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「四国八十八ヶ所遍路」 1200km歩いてみた

四国をぐるっと一周、1200km50日かけて歩いた。「区切り打ち」と言われる二回に分けての歩きお遍路だ。

1回目は2017年10月(3週間)(75番善通寺から32番禅師峰寺)、2回目は2018年3月(4週間)(33番雪蹊寺から75番善通寺)、計7週間49日+1日(高野山お礼参り)である。

よく歩いた。そしてさまざまな事を考え、学んだ。楽しい50日間だった。

遍路道

以前から「お遍路」には興味があった。心が決まったのは、辰濃和男『四国遍路』岩波新書を読んでからだった。「お遍路」を歩くとはどういうことかを教えてもらった。

もう一つ、「お遍路は日本最古のロングトレイルである」と教えてくれたのが『四国お遍路バックパッキング』 BePalである。この本で、お遍路ってバックパッキングなのかと合点がいった。ならば今までのハイキングの延長で出来るのではないか、と思えてきた。

更に、ウルトラライトバックパッキングというものを知ったのも助けになった。現代の新しいハイキングメソッドは「ライト&ファスト」になっている。そのための考え方も用具も新しくなっている。そのことも私の背中を押してくれた。

私の歩き遍路は、

(1)遍路道を歩く(国道、トンネルより昔からの遍路道を選ぶ) 
(2)へんろ宿に泊まる 

を原則とした。

そのため、荷物はベースウェイト(水、食料を除いた重さ)4kgに抑えた。着替えは、Tシャツと靴下とブリーフ各一枚の一組だけ、毎日へんろ宿で洗濯する。

お遍路用品は一応全部揃えたものの、結局使わないものが多かった。最終的には「すげ笠」をバッグの後ろに括り付けて歩いていた。御杖は最初の回は使ったのだけど、置き忘れて来るのではないかという不安が常にあって(実際三回も置き忘れた)、二回目からはトレッキングポールにした。

お遍路休憩所

毎日、20-25km歩いた。一日に歩く距離はどんどん伸びていって室戸岬までの間に最長35kmまで歩いたけど、翌日は体ががたがただった。毎日20km程度がちょうどよかった。

歩いていると休憩も取らなくなった。通常、山では1時間ごとに5分ほど休憩を取るのだけれど、お遍路はほとんどが平坦な道なので2時間に5分ほどが普通になった。歩くとすぐ体が温まるので、休むことによって体を冷やしたくないのだ。昼食も取らなくなった。その代わり携帯食を休みごとに少しずつ食べていた。

ハイドレーション バッグをザックに格納、チューブを外に出す

水分補給はこまめにやった。ウォーキングが趣味の掛かりつけ医に「歩きながら飲めるウォーターバッグがいいよ」と勧められたのでPlatypusのハイドレーション1.5Lを持って行った。これは正解だった。歩きながら水を飲めるので、ちょっと唇が乾いてきたなというタイミングで水を補給出来る。

気温が20度を超えると歩いていても脱水症状を起こす。毎日2リットル近くは飲んでいた。塩分補給剤も頻繁に舐めた。

お遍路中のカロリー量は毎日5000kcを越える。普段のカロリーの倍だ。コンビニでは食べもののカロリーが高いものを買うようになった。普段と逆だ。カレーパンが一番カロリーが高い。アンパン、ポテチ、チョコレート、カステラ、おにぎりなどが定番で、いつも持ち歩く携帯食になった。

へんろ宿ではしっかり栄養カロリーを付けるために必ずお肉や揚げ物が付く。御飯もどんぶり飯だ。高知ではどこでも必ずカツオのたたきが出た。各宿でその味付けが違うんだ。塩たたきがうまかった。

へんろ宿の食事

へんろ宿は二食付きで平均6千円ぐらい。相部屋になったことはなかった。どこも清潔でよい部屋だった。どこの宿でも無料の洗濯機乾燥機があって、着いたら先ずお風呂、その間に洗濯というのがルーティンになった。

毎晩、翌日の旅程を考えて次のへんろ宿を電話で予約する。どうしても泊まらなければならない宿は数日前に確保した。(遍路転がし12番焼山寺前、20番鶴林寺前、60番横峰寺前、66番雲辺寺などは山を登るので前日に麓の宿に泊まる必要がある)

日本最古のロングトレイル

へんろ宿ではお馴染みの顔が揃う。お遍路たちは出立の時には「ではまたどこかで」と挨拶をするけれど「どこどこで会いましょう」とかという再会の約束をすることはない。でも毎晩、大体同じような顔ぶれが揃う。同じ方向、ほぼ同じ速度で歩いているので同じ宿で会う確率が高いのだ。二、三日経ってひょっこり出会うこともある。

食事の後は勉強会だ。遍路地図を持って来て宿やへんろ道の情報交換をする。これが楽しくてまた大変役に立つのだ。ここでもらった情報になんども助けられた。それで、もう会うこともないのだ。

肉刺(まめ)のことにも触れなければならないだろう。歩き始めて2,3日は肉刺に苦しめられる。右足指に大きな肉刺が出来て雨の中を足を引きずって歩いていたら、車で通りがかったご婦人が病院まで連れて行ってくださった。病院で手当と予防法を詳しく聞いた。これが大変ためになった。

また徳島市のスポーツ店では丁寧に靴と靴下を見てもらって、ウールの靴下を勧められた。お医者さんに聞いた治療法、予防法とウール靴下で、それ以後ぴたりと肉刺がなくなった。肉刺対策はこちら

歩く

歩いている時はほぼ一人だ。一日誰とも会わない時もある。お遍路さんに出会っても挨拶をするだけですぐ別れてしまう。歩きながらいろんなことを考える。体を動かしながらものを考えるのが精神と身体に一番いいのではないかと思う。(『Brain 一流の頭脳』によると有酸素運動が脳に一番よいという) 

お遍路は「お四国病院」と言われる。お遍路している間に病気や引きこもりが治ったというのはこのとだろうな、と思った。

歩いている時、時折「ご接待」に会うことがある。市街地を歩いている時に自転車のおばさんから「これご接待」といってティッシュにくるんだ300円を頂いたのが最初だった。300円は札所(お寺)で納経(御朱印)を貰う時のお金だ。それ以後、みかん、飴、そしてお昼までご馳走になった。これは本当にありがたかった。

今年、四国がLonelyPlanetで2022年のトップ10に選ばれた。その主な理由のひとつにこの「お遍路」と「ご接待」が上げられている。世界遺産に登録されるのも近いと思う。

お四国病」というのがある。お遍路から帰ってきたらまたすぐ行きたくなってしまうことだ。そうやって何度も歩いている人を沢山見た。私もそろそろまたこのお四国病だ。次は「別格20寺」を回りたいと思っている。行きたくてうずうずしている。もう立派な四国病だな。






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