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【歩き遍路】傾向と対策 [装備] 軽く、軽く、軽く

装備の基本は「軽さ」である。これはいくら言っても言い足りない。初めはあれもこれも、何かの時にと荷物は増えていく。しかし毎日20-30km歩くには荷物が軽くないと歩けない。しかも遍路道は舗装路、国道、山道が混在している。

通常ロングトレイルを歩く時のベースウェイト(水と食料を除いた重さ)は体重の1割と言われている。体重60kgの人なら6kgだ。だが、ロングトレイルはビッグスリー(テント、寝袋、クックウェア)を入れた重さなので、へんろ宿に泊まる歩き遍路はこれには当てはまらない。

歩き遍路の場合、ベースウェイトは4kg以下にしたい。着替えは一組でいい。へんろ宿には必ず無料の洗濯機があるので、毎日お風呂に入っている間に洗濯する。

軽い荷物で軽く歩かないとすぐへたばってしまう。というより荷物が重いと、歩いてすぐ「あー重いな」と気づく。それで歩き始めて二、三日後には要らない荷物を送り返すことになる。

私は10月下旬に歩き始めたのだが、防寒用に持って来た分厚いフリース、大量にプリントアウトした2万5千分の一の地図、文庫本などを送り返した。郵便局で袋をもらって荷造りしたのだが1.4kgあった。

お遍路の場合、担いでいる装備の他に参拝用品を入れた「さんや袋」がある。私の場合、この袋が1.5kgあった。その他食料、水で1kgは見ておかなくてはならない。

来るときの荷物の重さの目標は4kgであった。しかし、実際は5kgを超えていた。この1kgが重い。歩いているとそれがよく分かる。歩く距離が長距離になればなるほどその重さが次第に負担になってくる。

歩いているとどんどん荷は軽くなっていく。それでも旅行用の小さい爪切りを使っていたら、宿の女将さんに叱られた。そんなものぐらいどこのへんろ宿でも貸してくれる。貸してくれるものをわざわざ荷物を重くして持ってくるのではない、と。


荷物を準備する際、私が参考にしたのが「ウルトラライトハイキング」のこの三冊である。

ウルトラライトハイキング

ウルトラライトハイキングギア
ウルトラライトハイカー

ウルトラライトハイキングの思想と実践を、ポップなイラストともに解説したULH入門書。

ウルトラライトハイキングの「軽さ」にしか目を向けないのはもったいない。むしろ、その向こう側にある「シンプルさ」や「自然との関係」にこそ、ウルトラライトハイキングの核心があるのです。
ハイカーはもちろん、自然に興味をもつ多くの方に、こんなハイキングスタイルがあることを知ってもらえたらと思います。

アメリカの3000kmを超える長大なトレイルを数ヶ月かけて歩き通す、スルーハイカー。 彼らは独自の理念で既成の商品にはない軽くシンプルな道具を自作し、 歩き通すためのノウハウを確立してきました。 本書ではアメリカ生まれのウルトラライトハイキングを解説するとともに、日本での実践方法を紹介しています。

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ウルトラライトハイキングとはアメリカや日本のロングトレイルを歩いている人たちから出てきた新しい動きである。「装備は軽いほど自由だ、身も心も持ち物も軽くして長く早く歩こう」という考え方である。これはそのままお遍路の装備、携行品についても言えるのではないか。

特に「野宿遍路」を考えているならこれらの本は必読だろう。現在のウルトラライト装備ではテント泊装備で8kg、35リットルのバックパックで充分である。昔の山岳部で30kgのキスリングザックを担いで縦走した者にとってはまさに驚異の軽さである。

お遍路の装備を考える上で特に「ギア」と「ハイカー」が役に立った。「ギア」は国内外のガレージメーカーを紹介しながら装備の5g減を語る本。「ハイカー」はウルトラライトを実践しているハイカーの山装備リストを全部見せたものである。特にウェアが役に立った。一読をお勧めする。

また「ウルトラライトハイキング」については上記本の作者の店、「ハイカーズデポ」がおすすめである。お遍路にいくことを話して色々参考になることを教えてもらい、大変お世話になった。上記本に出てくる「ウルトラ」系のギアのほとんどはここで手に入る。

なお、バックパッキングについては名著コリン・フレッチャー『遊歩大全』ヤマケイ文庫をおすすめする。

アウトドア・ウォーカーのバイブル。時代を超えて「ウィルダネスを歩き、夜を過ごし、大自然を素肌に感じながら生きる歓び」を語りかける。
1978年に刊行された『遊歩大全』は、アメリカのバックパッキングを日本に紹介し、アウトドア・ブームの中で「バックパッカーのバイブル」と言われた名著。特にアウトドア・ファンの間では幻の名著です。
『遊歩大全』を手にした若者たちの心を捉えたのは、ウィルダネスを歩き、山野で夜を過ごし、大自然を素肌に感じながら生きる精神だった。
コリン・フレッチャーの思索的な自然観は現代に通じるところも多い。

文庫本では豆腐ほどの厚さがあるが、ありがたいことに今はkindleに入っている。山の中で寝っ転がって読むのにちょうどいい。歩くことがこんなに楽しいことなのかと気づかせてくれる。どこまでも長く歩きたい、と思わせる本だ。


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