204th_死ぬ時は一緒だッ!('24 紀州口熊野フルマラソン完走記・後編)
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このブログは、
「生涯、荒唐無稽!」を掲げ、
ジャーニランという200~500kmを走る
というクレイジーなレースにおいて、
その最高峰を目指すとある男の実録である。
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■ (前回までのあらすじ)
・年明けに走った大阪30kの結果が思わしくなかったこともあり、
目標をサブ3から3:03に変更して、参加。
・寝坊やトイレ渋滞、列の最後尾で出遅れるも、
なんとかスタートラインに立てた。
■ 言うてる間に、スタートの号砲が鳴る。
緊張している暇もなかった。
いつもなら、
自分自身の体にスキャンして気持ちを落ち着かせ
最後まで走り切れるよう気持ちを込めるが、
そんな間さえもない。
もとより、スタートの号砲が鳴っても、
列の後方だから走るにしても
ノロノロと列が流れにそって進むしかない。
それでも、
ちょっとでも前の方に食い込もうと、
列の端のほうを走っていると、
同じように前に進もうとするランナーたちがいた。
それに紛れて、徐々にペースを上げていく。
■ 1kmも走ると渋滞の群を抜けて、
ペースを掴むことができた。
早すぎず、遅すぎず、
なるべく余裕のある4:20/kmに近づけていく。
ほとんどフラットなコースと聞いていたが、
思いの外、坂がある。
スタートして2kmの地点で、すでに十分な傾斜を感じた。
がしかし、
周りのランナーはそれほど傾斜を気にしている様子はないので、
自分の走り方が上り坂に弱いことを改めて実感する。
その反面、下り坂では周囲のランナーを追い抜き、追い越すことができた。
■ 5kmを21分36秒で通過する。
正確な5kmのタイムを把握していなかったので、
走りながら、21:36÷5を計算する。
ほぼ4:20/kmのペースで、一安心だ。
前回の大阪30kでの失敗の原因を、
「水不足」と「フォームの崩れ」にある考えていたので、
エイドでの水分補給を怠らず、
かつフォームを常に言い聞かせて走る。
"脚がちゃんと機能する状態であれば、
レース後半でもちゃんと走れる"、
という仮説があったからだ。
加えて、余裕のある現段階で、
上半身のストレッチと呼吸を整えながら走った。
もっとも後半になれば、
無我夢中で走るフェーズになってくるから、
今のうちにリラックスしておきたい。
ちょっとでも力は温存しておく。
コースは民家の多いエリアを走る。
ご年配の方が多いが、小さな子供も時々応援してくれる。
元気な子供もいれば、何が何だかわからず手を振る子供もいる。
それら一つ一つには応えることはできないけれど、
できる限り声援に笑顔で応えながら走った。
■ 10kmぐらいまでは少しづつランナーを追い抜いていたが、
それもなくなり、ほとんど周囲のランナーの顔ぶれが決まってきた。
周囲のランナーはほとんど男性で、
最後に抜いた女性は4:30/km前後で走っていた。
女性で、このペースで走るのはかなりきつい。
男性で言うと、4:00/kmぐらいに相当するので、
心の中でエールを送りつつも、
僕は僕のペースで走ることに専念した。
村の中を走っていたコースは、
一路、冨田川沿いを走るようになる。
相変わらずの声援が絶えることはない。
大都市部でのマラソンで声援が多いのは、
その人口比で考えても理解できることだったが、
和歌山のお世辞にも栄えているといえない田舎町で
沿道の応援が絶えることがないのは、
驚くべきことであった。
■ そんな声援に答えながら、
冨田川を河口へと向かって走っていると、
突然、後ろから数名の戦隊を組んだ集団が現れた。
男性3名(うち2名は20代のベージュのタンクトップ、1名は50代と思われる男性)、もう1名は20代の女性、の編隊で、
タンクトップの男性2名が、
明らかに隊の先頭に立ち、引っ張っていっている。
僕自身、ほぼ最後尾からスタートしたので、
誰にも追い抜かれることはないと思っていたので驚いた。
一瞬、彼らの登場に怯んだが、さして特段早いわけではない。
自分が走っているペースに毛が生えた程度だ。
だが、この20代の男性2名、
見るからにガチ系のランナーである。
「箱根駅伝や大学の陸上部です」と言われても納得の姿だ。
でも、なんでこんな遅いところにいるのだろう?
入賞とか目指す系の人では?
こんなランナーについて行って大丈夫なのか?
どこかでラストスパートをかけるのでは?
色々と疑問は湧いたが、放っておくとどんどん離されてしまうので、聞くに聞けず、、、
若干、自分のペースに間伸びしてしまっているようにも感じていたので、
ここはありがたく隊の最後尾につかせていただき、
引っ張っていってもらうことにした。
と言うより、
正直、20代女性ランナーに、
オッサンホイホイ的に引っ張られた
のではあるがヽ(´▽`)/♫
7〜8kmくらい、この集団にご一緒させてもらったが、
集団のメンバーも変えて進んでいく。
気持ちが?脚が?引っ張られた20代の女性ランナーも
17kmぐらいで姿を消した。
50代の男性ランナーも程なくして、離脱した。
各言う僕も、20km手前の坂までが限界であった。
このコース最大の上り坂で、脚がついていかず、
5m、10mと離されるようになった。
やはり僕の走り方では上りに弱いのである。
ここで無理について行っても脚を消耗するだけなので、
潔く現実を受け止め、せめて20代ランナー2人を視界に留めておく距離を保ことを意識した。
■ 20kmの地点で1時間26分。
3:03を目指す者としては十分なタイムである。
これを倍にして、、、と、そんなに上手くはいかないだろうが、
まだ足に余力を残した状態で、
ここまで来れたのは上出来ではないだろうか。
まだまだこれからも余力は残しておきたいフェーズである。
ひたすら、ただひたすらフォームを意識し、
動かすべき筋肉を念仏のように唱えながら走り続けた。
エイドでは必ず水分補給をし、持参した行動食も抜かりなく摂りこんだ。
そうして走っていると、
有難いことに28kmまで走れ、まだ脚は健在の状態であった。
残り14km、1/3。
今まで走った距離の半分を走れば、ゴールできる。
そう思うと、一気に加速して脚を使って走りそうになったが、ここは我慢。
今、加速すると、最後まで脚は保たない。
だから、落ち着いて、フォームだけをひたすら意識して、
維持するように努める。
■ ようやく32km地点まで来た。
沿道から「あと10km!」の声がかかる。
でも僕は、「まだ、まだだ」と自分をなだめながら、
自分の走りをキープし続ける。
落ち着け、ここからじゃ保たない。
冨田川を上り、第9エイドを超えて、34km地点。
「今だっ!」
一気にギアを上げる。もうフォームも何も気にすることはない。
普段は使わない腕の振りや蹴る力も動員して、
本来の4:20/kmぐらいのペースまで上げる。
「大丈夫、あと8kmなら、なんとかなる。
いやなんとかする!」
気づくと、周囲のランナーは次々とペースダウンをしていた。
前を走っていたはずのタンクトップの男性ランナーも、
歩くようにしていた。
ここまで引っ張ってくれたお礼も兼ねて
「ファイト!」とだけすれ違いざまに声をかけて走った。
もう無我夢中、表面張力の状態であった。
「胸が張り裂けそう」とは、よく言ったもので、
気を抜けば一瞬で落ちて行ってしまっただろう。
おそらく脚も気を抜いた瞬間に攣ったに違いない。
そういったことに薄々気づいていたからこそ、
(そして、実際に脚を攣ったがそれも無視して!)
気持ちを前向きにして走り続ける必要があった。
■ ある時、追い抜いたランナーが後ろからついてきた。
僕が誰かに引っ張られたように、
彼もまた僕に引っ張られるようにして走っていた。
こう言う時はお互い様だ。
一緒に走りながら、「もうサブ3は焼け石に水かもしれませんが、ベストを尽くしましょう!」と声をかけながら進んだ。
ようやく、本当にようやく40km地点まできた。
(あと2km!)と思った瞬間、
後ろについていたランナーが僕を追い抜いた。
明らかに僕よりしんどそうにしていたのに( ゚д゚)!
「それ、詐欺っすよw」と虚しく吐き捨てたセリフとともに、
置いて行かれた僕はその瞬間に右足が激しく攣り、
彼とはぐんぐん距離が離れていった。
■ 攣った右足はすこぶる悪い。
地面から脚が離れた瞬間に足先とふくらはぎが攣り、
明らかに左方向に曲がっているのがわかる。
だがしかし、
それでも走ろうとして地面に着地すると、
少しだけマシになる。
それでまた前に行こうとして、
地面から脚が離れた瞬間に足先とふくらはぎが攣る。
そして、また少しマシになって、、、
これの繰り返し。
手持ちにあるのは、塩タブレットだけで、
急いで口に突っ込むが、なかなか治らない。
もうゴールは目の前、すぐそこなのにここで歩きたくない。
ここまでやってきたことを台無しにしたくない!
嘘でもいいから、走れ!
脚ではなく、体を前に前にして、気持ちだけで走った。
■ 追い抜かれたランナーが、
遥か先で右に曲がったのがわかった。
その方向からは騒がしいBGMが聞こえる。
ゴールである役場の方向だ。
「もう少し、、、ほんともう少し!」
沿道の声援が一段を大きくなる。
小さな起伏で若干の下り坂になった。
下りは自分のフォームの真骨頂、
ここで走らず、どこで走る!?
そして、
最後のストレートは全力で走る!
「どうせこの後、脚は使い物にならないのなら、
砕け散るまで走れ!走って、走り切って○ね!!!!
死ぬ時は一緒だ!!!」
そうして、
「っしゃぁぁぁぁぁ!」と雄叫びをあげてゴール。
3時間05分16秒
ゴールテープを切っても、
軽い興奮状態で、その場でぐるぐると歩き回って
計測バッジを回収してもらい、ようやく落ち着く。
不思議なもので、脚が攣りそうな気配はない。(水分とったから?)
完走賞の梅ジュースをいただき、
先に詐欺られたランナーとお互いの栄誉と感謝を述べて、車へと向かう。
たった2分でも自己ベストを更新した達成感と、
やり遂げてホッとした感情で満たされていた。
車で待つ嫁に早くこの思いを伝えたくて、ウズウズしつつも、
体は思うように動かない。
そんな歯痒さを感じながらも、
「ろくに練習していないのによくやったな」と自分の体に感謝した。
(終わり)
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