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「次世代起点のデザイン」へのチャレンジ

こんにちは、段野です。


上の記事でお伝えしたように、美大との共同研究に参画することになり、「次世代起点のデザイン」というテーマでデザインリサーチを進めております。
このたび、プロジェクトが一段落したので、我々が取り組んだ「次世代起点のデザイン」へのチャレンジについてご紹介したいと思います。

現在のデザインの方法論は、人間中心デザインのアプローチに立脚していることが一般的です。人間中心に考えることは素晴らしいことですが、既存の人間中心デザイン方法論は、主に現在に生きる人々をユーザーとして想定しており、将来に生きる人々の視点を十分に取り入れられていないことが問題でした。
持続可能なデザインを実現するためには、現在に生きる人々だけではなく、将来に生きる次世代の人々に寄り添ったデザインの方法論が必要ではないか?―これが共同研究の動機でした。

タイミング良く、研究チームは滋賀県長浜市の南長浜地域のまちづくりプロジェクトに参画するご縁をいただき、次世代中心デザインの方法論を検討プロセスに適用し、2050年を想定したまちづくりのコンセプト立案をご支援しました(注1)。

今回の研究で見出した次世代起点のデザインのアプローチは以下のようになります。

(1)過去と現在のリサーチ
南長浜において50 年程前から現在に至るまでどのような出来事があったかを調査。

(2)未来のリサーチ
住民に対するインタビューを通じて、住民が認識し重視する資本や価値観を把握(インタビューは次世代層に近い年代である若年層を主な対象者とした) また、未来を検討する際の示唆を得るために「未来洞察」の手法も活用。

(3)未来のデザイン
過去と現在のリサーチにおける地域特有の資本と、未来のリサーチにおける住民が重視する資本を参考に、未来ペルソナを設定。また、各ペルソナと南長浜の資本のネットワークで構成されたエコシステムマップを作成。

未来ペルソナ(2050年における30~40歳代子育て世代)(注2)


2050年のエコシステムマップ(2050年の未来ペルソナと資本の関係性を描画)(注3)


以上のリサーチ・デザインを通じて得られたアウトプットを用いて、検討委員会において、エコシステムマップを用いて、まちづくりのコンセプトについて検討を行いました。
エコシステムマップ上で、将来世代のペルソナと、地域特有の資本の関わりを可視化したことが奏功し、長浜の将来世代が南長浜エリアで暮らす際に、引き続き残していくべき地域資本は何か?逆に、2050年までの環境変化を踏まえ、これから強化・導入を図っていくべき地域資本は何か?と言ったイシューに対し、具体的な議論を行うことができました。
議論を踏まえ、将来的に南長浜エリアでは、関係人口が街に来訪するに当たって結節点となる重要エリアであり、ゲートウェイ機能の強化(交通機能の拡充、駅を中心とした中心機能の強化)が期待されている点、同地域で担い手や仕事など人や事業が育つことが期待されている点などを考慮し、最終的に「まじわり、未来がそだつまち」というコンセプトを見出しました。

先日ご紹介したフューチャー・デザインでは、「仮想未来人になる」ことが将来に生きる次世代の視点を取り入れる工夫でしたが、
我々は「未来ペルソナ」と「未来のエコシステムマップ」を作ることで、次世代起点のデザインを行おうと考えた次第です。
この取り組みが、「未来」のことを考えるフォーサイタ―の皆さまの参考になれば幸いです。

(注)
(注1)南長浜地域のまちづくり | 長浜市 (nagahama.lg.jp) https://www.city.nagahama.lg.jp/category/5-11-13-0-0-0-0-0-0-0.html(2024年4月24日閲覧)
(注2)「南長浜地域まちづくりコンセプト 添付1:エコシステムマップ」 https://www.city.nagahama.lg.jp/cmsfiles/contents/0000013/13155/003.pdf(2024年4月24日閲覧)
(注3)「南長浜地域まちづくりコンセプト 添付4:未来ペルソナ」 https://www.city.nagahama.lg.jp/cmsfiles/contents/0000013/13155/004.pdf(2024年4月24日閲覧)


この記事を書いた人 段野

「機能美」という言葉に惹かれます。先人の智慧が詰まった土木遺産を見るとワクワクします。 関心…機能とデザインの融合/土木遺産/ローカルなもの/新技術/エネルギー

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