4-こどものブツブツ交換レート、そして、ふかかち、ふかかち。
※【1-こどもの野性と昆虫の首】
【2-こどもの野性と昆虫の首】
【3-こまこまを研究しまくる】からの続きです。
大富豪と家来、土手へむかう
広島にある父の生家に、私と弟7才5才は預けられていました。
そこへ、大阪の母から、初めてお菓子の詰め合わせが届きました。
やったー!
母に誤魔化されながらも、しつこく電話で懇願したお菓子。念ずれば道開く。
これぞ、大富豪。
さっそく、大富豪とその家来は、クッキーを3枚ずつ持って、近くの土手へ遊びに行きました。
すると土手には、前にキリギリスバッジをして遊んだ、ツワモノの姉弟がいたのです。会うのは、あれ以来。
(キリギリスバッジ話はこちら)→1話 と 2話 (注意;ややグロ…)
ツワモノ姉弟の白いモノ
その2人は、草の上に座り、無表情で何やら白いモノを食べています。
そばにいくと、食べているのはゆで卵でした。
虫でも食べてるかと。。。ホッとしました。
そのゆで卵、黄身が、見慣れた色とは違いました。
つやつやした濃いオレンジ色。
ーーあんな卵見たことない
その当時、半熟卵は、今ほど当たり前には存在していませんでした。
いや、していたかもしれないのですが、少なくとも我が家の食卓でも、よく行く近所の喫茶店モーニングでも、固ゆで卵しか食べたことはなかったです。
大富豪は、一歩前に出て、なんとなく女の子にクッキーを1枚差し出しました。
持ってるから、持ってない人に分ける。ただそれだけでした。
でも、女の子はクッキーと引き換えるかのように、食べかけの卵をくれたのです。
ーーえ……?くれるん?
戸惑いながらも、受け取る私。
(大富豪。ここで平民にもどる)
もらった卵を、弟と半分に分けて食べたところ、黄身がとろり。あれ?
パサパサしてない、そして卵全体に塩味つき。おどろきました。
美味しい……。
食べかけをもらって、さらに分けて食べる……。今では考えられませんが、昔は、学校の先生と回しのみだってしましたし、食べモノやドリンクのシェアに関して、かなり鈍感で寛大でした。
それ以来、毎日、お昼過ぎに土手に行けば、彼女たちがいるようになったのです。
***
その姉弟は、毎回2個の半熟卵を持ってきていて、それを私たちに2個とも、黙って差し出してきます。
そういえば、会話をした記憶がほとんどない。
つられて、私もクッキーを2枚、差し出します。
それが2日も続くと、[卵1個↔️クッキー1枚]の交換レートは、既成事実として成立してしまいました。
***
その後は、何度も交換しました。
もう半熟卵が欲しくない時も、必ず交換です。その姉弟がかもしだす、“交換が当然”のふんいきに気圧されてました。
また、『今日は卵いらん』と断ることで、その後ずっともらえなくなるのもイヤだったからです。
いらん半熟卵は、持ち帰って祖母に渡しました。祖母は子供同士が仲良くなった(のか?)のをとても喜び、何らかのお礼をその姉弟の家に届けたりしていたようです。
この夏ほど卵を食べたことは、いまだに、ありません。
***
大阪での後日談
夏休みが終わり、大阪に戻った私が商店街をあるいていると、近所のおばちゃん連中から、声がかかります。
ーーお!ねぇちゃん、田舎から戻ったんかぁ、おかえり。長いことおらんかったな。楽しかったか?
そのたび、半熟卵のすばらしさを話す私。
ーートロ―としとって、めっちゃ美味しかった。おばちゃん、食べたことある?
3、4人には話しました。もっとかも?
***
ふかかち
一週間ほどすると、我が家の近くの喫茶店が、モーニングのゆで卵を、必ず半熟に仕上がるように時間をはかって、作り始めました。
“いつも半熟卵で出てくるモーニング“の評判は良く、ちょっと離れたところにある商店のおばちゃんたちも、半熟卵のモーニングを食べに来て、なかなかの繁盛ぶりだったそうです(学校から帰ると母が話してくれました)。
母:ーーふかかち、やね
私:ーー??
母は1階のお店と2階を行き来しているので、いつもすぐいなくなります。疑問と私は置いてきぼり。
ふかかち、ふかかち、ふかかち。
モーニングが大人気になること?
ふかかち、ふかかち。
音だけが耳にのこり、その数年後。
付加価値の意味を知り、コドモ心に強烈に納得した単語です。
ふかかち。(笑)
※以下へ続く
🌸最後までお読みいただいて、ありがとうございます🌸
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?