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寄り添ってくれて、ありがとう。


ひさしぶりに、図書館で「母の友」をまとめ借りした。


「母の友」という雑誌があることは、母になるまで知らなかった。
母になって、雑誌コーナーでそれを見つけたとき、なんとなく今読むものなんだろうと手に取った。

片手で持てるサイズ。
優しい色とあったかい表紙の絵柄。
そして、どの号も当たり前のように、「母」であるわたしの気持ちを代弁してくれる言葉が載っていて、それを読むたびに「ああ、わたしは間違ってないんだ」と心底安心した。


たとえば、今年の4月号には。
「子育てを"たのしむ"」というひとことが。

なんか子育てを楽しめないなぁ、と悩むことが多いわたしに、ぴったりだ。
早速、次男の昼寝中にいそいそとページをめくった。



開いてすぐ、表紙の後ろ側には、編集部からのメッセージが書いてある。
今月号をどのような意図でつくったか。
そんな内容をふむふむと読みつつ、下の横文字を見る。
そこには、毎号おなじことが書いてある。

子どもは大事、わたしも大事。
子どもや家族を大切にしながら、自分自身も活き活きと暮らしたい。
昔ながらの価値観に縛られず、「母」をもっと自由のほうへ。


この最後の一文。
「母」をもっと自由のほうへ、が好きだ。

これを読むと、からだが遠いところへスーッと羽ばたいていけそうな、軽やかな気持ちになる。
自由のほうへ、飛んでいきたい。
そんな気持ちになりながら、さらに次のページをめくると、そこには見開きの漫画が描いてある。

小幡彩貴さんの、「Kinderszenen(キンダースツェーネン)」だ。
ドイツ語で、「子供の情景」という意味だとネットで見た。

「母の友」のインスタによると、2023年4月号から連載が始まったようだが、どの号の漫画も思わずじっと見つめてしまう。


この、ほとんどセリフもない、数コマの漫画がわたしは大好きだ。
線の太い独特なイラストも好きだし、切り取られている一コマが子育てあるあるなのに、どこかまぶしい。

小幡彩貴さんのイラストは、、どこかで見たことがあったものの、きちんと知らなかった。
イラスト、もっと見たいなあ。



さて、そうやって小幡さんの漫画をひとしきり見つめたあと、ようやく本文を読み始める。

4月号の「子育てを楽しむ」について、さまざまな分野で活躍されているひとが、育児経験をふりかえり、「育児を楽しめるか、楽しめたか」を語っておられる。
わたしの大好きなエッセイスト、古賀及子さんのものもあって嬉しかった。

やはり「無邪気に楽しいばかりとはいかない」という意見が多数のようだ。

___わたしも、そうだなあ。


子どもがかけがえのない存在で、愛おしいのは当たり前で、大前提なのだが。
それを踏まえても、やっぱり「母」として毎日生きるということは、ものすごく大変だ。
「あー育児って楽しいな♪」と、手放しで言える日はない。
少なくとも、わたしは。


でも、「母の友」は、そんなわたしの気持ちにそっと寄り添ってくれる。

わたしは「子どもが手がかからなくなるコツ」とか、「ワンオペの時短術」とか、「育児を楽しむ3つのヒント」とか。そういうのはまったく読みたくない。
そんなうわべっつらのノウハウは、役に立たないと知っているからだ。

わたしの子どもも、母であるわたしも、そのノウハウにぴたりと合うかどうかなんて、分からない。
もちろん、参考にすることはあるけれど。
でも、付け焼き刃で育児がどうにかなることはあまりないんだ、とようやく学んだ。

それ以上に求めているのは、「共感」だ。

育児を楽しみたいって思うよね。
でも、うまくいかないよね。
ひとりで子育てをするのって、大変だものね。

そんな共感を、うわべだけじゃない方法で伝えて、寄り添ってくれるのが、「母の友」だと感じている。

即効で役に立つことばかり書いてあるわけじゃない。
でも、わたしを孤独から救い上げてくれることが書いてある。
心を軽くする言葉が書いてある。
だから、読んでいて安心する。

まさに、母の「」だ。
となりにいるのだ。
母の「コツ」とか、母の「ワザ」とかじゃなくてほんとによかった。


こうしてわたしは、借りてきた「母の友」に、支えられて、ひとときの自分の時間を過ごした。
自分の時間を過ごすことは、結局「子育てを楽しむ」ことにもつながってくる。

そういえば、どんな雑誌でも巻末あたりの「本の紹介」コーナーみたいなページが好きなのだが。
今回の「BOOKS」のコーナーでは、くどうれいんさんと東直子さんの共著『水歌通信』が紹介されていた。


『うたうおばけ』や、「日記の練習」ですっかり虜になってしまったくどうれいんさん。
この本はまだ読んでいないが、ぜひ手に取りたい。

コラムの最後に、こんなことが書いてあった。

自分にもどるためにほんとうに必要なのは、「推しの動画を観る」というような趣味の時間ではなく、言葉の森で、思索の海で、心ゆくまで彷徨う時間なのかもしれない。そんなことを思わせてくれる心地よい一冊だった。


ああ、わかる。
自分を取り戻すために、日中の隙間時間に好きな漫画や動画を楽しんで、息抜きしてみることがあるのだが、イマイチ効果が薄かった。

わたしが求めているのは、これじゃない感。
その原因は、この書いてあるとおりのことかもしれない。

考えたり、言葉にしたり、読んだり、書いたりする時間。
そうやって、こころを整える時間。
それが、わたしの求めている「ひとり時間」だ。

そんな「自分を取り戻す時間」があれば、育児の大変さにも向き合う力も湧いてくる。
子育てを、もうすこし楽しめるようになるかもしれない。


たくさんのことに気づかせてくれる「友」に感謝して。

今日も一日ゆるゆるとがんばろう。

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