3-こまこまを研究しまくる
昭和47年。
私と弟は、7才と5才。ひと夏、父の生家に預けられました。
その後10年ほど、春夏冬と、長期休みは預けられることになるのですが、この時はだれも予想していませんでした。
家から歩いて3分のところに、小さい山がありました。寄り道せずに登れば、てっぺんまで20分ほど。
木陰もたくさん。夏でもひんやりと涼しく、お気に入りの山でした。
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山を入り口は、左右に分かれていました。
ゆるやかな女坂と、きつい傾斜の男坂の2つのコースです。両コースは山の中腹で合流。
そして、合流したところにある狭い平地には、古い鐘つき堂が建っていました。
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わたしたちは、急な斜面がおもしろいので、いつも男坂を本気で走ってかけあがりました。
鐘付き堂につくと、砂だらけの板床に座って、それぞれポケットに持ってきたラムネを食べ、その空き袋に『エモノ』を入れて、持ちかえるのがいつものパターン。
これが『エモノ』の持ち帰り袋になります。ちいさい。。
食べ終わると、『エモノ』探しです。
行き先により、『エモノ』は変わります。
この場所では、エモノは『こまこま』でした。
巣は、そこら中に整列して並んでいます。
『こまこま』の巣に、小さな指先で、ほんの数粒の砂を落とし、おびき出すのです。砂が多いと出てきません。
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私たちのバイブルは『シークトカンサツ』
今も保管してあります。昭和感ただよう表紙、そして裏表紙はアップ写真ではグロテスクなので4分割にしました(^^;。中はボロボロでテープだらけ。漢字が読めないまま【シークト カンサツ】と呼びつづけてました。昭和46年7月初版。
写真のキャプション【アリジゴクの巣】の表現はおかしい。正しくは『こまこま』の巣。アリジゴクは、巣そのものを指します。
さて、現場に戻ります。
アリ地獄に、数粒の砂を落とし、穴の底を集中して見つめ、『こまこま』を待ちます。
地面の気配に敏感なので、靴の裏さえ、ピタリと止めます。
アリの気配と勘違いして、巣の一番深い底の砂が少しゆれます。
わずかに、土がゆれた瞬間、指先で一気に土ごとすくい取り、手のひらの上で土をさばいて、『こまこま』を見つけます。
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『こまこま』への不思議その1
巣が大きいのに、思ったより『こまこま』が小さいことが多いのは、なぜ?
弟は、大きな『こまこま』が怖くて、わざと小さい巣をねらいました。
しかし!巣に似合わないBIGサイズが、よく出てきました。この大きさのアンバランスが、私にはとても不思議。このナゾは未解決です。
『こまこま』への不思議その2
土のすくい取り方が少ないと、『こまこま』は取れません。すぐそこに、うっすら角が見えかけていたのに。どれくらい、たくさんの土をすくい取らないといけないのか?どれくらい早く、後ろ向きに土の中へ逃げ込めるんだろう?これも未解決のナゾです。
何度か試してみましたが、ほんの少し、土の取り方を減らすだけで、もう逃げられている。
何度も繰り返すのですが、勢い良く指先を砂の中に突っ込むため、爪の中は時々血が滲みました(どんだけ実験w)。
余談①『こまこま』はグニョッとしています。体がとても柔らかく、それは、ゆで過ぎたお餅くらい。見た目よりも、ずっと頼りない柔らかさ。そのため、土ごとすくい取らないと……ツブレマス。
余談②そっと手のひらから、つまみあげるとき、『こまこま』は抵抗して、ツノで挟んできます。が、力も弱く、ツノも柔らかい。ちっとも痛くありません。
こうして『こまこま』10匹で、ラムネの袋を半折にし、そっと持ちます。
ポケットから白いビニール袋を出して、そこらへんの砂を両手ですくい入れ、それも持って帰ります。
ビニール袋を忘れたら、もちろんポケットにそのまま、砂を入れます……。砂を出し忘れることもありました。でも一度も叱られたことがない。今、そのことに気づきました。おばあちゃん、おばちゃん、ダイスキ;;
『こまこま』への不思議その3
持ち帰った『こまこま』に巣を作らせるためには、庭の砂ではNGでした。
捕まえた場所の砂でないと、巣を作らないまま死んでしまいます。これがわかるまで、何回も、そして何匹もの『こまこま』が……南無。見た目は同じくらいのさらさら土にしか、見えないのになんで??不思議でした。これが3つ目の未解決です。
シークトカンサツにも載っていませんでした(何度も読んで答えを探した)。
家に戻ると、空の菓子箱に、取ってきた砂を敷き詰め、ラムネの袋から『こまこま』を放ちます。
これで明日には、巣が完成です。
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『こまこま』の菓子箱マンションは、玄関の土間に、いつも5つくらい並べてました。ふたをあけると、大小さまざまな巣をきちんと作っています。大満足でした。
雨が降って外で遊べない日には、私はその箱の砂を掘って、巣の大きさと『こまこま』の大きさが、やっぱり不釣り合いであることを確かめました。
いまだに謎です……。ファーブル昆虫記にも書いていませんでした。3つの謎、ご存じの方がいらしたらぜひ教えてください。
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夏は夕方から蚊帳(かや)を吊り、その中で遊んでから寝ます。
祖母があおぐ団扇の風で、私たちは毎晩ぐっすりと眠りました。
補足:え~すみません、上の写真は、蚊帳をご存じない方のため、イメージだけお伝えしたくて借りもの写真です。実際はもっと簡素で、蚊帳の高さも低く、7才の私が立てばギリギリ頭つかない程度でした。そして、生地もガッシリしたネットで出来ており、写真のように中身がスケスケの、上品なものではありませんでした。^^ 蚊が入らないように、パッパと網をさばいて、素早く入らねば、一晩中、蚊に吸われます。蚊も出れませんので。
※以下へ続く
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