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第6話 収穫の喜びとドラマチックな出会い

畑に種が蒔かれてから7日が過ぎた。スカシも島での暮らしにすっかり慣れてきていた。
 トウモロコシ、サトウキビ、キャベツ、ハクサイ、ダイコン、ダイズ、
ムギ、キビ、アワ、ホウレンソウ、ジャガイモ、サツマイモ・・・
収穫できるほどにすくすくと育っている物もあった。さすがにスカシ一人で食べきれる量でもなかったので、島での生活を援助してくれた仲間たちとも分かち合うことにしたのだった。
 コモグラたちがキャベツ、ハクサイ、ダイコン、ジャガイモ、サツマモを地中の仲間たちと分け合うのに必要な分だけ持っていった。

スカシは土かまどから焼きあがった食器を取り出し、台所に持っていった。
そして、トウモロコシを1本、キャベツとハクサイを1玉、感謝しながら収穫すると台所にもっていき、さっと水洗いした後、ナイスナイフで細かく刻んで『ミックチュベジタブリュウ』とつぶやきながら食器に分けると、越冬ツバメの巣、アリンコチエたちの巣、アムノアミエ、ワタリガラスの巣に届けながら感謝を伝えていった。

サルモノクレタの分も忘れてはいなかった。彼も『ミックチュベジタブリュウ』をスカシと一緒に味わった。

スカシは『ミックチュベジタブリュウ』をつまみながら、収穫したムギ、キビ、アワを使って、雑穀米を炊くことにした。
 かまどに火をつけ、雑穀米と水が入った土鍋をかける。グツグツと音を立て、良い匂いが台所に漂ってきた。炊きあがると、土鍋をかまどから外し、しばらく蒸らす。
 蒸らしている間に、土瓶に水を入れてかまどにかけて湯を沸かした。
お湯が沸いたらハーブの葉っぱを入れてハーブ茶にしようと考えたのだった。

そして、無人島で暮らし始めてから初めてのご飯とハーブ茶をサルモノクレタと一緒に味わった。

スカシ
 「噛めば噛むほど味が出てうまい! クレタ、どうだ?」

サルモノクレタ
 「初めての食感と味覚だよ。 最高にうまい! ありがとう。
 ハーブ茶も最高!」

スカシ
 「喜んでもらえてよかったよ。 クレタがいてくれたから今が
 ある。 俺の方こそ、ありがとう。」

こうしてスカシは島で出会った仲間たちとともに収穫を喜び合った。

スカシ
 「今度はみそを作ろうと思うんだけど、それには塩が必要だ。 
 ここは島だからどこかに海があると思うんだけど、海水を汲むのに
 良いところ、知らないか?」

サルモノクレタ
 「もちろん知ってるよ。 忍びの里から島を訪れる人たちが利用す
 る船着き場にもなってるところがある。 そんなに遠くないから
 案内するよ。」

スカシ
 「そうか、よかった。 じゃ、早速案内してくれるか?」

サルモノクレタ
 「ついておいで。」

スカシはフィルターに使う樹皮、ろ過するための漏斗と容器、ろ過した海水を貯めるための桶、樹皮と漏斗を運ぶための桶を持って、海岸を目指した。

歩きながら、サルモノクレタがスカシに問いかける。

サルモノクレタ
 「ところで、海水から塩を作るって言ってたけど、スカシは造った
 ことあるの?」

スカシ
 「ないよ。 初めての挑戦。 でも海水には塩分があるから、混ざ
 り物を除去(ろ過したり蒸発したり)しながら水分を飛ばせば、
 最後には塩が残ると思うんだ。 ここでは時間を氣にすることもな
 いから、なんでも挑戦してみようと思うんだ。」

そうこうしている内に二人は海岸に着いた。
 スカシは早速、容器に漏斗をセットしてフィルター代わりの樹皮を漏斗に敷いた。そして海水を桶で汲んで、その海水を漏斗にゆっくり注いでいく。そして容器にたまった海水をもう一方の桶に移し、容器が空になると、また漏斗をセットして海水を注いでいく。汚れが除去された海水が桶の7分程度たまるまで、この動作を繰り返した。
 そして、家路につこうとしたその時だった。黒ずきん姿の人影を乗せた小舟がスカシ達に近づいてきた。その人影は女性だった。

スカシ
 「君の名は?」

黒ずきん姿の女性
 「みやみずみつは~」

スカシ
 「俺の名は、たちばなたき~ って、それはアニメだろう(笑)。
 俺はスカシ。 音無(おとなし)スカシ。 んで、肩に乗ってるの
 は相棒のサルモノクレタ。
  はじめまして。 この島で暮らしてます。 ここで出会ったのも
 何かの縁・・・ということで、友達からよろしくお願いします。」

黒ずきん姿の女性
 「ねるとんか!?(笑) あたいは“忍びの里”から修行と学習を
 兼ねてこの島に来たの。 名前はシノブ。 イザナシノブよ。
  ところで、忍びの棟梁でもある父からは島の動物やサルは野蛮だか
 ら氣を付けるように言われてたけど、あんたは平気なの?」

   ※『ねるとん』とは、1987年10月〜1994年12月、
    毎週土曜日23時から放映された、集団お見合いのような
    恋愛系バラエティ番組が語源で、「お見合い」や
    「コンパ」を意味する。
    (http://zokugo-dict.com/24ne/neruton.htm

スカシ
 「野蛮? どこが? クレタは良き相棒だし、この島で出会った
 動物たちも自然もみんな大事な仲間だし、ここでの暮らしも
 ずいぶん助けてもらってるよ。 それって先入観と言うか、
 偏見じゃないの?」

シノブ
 「確かに偏見はあるかも・・・。 あたいも何度かこの島に来てる
 けど、襲われたこともないし・・・。 変だな? とは思ってたわ。」

スカシ
 「ところで、その黒ずきん姿は忍者の装束?」

シノブ
 「そうよ。 似合うでしょ?」

スカシ
 「・・・ まぁ、立ち話もなんだから、家に行って話そうか?」

シノブ
 「家? ここは無人島よ。 氣は確か?」

スカシ
 「だから造ったんだよ。 家もトイレも風呂場も畑も。 動物たち
 の協力や自然の知恵のおかげでね。 まずは見てみて。」

これがスカシとシノブとのドラマチックな出会いだった。

    テレレレッテレー♪
  スカシの無人島クエストに、イザナシノブが加わった。

  この物語はフィクションであり、作者である私の妄想から
  産まれた空想物語です。したがって、登場する人物や名称などは
  実在のものとは異なりますので、ご注意願います。

        つづく

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