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好きだと思う瞬間はいつも

朝起きて、こころにポッカリと穴が空いてることに気づいた。

いつもより乱雑になった布団を見て、
うっすらと残っていた悪夢がちらっと顔を見せる。

またこれか...

その穴はどんどん大きくなって、夢の中にまで侵食していたようだ。

数日前から心にあったしあわせな痛みは、唐突に大きな傷跡に変わった。

***

好きだと思う瞬間は、いつも唐突に訪れる。

喉に少しの痛みを感じて「風邪かな?」と気付く風邪のひき始めのように。胸の鼓動が、その合図を知らせる。

何気ない会話の中で予告もなく鳴り響く小さな音。
風が吹いて、葉っぱが落ちるくらい自然に。

「話が合うな」とか、「顔がタイプだ」とか好きになるきっかけは色々あるだろうけど、僕にとって恋は、そういう理屈めいたものとは縁遠い代物。

鳴り響いた音に気づいてしまったが最後、その気持ちは雪玉が転がるようにどんどん大きくなっていく。とてもコントロールなんてできなくて。

とんでもなくバカみたいな時間でも一緒に過ごしたいと思うほど、世界があなた中心で回り始める。

***

そんな夢のような時間は、木の実がボトッと落ちるかのように突然終幕を迎える。頭の中で壮大に鳴り響いていたBGMはピタッと止まって、何度再生ボタンを押しても続きを奏でてはくれない。

恋は盲目というけれど、あと何度盲目になれば良いんだろうか。
気持ちに振り回される自分にいいかげんウンザリする。

でもきっと

熟した実は次の命の種となり、また芽を出す。だから、新しい芽が育つのを、のんびりと待っていようと思う。

そうすることで、この苦しみとあの時のしあわせに意味があったんだと、思えるような気がするから。

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