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悪辣の魔法使い

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昔むかし。人を襲い、害をなす悪鬼と間違えられ、小さな瓶の中に封じ込められてしまった、名もない子どもの小鬼。  長い歳月のあと、封印から解き放って救い出し、レイという名前まで付けて…
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#怪物

【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第4話

第4話 当たり前じゃないものだから、当たり前に  黒い大蛇の姿の怪物が、襲い来る。  レ…

吉岡果音
10か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第5話

第5話 半身の契り  木の葉の間から降り注ぐ日の光は、川面で踊るように輝く。  太陽は、…

吉岡果音
10か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第6話

第6話 せめて勇者に  ざわ、ざわ、ざわ。  囁かれる、声。人ではない者たちの。  ほと…

吉岡果音
10か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第7話

第7話 少女救出作戦に、乾杯  旅人たちが宿屋を探し、働き終えた大人たちが酒場に繰り出す…

吉岡果音
9か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第10話

第10話 それは幸いだったと思う  うっそうと連なる緑が途切れ視界が開けたとき、小高い丘の…

吉岡果音
9か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第11話

第11話 賑やかな旅のはじまり 「私も一緒に連れて行ってください」  晴天の朝に見る一面の…

吉岡果音
9か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第12話

第12話 剣と怪物退治 「レイオル……! お前も剣を使えるのか!」  大剣を構えたアルーンが、レイオルの背に声を掛けた。青く光る剣を持つレイオル。  旅の剣士アルーンは、剣を手にしたレイオルの立ち姿を一目見て、レイオルが凄腕の剣士であるとすぐに理解した。  それにしてもアルーンとって不思議だったのは、レイオルの右手にしっかりと馴染んだ様子の美しい剣が、どう見ても突如なにもない空間から現れたようにしか見えないことだった。 「まあな」  レイオルの剣が、鋭く大きな青い軌跡

【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第13話

第13話 森宝玉  小鬼のレイの頭にある、三本の角。 「時間・空間・物質を表わすって聞いて…

吉岡果音
8か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第14話

第14話 星聴祭  森宝玉たちを換金してもらい、外に出ると町はすっかり夕日に染まっていた。…

吉岡果音
8か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第15話

第15話 青白い炎を内包したような  流れてくる音たちに、立ち止まる。  それは、音楽。人…

吉岡果音
8か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第16話

第16話 もう一人の魔法使い  楽団は最後の曲を演奏し終えたようで、ただ澄んだ空気と星のま…

吉岡果音
7か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第18話

第18話 櫛とバックル  オレンジ色の街灯の下、小鬼のレイは、一生懸命辺りを見渡していた。…

吉岡果音
7か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第19話

第19話 明日は違うのかもしれない、未知の朝  いつも、悪夢は決まっていた。  巨大な怪物…

吉岡果音
7か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第20話

第20話 豆の話、未来の話  豆。  小鉢の中の煮豆を、小鬼のレイは一粒ずつたいらげる。  うーん。おいしいなあ。  人間の食べ物はどれもおいしい。その中でも、つまみにくいし掬いにくい、と苦戦していた豆料理が、レイの大好物となっていた。 「レイは豆が好きか」  朝日差し込む宿屋の食堂。  レイの斜め前に座る剣士アルーンが、尋ねる。アルーンの大きな口は、早々に朝食をぺろりと平らげてしまい、いち早くお茶をすする段になっていた。ちなみに、二番目に早く食べ終えそうなのはレイ