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地元の学校を手本にしようとしないでほしい件 - Ep.0 小4の成績が将来の仕事を決める!?"組み分け帽子"はリアル -

社会制度が比較的ちゃんとしているし、「教育もそんなに変じゃないでしょ〜」というイメージがある我が地元。とりわけ日本人になぜかイメージが良いです。

ここでは私の出身国の学校制度を簡単に紹介します。


魔法を使わない組み分け帽子

よく知られた「ハリー・ポッター 賢者の石」のあの魔法の帽子による組み分けのシーン、皆さんはどう見てますか?
「ファンタジーで楽しげだなー、やってみたいな」ってなる人が多いのかな?
と思っていたりします。
「あなたはどの寮?」という心理テストみたいなものは溢れてますもんね。

このお話ですね…イギリスの階級社会への皮肉?でもあるとは思うんですが、地元ではある意味では現実だったりするのです。

どんな世界なのか

基本的に私の出身国では小4で小学校を卒業し、その時の成績で進学先が3種類から決まります。(日本の外務省のサイトにも説明があります。)

どんな3種類なのか、とても雑な説明をします。
①大学に行く人用の学校
②専門学校に行く人用の学校
③もうすぐ働く人用の学校

ちなみにのちの仕事としては
①は会社員や企業へ就職したり、大学院に行って研究を続ける人が多い印象です。
②、③については言及しているホームページを発見したのでみてみました。

②については様々なジャンルの販売員と機械工の類が目立ちます。
医療関係の道に進む方も少なくなさそうです。

Kaufmann / Kauffrau im Einzelhandel
Kaufmann / Kauffrau für Büromanagement
Kfz-Mechatroniker / Kfz-Mechatronikerin
Medizinischer Fachangestellter / Medizinische Fachangestellte
Verkäufer / Verkäuferin
Industriemechaniker / Industriemechanikerin
Zahnmedizinischer Fachangestellter / Zahnmedizinische Fachangestellte
Elektroniker / Elektronikerin
Kaufmann / Kauffrau im Groß- und Außenhandel
Fachkraft für Lagerlogistik

Top 10 Berufe - Ausbildung mit Realschulabschluss - Ausbildungspark Verlag

パーセンテージなども載っているので興味のある方は読んでみてください。

一方③になるとどのような資格を持って卒業するかも関係ありますが、またガラッと変わってきます。

Altenpfleger
Einsatzsanitäter
Fachlagerist
Fachkraft für Lebensmitteltechnik
Fachkraft für Metalltechnik
Justizhelfer
Konditor
Tiermedizinische Fachangestellte
Verwaltungsfachangestellte
Zerspanungsmechaniker
Zweiradmechatroniker

Hauptschulabschluss: Was kann man damit tun?

介護職や救急隊員、技術系も目立ちます。事務系や専門職も散見されます。日本人にはお菓子職人は意外ではないでしょうか。修行に行く方もいるでしょう。

小4で何が起きるのか?

私の世代ではÜbertrittszeugnisというものがありました。「進学成績表」とでも呼べば良いでしょうか。「〇〇さんはこの学校に適しています」って印字されてるんですよね。(思い出)
現在はバイエルン以外はLehrerempfehlung。いわゆる推薦しかないようです。

今も昔も親の意向が基本ではあったようです。
Die Schulformempfehlung in Nordrhein-Westfalen - Schule in Deutschland
私のクラスでも「うちの子供が大学に行くなんてとんでもない!」と言う両親もいたようです。逆に言うと無理やり上のレベルの学校に行かせたがる親がいたとき、先生が説得するしかないんですね。近年、特に南部は教育ママも増えているようで
「弁護士を連れて脅しに来る」教員が語るドキュメンタリーを見たことがあります。その映像のリンクがあったのですが、今は非公開動画になっています。 

子供も親も先生も緊張感がすごくて、動画には
「Abi(Abitur=大学入学資格試験)よりも必死に勉強した思い出」
というコメントもついてるのがなかなかリアルです。

どのくらい勉強しないといけないの?

地元の成績のスケールは1が最良、6が最低でした。

①に該当する学校に入るには平均2.3~2.5くらいないとダメなのです。
ただこれは州によって変動します。
一般的には南部の方が厳しいと言われています。
Übertritt nach der 4. Klasse Grundschule

③に該当するのは平均3以上の生徒ですが、
どうしても②に行きたかったら数日間のお試し制度もあって、学校から合否が出ると言う救済(?)制度もあります。

各コースの中でも市内には複数学校があ理、選ぶにあたって見学に行きます。
見学の際は各校のセールスポイントを聞いておくと、将来どんな学問ができる可能でがあって、どんな職業につけるか参考になります。

③「もうすぐ働く人用の学校」ってどのくらい勉強する/しないの?

正直な話、地元では「小学校の延長」と聞いています。
学校の程度にもよるらしく、昔勤めてたと言う先生に聞いたところ「生徒はチンパンジー。窓から机を投げていた。授業どころではない。」とのことでした。

南部のとある州では「ミドルスクール」に名前を変えてイメージ刷新を図ったことがありますが、それで学校の質が変わったかといえば…です。

また、移民の中にはそれまで学校に行ったことのない人もいます。(当然のことではありますが、私は環境柄考えたことがありませんでした。)
そういった子たちは③へ転入するしか道がありません。

劣等感を感じながら学校へ行く子もいて、「これで全てが決まったわけじゃないよ」と言われても、それまで①や②を目指す一心で勉強してきた新5年生には難しいところがあるでしょう。

就く職業については基本的には中学校に上がる年齢(12歳)で決めるようです。それによってその後の履修科目が決まるものと想像します。

結局のところどのくらいの学力差があるのか?

①の大学に行く人向けの学校は日本と同じフローと仮定して良いと思います。ただ中学と高校が分かれていないと言うことは留意しておく必要があります。

そもそも問題の出し方からして表現が大きく違うようで、面白い比較を見つけたので紹介します。
(日本語の語彙力が足りなくて変なところもありますが、多めにみてください。)

①の学校
「農業経済学者が一定の量の農作物を一定の価格で販売しています(これをGとする)。Gの値は50です。Gを構成する要素は:1. 生産コストの量です(これをHとする)。HはGより10要素小さい値です。Hの量をGの償還額として図を書き、その上で次の問題を解答(これをLとする)してください:合計利益はいくらですか?」

②の学校
「農民一人で50€。生産者のコストは収益の4/5です。収益はいくらですか?」

③の学校
「農家が一袋のジャガイモを50€で販売します。生産者のコストは40€です。利益を計算してください。」

[Was ist der Unterschied zwischen Hauptschule, Realschule und Gymnasium? (Schule, Deutschland, Bildung)]

ちなみにこれを見ると各学校から排出される生徒の職業が見えてきます:
ジャガイモ農家、販売者、生産管理者の三種類です。

「途中で上の学校に上がれるよ!」は本当で嘘

②や③の学校から①への移動は試験に合格すれば可能です。
その制度が存在しているのは事実で、

実は南部の「ミドルスクール」に密着した動画があったのですが、現在は削除されていますが、コメント欄を見ると現実が見えるし、自分も聞いた話や肌感覚としては同じ意見です。

…「大学資格試験は文章の分析/要約も困難だった。数学でずっと1だったけど①で5に落ちた。努力と回り道を要した。自分の子供が同じ状況にならないためならなんでもする(…)」

https://www.youtube.com/watch?v=cPKZIm3D-yA

そもそもカリキュラムに大差があります。
特に①の学校は職業訓練ではなく高等教育/研究に向けて勉強する場所ですから、
他の学校と性質が全く異なります。
つまり、各校種によって教育の前提が大きく違うので、後からキャッチアップするのは想像以上に大変であるということを意味します。

これは私の出身国の教育問題の根幹の一つで、また別の記事でもっと深掘りしていこうと思います。
教育の差を生む制度でもあると同時に、貧富の差を生み出す制度でもあります。「州によって合格点に差がある」と示唆した通り、地域格差も深刻です。

ハリー・ポッターと違って、性格では分けないけど…

私の地元では社会階級別にそれぞれの学校へ振り分けられ、その階級に"ふさわしい"教育を受けています。

親がどんな学校を出て、どんな仕事をしているかで子の思想/価値観はある程度固まってくるものだったりして、似たバックグラウンドの人が同じ学校に集まるイメージです。人々は別の"(社会的)クラス"からは距離をとった空間にいるのです。

例の組み分け帽子のシーン、この話を知った上で見るとまた違う味が出るかもしれませんね。


続編はこちら

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