを生かしてこれまでにないツアーが作れないかと現在考えているところです。

先日ポルトガルツアーの添乗をしたのですが、ポルトワインの産地として有名なドウロ川沿いの町にあるワイナリーを見学する機会がありました。そこでは今でも伝統的な手法でワイン作りをしていて、秋の収穫シーズンにはブドウの足踏み体験ができるんです。

現地のガイドさんから昨年の様子を動画で見せていただいたのですが、大人も子どもも汚れを気にせずに音楽に合わせて足踏みしていて、お客様からも「参加したい!」という声が挙がりました。こういった体験型のツアーを企画できたら面白いなと思っています。

マダガスカル ブラウンキツネザルと一緒に

あとは、個人的には僻地ツアーの復活も計画したいですね。「梅津と一緒に行くバヌアツツアー」「梅津と一緒に行くレインボーマウンテン」とかね(笑)。いずれのツアーも、その土地ならではの魅力を深く味わっていただけるようなツアーづくりができたらと考えています。

写真:  大童鉄平
文:   大西マリコ
編集:  花沢亜衣

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