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ドラマ『ぼくらの勇気 未満都市』を思い出す

27年前、若かりし頃のKinKi Kids主演で『ぼくらの勇気 未満都市』というドラマが日本テレビ系で放送されていた。「愛されるよりも 愛したい」というキンキの名曲で始まる。衝撃的なドラマだったから覚えている方もいると思う。
(※冒頭写真:https://shop.ntv.co.jp/item/1003aAAZ0085

ドラマのあらすじ:

千葉県幕原市で大地震があったとのニュースが流れる。幕原市に引っ越していた友人・キイチを探しに旅立ったヤマトと、自称災害ボランティア志望のタケルは幕原地区に乗り込む。だが、地震というのは政府による情報操作で、実際には微生物「T幕原型」に汚染されてしまうというバイオハザードが発生、幕原市は大人が死に絶えた未成年だけの街になっており、感染拡大とパニックを防ぐためとして街全体が封鎖されていた。その後、ヤマトやタケルは、様々な問題や事件を乗り越えながら、大人の不在によって治安が悪化し暴力に支配された子供だけの街に秩序を築いていく。

Wikipediaより

幼いながらに忘れられないシーンがある。幕原地区に乗り込んだヤマト(堂本光一)とタケル(堂本剛)たちの前に巨大な防護フェンスがそびえ立っている。「ここから出せや」というタケルに、銃で威嚇する政府。「ここから出ようとする者は撃つ、抵抗する者は撃つ」と。

新型コロナ感染症の外出禁止令のなか、ほぼ封鎖状態の世界を見て、このドラマを思い出した方もいるかもしれない。

でも、私にはそれ以上にガザの封鎖状況と被った。1997年のドラマの架空世界は、実際の世界にもっと惨い形で存在した。

軍事封鎖開始から10年以上経った2018年のガザ、イスラエルとの境界フェンス沿いで始まった「帰還の大行進」というデモ。毎週金曜日に行われ、1年以上続いた。
丸腰の市民が、ただガザの封鎖解除を求めてフェンス沿いに集まって、練り歩いた。

デモ隊にフェンス越しに銃を向けるイスラエル兵士
“Issue 243, July 2018,” This Week in Palestine
 http://thisweekinpalestine.com/wp-content/uploads/2018/06/july-2018-243-12.pdf

トランプ米元大統領が、エルサレムをイスラエルの恒久的首都として認め、米大使館を、テルアビブからエルサレムに移した。その移転セレモニーがエルサレムで行われていた日、ガザのフェンス越しでは、一日で医療従事者を含む60名以上のガザの市民が射殺された。

あのとき、世界は一時的に反応したが、そのあと何もなかったかのように黙認した。

『ぼくらの勇気 未満都市』では、若者が街に秩序を築こうと奮闘する。
ガザでは、将来に希望を見出せずに、あの毎週続いたデモで、射殺されにいく=「殉教しにいく」若者たちもいた。

当時、ジャーナリストの土井俊邦さんの現地ルポを読んだ。(https://www.facebook.com/toshikuni.doi/posts/10216740617963661

宗教上、禁じられた自殺をすれば、家族の恥として晒される。でも、殉教すれば、尊厳ある死を選べる。

デモに参加する理由を聞かれた若者は、こう答える。

「この生活への絶望感からです。デモに参加する若者たちは半分以上はそうだと思います。私はあそこで撃たれて『殉教者』になりたいんです。だからデモに行くんです」

また、負傷すれば、西岸の政府から少額ながらに「見舞金」がもらえるという理由から、治療費にも及ばないお金を得るために、デモで撃たれに行く若者もいた。

今、ガザでは一日に数百名の人が殺されている日もある。そして、200万人以上の人々に飢餓、餓死という手段が用いられている。

幼い頃のドラマの記憶 ーーー 無防備な若者を狙う警察
ガザの封鎖 ーーー フェンス越しに、丸腰の若者を狙うイスラエル兵

あのドラマを覚えている人がいれば、ガザの10月7日前の封鎖状況を、少しだけ想像してもらえるかもしれない、ふとそう思った。


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