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地元の学校を手本にしようとしないでほしい件 - Ep.0.5: PISAショックの思い出編 -

前作はこちら

相変わらず日本人と話しているとドイツの教育ってイメージがいい気がするのだが、フィンランドあたりと混同されてるのか?北ヨーロッパだから?あるいはシュタイナー教育とか独自の制度があるから?国のイメージがいいから?
私はみんながぼんやりと「ヨーロッパ=先進的=いい教育」という明治時代的なイメージを持っているだけなのだと思っている。

実はドイツ人も教育は高水準だと思っていた。
"あれ"が発表されるまでは…

ドイツを襲ったPISAショック2000

PISAショックは本当に大きな話題だった。

説明しよう。PISAショックとは、2002年度のPISA調査にて経済、かつ教育において先進国と思われたドイツがヨーロッパ内でめちゃくちゃ悪い成績を叩き出した事件のことである。

そもそもPISAとはProgramme for International Student Assessmentの略で、日本語では「OECD生徒の学習到達度調査」と呼ばれており、内容はその名前の通りである。日本は総合的に見ると超上位なので、あまり話題にならないのだとは思うが、PISAは、少なくともヨーロッパでは教育指標としてめちゃくちゃ重視されている。

今年1月、ベルリンで開催された「教育フォーラム」の最終会合での演説の中で、ブルマーン連邦教育研究相は、「PISA調査の結果は(ドイツの教育に)警告を発するものである。政治経済的に主要な地位を占め、教育国家としても国際的にトップグループ入るドイツが(PISA調査で)OECDの中で中庸の地位、ましてやそれ以下の地位にとどまるということはあってはならないことである」と述べ(…)

ドイツのPISAショック - 一般財団法人国際貿易投資研究所(ITI)

散々な結果に連邦教育研究相もこの怒り様である。

これから書くことの概要はこの公式の資料が元になっているので、リファレンスにしてほしい。

2000年度のPISA調査で明らかになったこと

そもそもドイツは学校種別が5年生以降別れるという点で他のOECD加盟国とは大きな違いがあるところなのだが、その学校種別やそれに付随する経済的背景だけでなく、国内全体の学力の格差の過度な開きも浮き彫りになった。特に読解に関してはOECD加盟国中最大の幅を記録した。

主要科目である読解、数学、科学、全ての試験においてOECD平均以下の順位を叩き出す大惨事で、順位も下から数えた方が早いくらいだった。

 「詰め込み教育では勝てない」と見くびられていた東アジア各国が理数では上位を独占、読解も北欧や英語圏と並んで上位を獲得しドイツ全土に衝撃を与えた。

世間の反応

ニュースで大騒ぎだったのは間違いない。連日ドイツの教育がこんなにひどかったのかと、由々しき事態であるとテレビニュースで報じられていた。

IT化が進み始めたりと、時代が時代だったので「なんかうちの国遅れてる?」くらいの雰囲気だったのが「めっちゃ遅れてるじゃんやべえ…」ってなったように記憶している。

学校でもディベートさせられたくらいのビッグイシューであった。日本人としては嫉妬の目を向けられ、あまり居心地が良くなかった。
個人的には「本当かなあ…外国はある程度まで全員同じ種類の学校に行くみたいだし…」とは思っていた。先生も生徒も最終的には「ドイツは休みが多すぎる」と言いう答えで一致していたが、実は日本の方が祝祭日自体は多い。これは日本に来て初めて知ったことである。夏休みが短かったり、秋休みが存在しなかったりと、日本の方が授業日数は多いし、何より休み中に宿題があるのは大きな違いだとは思う。
むしろこの個人の感想と偏見だけで行われてるディスカッションの方が無駄な時間だろう、と感じなかったといえば嘘になる。

2003年の再調査

ちなみにその後2003年、PISAは改めてOECD以外の国をさらに加えた調査が行われた。香港、タイ、セルビア・モンテネグロ、チュニジア、ウルグアイなどが参戦することとなった。
この調査の内容はこちらがリファレンスになっているので参考にしてほしい。

問題解決以外の3科目についてはドイツはおおよそOECD平均にとどまることはできたものの、パートナー国を入れると順位がさらに下がってしまう結果になった。依然東アジア4カ国(ないし地域)が上位を独占し、他の新規参入国は豊かとは言えない国が多くランクが伸びなかった。まあこれは当然の結果だろう。
つまりドイツはこの三年間で国内で実質改善があったわけではなく、統計的にそういう順位になっただけで、教育格差は広いままだった。

2018年度のPISA調査では変化があったのか

さらに近年の2018年の調査つにいてはこちらを参考にしている。

2000年代と比較すると多数の国と地域が参加するようになった。一方ではいわゆる途上国が増えただけとも言うことはできる。
にしても依然東アジアはすごくて、よく言われている話だがIQテストもこんなだった記憶があるけどなぜだろうか?特殊なのはベトナムも参加していた2012、2015年には、近年は不参加とはいえ、理数のポテンシャルが高い。他の東南アジア諸国はあまり結果が芳しくないし、何が違うのだろうか。

「暗記科目」と呼ばれるような教育をすると学力格差は縮むのだろうか。とりあえず覚えときゃなんとかなる、という子供時代から、高学年になるにつれ覚えたことを役に立てる方法を学んでいるのかもしれない。

日本は読解に課題があるが(というほどでもないが伸び代はある)、その中ドイツはやっとスウェーデンや日本と並ぶことができた。先進国とされている国々は得意不得意はあってもスコアが極端に平均以下という事はなさそうだ。
もう現在は先進国・途上国に差があるというよりは、例えばイタリアの様に、財政に余裕がない国は結果が芳しくないところが多い雰囲気だ。当然といえば当然なんだが、重要な話ではある。
お金といえばサウジアラビアだがどうなているのかはよくわからない。男女差も関係しているのだろうか。現地の事情を知っている方がいらっしゃいましたらお気軽にコメントください。

ドイツの教育の中にいた自分からみて

自分も何も考えずにその教育システムの中にいたわけだが、このPISAショックがあって「ドイツってそんなにダメか?…まあ、そうか。そうかもしれない」と気づきがあったのは間違いない。日本に来て人と会話をしたり、学生時代の話を聞くと「当時の地元じゃ太刀打ちできないわな…」と納得することも多かれ少なかれある。日本人は九九を暗記するとか、そういうレベルの話である。(私は現地校で例えば7、14、21、28、75、42、49、56、63、70といった倍数の羅列を暗記させられた記憶がある。)

というわけで、幾つかエピソードに分けて私の出身国の教育における「地元の教育システムのあれやばかったな…」という話を紹介していきたいと思う。現地の教育への幻想を打ち砕いてやろうと思う。

#教育 #海外 #外国 #帰国子女 #異文化 #PISA #OECD生徒の学習到達度調査 #OECD  

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