2-続;こどもの野生と昆虫の首
※1話の続き
ーーキリギリスの首?
女の子のシャツを、もっとそばで見たい。
一歩前に出ました。
後ろに隠れていた弟も、前に出て、のぞきこんでいます。
その時、女の子の左右の手で、何かが動いているのに気が付きました。
ーー1匹ずつ、まだキリギリスを持っている!
女の子の両手にある2匹は、細い脚で空(くう)を蹴って、もがき、ちいさな首を回して、女の子の指を噛もうとするのですが、絶妙な位置でつかまれていて、届きません。
女の子は無表情のまま、じっと私たちを見ていましたが、
ふと視線をはずし、
今度は、自分のシャツのあいてるところへ、チョンチョンと右手のキリギリスの顔を近づけたり離したり、し始めました。
そして、3回目ほどのチョンで、キリギリスがシャツに噛みつきました。
同時に、一瞬のタイミングで、女の子がキリギリスを、さっと引き抜いて、ポイっと捨てたのです。
シャツに残るのは、食いついた頭だけ。
ーーすごい。
声が出ませんでしたが、その時はじめて女の子が話しかけてきました。
「バッジみたいじゃろ、やってみるけ?」
「うん」
それから夕方まで、4人で遊び、私たち2人のシャツにも、3つずつのバッジが、ぶらさがりました。
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『バッジ遊び』から帰り、数日前から庭先に放置した虫カゴを思い出して、のぞいてみると、まだもそもそと動いています。夕ご飯の前に、その虫かごを開けて、逆さに振り、ちょっと弱った虫たちを解放しました。
「バイバーイ。おねぇちゃん、虫、元気になるといいね」
「うん」
ーー早く出してやればよかった
昼間にはバッジ遊びをした私たちの、弱った虫たちへの気持ちは、それはそれで、本当でした。
明日は、アリジゴクへの突撃です!(こりんやつ)
※続く
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