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連載・長編小説【新入社員・山崎の配属先は八丈島!?】㉑

  連日連夜、夏期はバーラウンジの営業もおこなっていた。店内にはハワイアン・ミュージックの「小さな竹の橋」が流れていた。
わたしは、田中チーフから引き継いだ「手作りパッション・リキュール」に今年収穫したものを追加して大切に保管していた。
そのリキュールをベースにオリジナル・トロピカルカクテル「SPLISH!SPLASH!」を考案して提供をしていた。
夏に似合うミュージックのひとつにわたしの大好きな「オールディーズ」がある。50年代から60年代の良きアメリカの音楽だ。その中のBobby Darinが歌う「Splish Splash」からネーミングの着想を得た。
パッション・リキュールのほのかな黄色とブルー・キュラソーの青色がグラデーションとなり大きめでチューリップ型をしたトロピカルカクテル用グラスの中で「八丈の小さな海」を表現してみた。
パイナップルジュースを入れ、グラスの縁には葉の着いたパイナップルとピックに刺したカクテルチェリー、小さな傘も飾りに付け加えた。
自分で考案したカクテルの注文があった日は、嬉しいものだ。
来店されたご夫婦の奥様の方が注文してくれた――籐製のガラステーブルに「お待たせ致しました」と置きながら、カクテル・レシピや「八丈の海のイメージ」を付け加えてご説明する。
とても喜んで頂けたようだ。奥様が着ている赤に白にハイビスカス柄の「ハワイ・ムームー」にとってもマッチしている。

八丈の夏は「商工まつり」で盛り上がる。
三日間おこなわれ、家族持ちを中心に休日シフトを組んだ。
「なんでもかんでもみんな~踊りをおどっているよ~」
ちびまるこちゃんの「踊るポンポコリン」が会場に鳴り響いている。
町営グランドの真ん中には「やぐら」が組まれ、それを取り囲んでぐるりとたくさんの模擬店が出ている。
「焼きそば」や「フランクフルト」「たこ焼き」――どれも本土の半値くらいで食べることができる良心的な価格だ。
今ちゃんと一緒にビール片手にまつり会場を歩いていると、茂さんファミリーや、料飲の八高むすめ達とすれ違う。浴衣姿で、それこそ「でえーじけ」だ。
お盆時期のこの祭りが終わると、段々と夏も終わりのムードとなってゆき、お客様も徐々に減ってきた。
to be continued……

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