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仮想未来人になる?フューチャー・デザインとは?

こんにちは、段野です。


日本総研は、スローガン「自律協生社会」を実現するために、シンクタンク、コンサルティング活動にデザインのケイパビリティを取り込むべく、武蔵野美術大学と提携し共同研究を進めています。
「デザイン」とは程遠い人生を送ってきた私も、いまでは美大との共同研究に参画することになり、「次世代起点のデザイン」というテーマでデザインリサーチを進めています。

具体的には「ある地域の2050年のまちづくりコンセプト」を次世代起点で考える手法を開発するという研究を進めているのですが、いまはまだ生まれていない「次世代の若者の視点」をどのように取り入れていくか?という点が大きなリサーチイシューとなっており、今年の7月頃から先行研究のレビューを精力的に進めています。

その中で、面白い研究に出会いました。フューチャー・デザイン(FD)という考え方です。(注1)


調べてみると、FDの考え方を用いて、環境計画やインフラ整備、企業経営などに、将来世代の視点を取り入れる地方自治体や企業が増えているようです。


FDの一般的な進め方は下記のとおりです。


① 過去からの時間経過の体験 
◎時間旅行ワーク:年表を用いて1960年~現在に渡る社会変化を追体験
◎空間旅行ワーク:白地図を見ながら各住民の住むエリアの課題や関係を考察

② 未来までの変化の体験
2050年~2060年までの技術革新をインプットし、未来までの変化を追体験

③ 「仮想未来人」になる
改めて白地図を見て、住民が住んでいるエリアに2050-2060年にどのような課題が生じているのかを考え、「仮想未来人」の視座を身に付ける

④ 「仮想未来人」の視点で、イシューを検討する


実際にFDを市庁舎建設プロジェクトに活用した長野県松本市では、④の段階において「どのような庁舎を建てるべきか?」というテーマで議論し、新庁舎のコンセプトを導出しました(注2)。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits/26/2/26_2_56/_pdf/-char/ja

その結果、現在世代のグループからは、ユニバーサルデザインなどの提案が見られましたが、仮想未来人のグループでは、人口減少や自治体業務の変化を前提とするフレキシビリティの確保などの提案が見られたようです。
この研究からは、仮想未来人の視座を身に付けた将来世代のグループの方が、より長期的かつ社会的な視点を獲得できる傾向があることが示されました。


将来世代と現役世代の断絶は、シルバーデモクラシーの問題などでよく知られるようになりました。
しかし、FDの考え方が広がり、誰でも仮想未来人になれる世界が来れば、みなが将来世代の気持ちになって物事を容易に考えられる環境になり、将来のことを考えた最適な意思決定ができる時代が実現するかもしれません。(もちろん未来洞察ももっともっと身近になってほしいですが……)

なお、私の方では、FDの考え方は面白いと思う一方、「仮想未来人になる」手法とは違う手法で、いまはまだ生まれていない「次世代の若者の視点」を取り入れる手法を新たに開発すべく、リサーチデザインに邁進しています。


脚注

(注1)「仮想未来人になって考えてみる」|読み物|日本財団 遺贈寄付サポートセンター https://izo-kifu.jp/contents/2103187.html(2023年10月5日閲覧)
(FDは、ミライの小石で紹介している「未来洞察」とは異なる「未来に想いを馳せる手法」の1つです。)
(注2)山口正裕「松本市のフューチャー・デザイン―実践と今後の展望」https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits/26/2/26_2_56/_pdf/-char/ja(2023年10月5日閲覧)





この記事を書いた人
段野
「機能美」という言葉に惹かれます。先人の智慧が詰まった土木遺産を見るとワクワクします。 関心…機能とデザインの融合/土木遺産/ロこのjーカルなもの/新技術/エネルギー

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