見出し画像

地元の学校を手本にしようとしないでほしい件 -Ep.2: 設備とリソース編-

前作の続きです。

私の出身国は国としてはかなり裕福なのに、なんだかそれに見合ったお金が教育にかけられていない印象があると、私個人は思っている。

これは日本でもよく話題に上がる問題で、どこの国もかなり課題を抱えているのではないかと思う。現在は見れなくなっているが、文部科学省の以下の資料を見つけた。(リンクはWeb Archive)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/bunka/dai3/dai1/siryou4.pdf

この文科省の資料に補足したいことがあるのだが、高等教育になった途端ドイツで公費が大量に注ぎ込まれているのは、ドイツで高等教育を受けられる人は小学5年生からそのレーンに乗せられていて、その延長(セット)だからである。そしてそこに行けるのは基本的には高所得者家庭の出身者が多く、「貧しいから働く」という事態にならない(貧困家庭出身者はギムナジウムになかなか入れない)からである。とはいえ、お金を出せば学力が高苦なるわけでもないというのはPISAで明らかになってるところでもある。正確にいうと問題はそこではないのだが、詳細は後述する。

自分が現地校で体感したところではなんとなく貧しい雰囲気が常にあったので、今回は主にその話をしていきたいと思う。


建物がボロい問題

日本では「恥ずかしい」という理由で学校でトイレに行けないという話を聞いたことがあるのだが、"Die Wahrheit über die Schule"という以下の動画によれば、向こうでは生徒の70%がトイレに行くことを避けているという調査結果があるとか。こちらの動画はFunkというドイツの公共放送が運営しているチャンネルのものである。

ダンボールで修復された割れた窓ガラス、スプレーの落書き、机と壁にはガムが張り付いている。これがそこそこ標準的な学校の姿だと思っていただきたい。環境の違いもあり、向こうでは建物の建て替えを日本のように頻繁には行わないため、従来の建物の作りが近代的な学習に向いていないという指摘も出ているという。

今思い返せば日本の学校で給食の時間などで机を動かして座席移動があるのを知って驚いたような記憶がある。班分けをしたりする文化も関係あると想像する。
あと右利きが多いため窓は左側に来るように教室が設置されているという話も聞いた。私の小学校時代なんて「日が出ているし電気代がもったいないから」という理由で窓際じゃない薄暗い席で黒板を書き写させられた覚えがある。

教師不足

教員の高齢化が深刻になっている。考えが古かったり、字が汚くて読めなかったりして、なかなか生徒としても頭が痛いものだった。さらなる問題は、技術的な意味で、新しい教育方式についてこれないことである。技術関係の遅れは国家レベルでかなり深刻であり、これは別のエピソードで大々的にお話しする。

"Quereinsteiger"と呼ばれる他の分野からやってきて専門外を教える教員の増加も問題になっており2006年は3%、2017年には10%に登っている。ベルリンだけでは33%にもなるという。

また研修の予算がないことも問題だ。法律上「教員にとって生涯教育は必須」としているし、教員から要望はあるにもかかわらず、現実では予算は減るばかりで上質なでアップデートされた教育を保てない現状がある。仮にあっても短期だったり、理論的すぎてあまり実用的でないんだとか。実際こちらでどのようなコースがあるのか見ることができるが、あまり説明が具体的ではないし、確かに現場感がなさそうだなと感じる。

"Qualitätsoffensive Lehrerbildung"の予算はつけられており、これは教員育成予算;授業以外の教育と変化への対応、また実践的教育を後押しするものである。(Qualitätsoffensive Lehrerbildung - BMBF)この教員育成予算500万ユーロのうち、研修への配分は衝撃の0ユーロである。つまり新人に全振りしている状態ことも指摘されている。

Und Bund und Länder geben zwar 500 Millionen Euro für die Qualitätsoffensive Lehrerbildung aus, aber darin ist kein einziger Cent für die Weiterbildung enthalten.

Lehrerfortbildung: Schulforscher zieht traurige Bilanz - DER SPIEGEL

日本だと教員免許更新制度に当たるのだろうか。日本の講習内容を見たが、これは絶対必要だったと思わざるを得ない。(令和2年度 免許状更新講習の認定一覧(令和2年12月現在):文部科学省)

風通しの悪い企業みたいな感じで、学校も結局のところ閉じた空間の一つであるから、世の中の変化を定期的に認識してもらう必要はあるように思う。例えばアジア人の平均体温とかでもいいから。(アジア人は熱が出てもそれが白人にとっての平均体温だったりするので、早退が認められないことがままある。)

予算がない問題

ではなぜ予算が下りてこないのか?国は金持ちのだが、教育はイマイチ優先されていない理由はなんなのか。

まずBIP(Bruttoinlandsprodukt)、つまりGDP的に教育への投資は4.2%で、EU平均の4.5%以下である。(数字の読み方がよくわからなくて申し訳ない。)これはOECDの中でもかなり低い方で、金がない、というより学校に予算を引っ張ってこれていないという話らしい。

過去の投稿で語ったPISAショック後の改革は成功はしたものの、実は科学的根拠がなく「とりあえずやってみた」だけだったりする。"改革"を謳うことで「何かしている」感を出してるという側面があるのだ。

その中でも "G8"政策というものがあり、2008年にとんでもない苦労をして導入したものの、2017年には撤廃された。地域差をなくさないと意味がなかったのだ。地域格差の詳細についてはは今後に続く。
※G8とは、ギムナジウム教育を一年間縮めてEU標準に合わせる、という謎の政策だった。短期間で学習量は増えるし、大学入学年度がずれ込むしで大混乱を招き、ノーマネーでフィニッシュした失策である。

ここで改めて押さえておきたいのは、金さえ出せば学力が高くなるわけではないということだ。おそらくPISAの調査はそこの相関関係も見たくて始めたんじゃないかと予想する。結果、PISAは「お金をつぎ込めば成績は良くなるか?」という問いに対し、「途上国では差が顕著、しかし先進国は大差なし」という答えを出した。日独は大体同じくらいの予算を使っているようだが、読解・自然科学の成績は日本のが高買ったりする。米国はもっと予算を出してるが、成績は同じか下である。
一方で公費が入っているところで、そのお金を減らすと学生が一気にレベルが下がる可能性はあると思っている。(が、実験するわけにもいかないだろう。)

ベトナムの例(PISAやIQテストの結果)を見てると、贔屓目なしに東アジアがちょっと異端と思わざるをえない。正直、地球のこちら側の方がピンチと隣り合わせというか、"悪い見本"を見て「ああはなるまい」と思う機会がそこそこある気がしている。「いろんな人がいていいのよ~」という言説は人の頭を悪くするとは言わないが、嫌な人を見他ところで結局悪口を投げつけて終わりだし、やはり人の成長のきっかけを奪っている感じがする。あるいは理数とIQが強い=法則性とかそういう能力が培われる土壌が生活の中にあるとかそういうことなのだろうか。

環境は良くなってほしい

猛暑や積雪のある極端な気候の地域は設備を整えてくれと常々思っていた。冬場になると校庭のコンクリート一面が凍ってスケートリンク状態になるのが危なくて危なくて本当に嫌だった。

それに割れ窓理論も結構関係あるとは思っている。別に私が通っていた学校が荒れていたわけでは決してないのだけど、綺麗な校舎もあることを知ると民度の差を実感してまう部分がある。ガムの張り付いていない机で勉強してみたかった。

リモート化ももっと進むと良いなと思っている。私の地元はネットワーク環境が悪いし、移民も増えたため格差も広がっているが、授業は受けたい系不登校の人には嬉しいではないかと思っている。空き教室があれば(同級生に会わずして)登校もできるかしれないし良いのではないか。自分は授業受けたくない系不登校だったので正直いうとよくわからないのだけど。

セキュリティ面も改善されればと思う。公立校での無差別殺人について投稿をした。

私立学校ではイジメ対策ではなく不審者避けとして監視カメラがあった。私の通っていた日本人学校でも謎のおじさん襲撃未遂事件があったのだが、(教員に抑え込まれ無事警察に引き渡された。)それ以来監視カメラが設置された。公立校も導入されれば無差別殺人も少しは抑えられるのではないかと考えている。

そして何よりきになるのが教員の家老である。教師の仕事はどこの国でも増えてるようなので、そこをサポートできる職員を雇うとか、そういったことができれば教員もより生徒との時間が取れて良いのではないだろうか。もちろん「給料上げてやれよ」という話もあるのだけど、日本はいわゆる「公務員アンチ」も多いようなので言及しづらいところではある。しかし教員の待遇を上げることは生徒の質を上げることに繋がると私は思っている。

習近平政権のスローガンの一部「青年強則國家強」ではないけれども、教育の質を上げ、質の高い人材を作ることが国家のためになるのではないか、よって教育への投資や問題点の改善は必要不可欠ではないかと考えている。

#教育 #学校 #教育リソース #教育予算 #ドイツ  #海外 #外国 #帰国子女 #異文化

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?