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2-続;こどもの野生と昆虫の首

※1話の続き

ーーキリギリスの首?

女の子のシャツを、もっとそばで見たい。

一歩前に出ました。

後ろに隠れていた弟も、前に出て、のぞきこんでいます。

その時、女の子の左右の手で、何かが動いているのに気が付きました。

ーー1匹ずつ、まだキリギリスを持っている!


女の子の両手にある2匹は、細い脚で空(くう)を蹴って、もがき、ちいさな首を回して、女の子の指を噛もうとするのですが、絶妙な位置でつかまれていて、届きません。

女の子は無表情のまま、じっと私たちを見ていましたが、

ふと視線をはずし、

今度は、自分のシャツのあいてるところへ、チョンチョンと右手のキリギリスの顔を近づけたり離したり、し始めました。

そして、3回目ほどのチョンで、キリギリスがシャツに噛みつきました。

同時に、一瞬のタイミングで、女の子がキリギリスを、さっと引き抜いて、ポイっと捨てたのです。

シャツに残るのは、食いついた頭だけ。

ーーすごい。

声が出ませんでしたが、その時はじめて女の子が話しかけてきました。

「バッジみたいじゃろ、やってみるけ?」

「うん」

それから夕方まで、4人で遊び、私たち2人のシャツにも、3つずつのバッジが、ぶらさがりました。

      **********    

『バッジ遊び』から帰り、数日前から庭先に放置した虫カゴを思い出して、のぞいてみると、まだもそもそと動いています。夕ご飯の前に、その虫かごを開けて、逆さに振り、ちょっと弱った虫たちを解放しました。

「バイバーイ。おねぇちゃん、虫、元気になるといいね」

「うん」

ーー早く出してやればよかった

昼間にはバッジ遊びをした私たちの、弱った虫たちへの気持ちは、それはそれで、本当でした。

明日は、アリジゴクへの突撃です!(こりんやつ)


※続く

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