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『業平』泉鏡花文学賞受賞!「伊勢物語」は永遠のスタンダードだね。

小説 伊勢物語『業平』高樹のぶ子著、日本経済新聞出版刊。

今年の「泉鏡花文学賞」の受賞作です。
「泉鏡花文学賞」は1973年に始まった、金沢市によって主宰される文学賞で、今年で第48回。新人からベテランまで幅広い年齢層の作家が受賞しています。
私が読んだのは、金井美恵子『プラトン的恋愛』、澁澤龍彦『唐草物語』、倉橋由美子『アマノン国往還記』、丸谷才一『輝く日の宮』、小川洋子『ブラフマンの埋葬』、嵐山光三郎『悪党芭蕉』、夢枕獏『大江戸釣客伝』などなど。泉鏡花の名を冠するだけあって、ちょっと怪しい物語が多いかな?私好みです。

『業平』はもちろん、伊勢物語の主人公と目される在原業平の物語。伊勢物語を下敷きに、作家の想像力をトッピングした王朝物語に仕上がっています。和歌の訳っていうのはけっこう難しいんですが、実にすっきりと訳していらっしゃる。さすが!

「伊勢物語」は文学史上、歌物語(うたものがたり)というジャンルに分類されます。もともと歌には説明として詞書(ことばがき)が付けられたいました。例えば「一目惚れした女性に贈る」とか、「鷹狩り後の宴会で詠んだ」とか。そんな詞書がより詳細に物語りしていく。そして歌で締めくくる。というふうに発展したのが歌物語です。
平安時代一の色男として知られる在原業平の一代記として、どんな時代でもずっと読み継がれているのが「伊勢物語」です。天皇の孫として生まれながら「在原」姓を賜り臣下に下った行平(ゆきひら)業平の兄弟。兄行平は仕事に励み中納言にまで進みますが、弟業平は貴族としての栄達よりも愛や和歌に生きます。幼い恋や、いけない不倫。そりゃ、行平より業平の方が物語になりますな。

おもしろいから、昔から注釈書がたくさんあります。片桐洋一先生の研究が有名ですぞ。学生時代勉強させてもらいました。なつかしや。

さて、高樹のぶ子さんの『業平』、受賞前に読みました。自分が読んだ作品が何かの賞を受賞すると、なんだかうれしいですね。「やはり、この作品のおもしろさは評価されるんだなあ」といううれしさと、「自分には先見の明があるなあ」といううれしさ。この喜びは何度か味わいました。あれは忘れもしない「日本SF大賞」、「本屋大賞」。あとは、えーっと、あれ?なんだったかな?忘れたぞ。

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