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アラサー宮舘担、初めて歌舞伎を観劇する〜SANEMORIの世界に浸かった1ヶ月間〜

SANEMORIの公演決定時の話

「マジかよ…!?Snow Manのツアー明けじゃん!?正気!?」

私が第一報を受けたのは2022年の晩夏か初秋頃だったと思う。
自慢の推し・宮舘涼太くんが、あの市川團十郎さんと共に
新橋演舞場にて歌舞伎の舞台に立つことが決定した。
さらに、タイトルを聞いて驚愕。

「SANEMORI…?あの3年前にABKAIでやったSANEMORI!?」

そう、SANEMORIは3年前にも公演されていた。
SANEMORIは当時、まだジャニーズJrだったSnow Manの阿部亮平くんと宮舘涼太くんが、
これもまた当時、まだ市川團十郎さんが市川海老蔵さんのお名前を名乗っていらしたときに
お呼ばれして頂けた源氏と平家の物語を描いた歌舞伎の舞台だ。
そう、歌舞伎の舞台です。滝沢歌舞伎とはまた毛色が違います。
さらに私は当時、初演時のチケットを当選していたので持っていて、
本来であれば行けていたはずでした。
しかし、交通事故に遭ってしまった。いろんな方にご迷惑をおかけしてしまった。
なので、入院の関係で残念ながらABKAIのSANEMORIは行けませんでした。
だから正直、あまり良い思い出が無い。
それでも…

「自信ないけど…でも頑張ってまた行こう。行きたい!今度こそ観たい!」

ドキドキしながらチケ発。しかし、この時Snow Manはツアー中だ。
私は各地を飛び回っていた。なのでバタバタだった。あの時は年末にかけてだったので仕事も相まって目が回った。
ちなみに記者会見もしっかりWSで観たのですが、
まさか義賢最期まで宮舘くんがやることになるとは思わなかった…。
義賢最期は演目名なのですが、これがまた凄いんです!また後で説明します。
とにかく「体力お化けじゃないとしんどそうだけど大丈夫かな?」と思いつつ、
当落を待った結果、見事お席が用意されました。
それどころか、週末は歌舞伎の世界にどっぷり浸かる1ヶ月間のスケジュールが完成!

いろんな意味で驚いたが、とにかく好奇心旺盛な私。
アラサーだからこそ自分の世界をさらに広げるため、目一杯歌舞伎の世界を堪能しようと思い、
ツアー中でバタバタにも関わらず、合間に歴史や歌舞伎の勉強も始めました。
ちなみに仕事をしながら、Snow Manのツアーに行きながら、KinKiの冬コンやカウコンにも行きながらの勉強でした。
なので、新幹線や夜行バスの中でも勉強していました。そりゃ睡眠不足にもなる。

でも推しが、日本の誇る歌舞伎という舞台に、もう一度立たさせてもらえるのですよ?
「ジャニオタが〜どうせ推しの顔だけ見られればいいんだろ?」なんて思われたくないので、
お行儀よく観劇したいし、歴史も歌舞伎舞台のことも荒削りながらもちゃんと勉強して、
そのうえできちんと中身を理解したほうが、推しの出演する舞台に対する理解も深まってより楽しめると思うんです。
そして…日本人として歌舞伎という伝統文化を世界に誇ることができる。
というか、ジャニオタが歌舞伎を少しでも理解できているって考えると、なんかかっこよくないですか?
私だけでしょうか?それでもいい。

SANEMORIの話が分かりやすかった理由

そんなこんなで、私は前途のとおり初日から千秋楽までSANEMORIを通じて
歌舞伎の世界を毎週末堪能し、推しの勇姿を1ヶ月間見届け続けました。
新橋演舞場にてあらゆる角度でSANEMORIを観劇した第一の感想としては、
とにかく、思っていたよりお話が分かりやすかった!

というのも、SANEMORIという作品の元ネタは源平布引滝です。
これは今から約260年前に初演を迎えた作品だそうです。(筋書参照)
古典歌舞伎の世界では、特に人気の演目を抜粋して上演されるケースが多いらしく、
源平布引滝の中でも、特に人気の演目だったのが「義賢最期」と「実盛物語」だそうです。
SANEMORIは、私のような歌舞伎初心者の方でも楽しめるようにするため、
話の前後関係がより分かりやすく再構成された作品なんだそうです。
まず、人気の演目しかやらないケースがあるっていう情報を聞いて、
「ほ〜!そうなんだ!」ってなりました。
滝沢歌舞伎も、二部の鼠小僧で人気のシーン(?)しかやらない時代ありましたよね?あれとは違う?失敬。

あと、新橋演舞場で800円で借りられる「イヤホンガイド」もめっちゃ重宝しました!
イヤホンガイドとは、舞台の解説や歌舞伎舞台の用語や見せ場を教えてくれるスグレもの。
見た目は小さなラジオみたいな機械です。
私は初日と千秋楽のときに借りたのですが、これが意外と便利でした。
勉強してきたとはいえ、歌舞伎をきちんと楽しめるレベルまで理解できているのか、
自信がなくて不安でしたし、最初だからということで

「ものは試し!(CV.斎藤実盛)」と、借りてみることに。

とはいえ、公演中に邪魔にならないか、それも凄く心配ではありました…。
ただ、いざ蓋を開けてみたら、勉強になる歴史のことや、
この場面でこれどういう意味なのか知りたい!ということをリアルタイムで
たくさん喋ってくださいました。無駄がない。
まさに痒いところに手が届く状態でした。
もうおかげさまでSANEMORIに対する解像度は上がりまくり!
次の公演からは、借りなくても大丈夫になりました。
千秋楽でもう一度借りたのは、過去一見えにくいお席だったのもありますが、
このnoteを書くための確認用で借りたのもあります。
本当に凄かったな。解説のお声は少なくとも宮舘くんのセリフには一切被っていなかった。
こういう配慮ありがたかったです。オタクとしては推しのセリフや声は聞いていたいのです!
そして、開場から開演までの時間や幕間は30分あったのですが、
その間に同じ説明は2回くらい繰り返してくれました。
だから聞き逃した〜!と思っても大丈夫です。
SANEMORIの場合は、1つの流れの話を15分×2回の間隔でお話してくれました。
イヤホンガイドめっちゃ便利なので、皆さんにもぜひオススメしたいです。
あ!松竹の回し者じゃないヨ!

ここからは、いい加減お話に関する感想を書いていこうと思います。
所詮、ジャニオタの中のイチ宮舘担でありつつ、歌舞伎初心者の戯言に近い感想なので、
ズレていたり、宮舘くんに寄りすぎたりするかもしれません。
そこは悪しからず。ご了承のほどお願いいたします。

プロローグ「倶利伽羅峠の戦い」の感想

凄くないですか?推しがいきなり木曽義仲(源氏の源義仲)役で出てきて、
そこから戦いがバーっと繰り広げられるんです。もう眼福でした。
ずっと推しがカッコいい!とにかくカッコいい!
殺陣・荒事のオンパレードで、花道も目一杯使っていました。
とにかく義仲様、勇敢。
手塚太郎光盛(ABKAIのときに阿部ちゃんがやっていた役)に、
「義仲様!我ら兵士をお連れにならず、真っ先駆けて戦われるとは!」とまで言われる始末。
ちなみに木曽義仲の木曽は、今でいう長野県の地名が由来だそうですが、
幼少期は駒王丸と呼ばれていました。
この駒王丸という幼名は、木曽義仲の父・木曽先生義賢(今回の宮舘くんの二役目)の幼少期の頃の名前と同じなんだそうです。
名前が親子代々繋がっていったり、成人するにつれて変わっていったりするのは面白いですよね。

序幕「義賢最期」の感想

時は遡り、20年前にタイムスリップ。木曽義仲が生まれたときの出来事です。
最初、花道に女形の腰元さんたちがバーっと出てきます。
どうやら、木曽先生義賢の妻である、葵御前が義仲をご懐妊なさったということで、
石山寺まで安産祈願の参詣に出掛けていたというシーンだったようです。
その際「ダテ様のような良い男!」や「すのーまん!」など、
まるでスノ担が来るのをわかっていたかのような、クスッとくるセリフを
織り交ぜてくださっていました。ありがとうございます!
ちなみに、Snow Manデビュー日のときも観劇していたのですが、
そのときはちょっとセリフを変えて「デビュー記念!すのーまん!」と、
つけ加えて祝ってくださいました。これもありがとうございます!
会場大拍手でした!

そこから宮舘くんの二役目である義賢様が現れるのですが、
派手派手しいガウンと病鉢巻姿が印象的でした。
ちなみに歌舞伎舞台の世界では、病におかされている人は頭に紫の鉢巻を
巻くことになっているそうです。
義賢様、義仲様と比べてお声が渋くてダンディでした。やっぱりカッコいい。

そして間も無く義賢の館まで攻め入ってくる平家の軍勢。
九郎助、小まん、太郎吉親子は、義賢の頼みで葵御前を連れて
逃げて落ちのびて欲しいと懇願される。
義賢は、館に一人残って平家の軍勢を相手して討ち死にするつもりでした。
しかし、最愛の夫とお別れしなければいけないということで、嘆き悲しむ葵御前。
それでも源氏に代々伝わる大切な白旗の巻物を葵に手渡す義賢様。

「無事に良い子を産んでくれよ」

これある共演者の方が、後にインスタライブで仰っていた話なんですけど、
ある日のお稽古のときに、葵御前役の大谷廣松さんの代理でその方が葵御前役をやったそうです。
そうしたら義賢役の宮舘くん、お稽古でも手を抜かないということで、
ちゃんとその方の目を見て上記のセリフを放ったそうです。
危うくその方、想像妊娠しそうになったらしいです。
感想があまりにオタク側過ぎて面白かったです…声出して笑っちゃいました…。

でも個人的には、義賢様がその次に葵に放ったセリフが好きなんです。
あの義賢様の優しくも力強い口調と、眼差しが胸を撃ちます。

「葵、さらば」

とても短いセリフ。
でも、葵って呼んだときの義賢様、本当に優しかった。
多分、1週間もしないうちに私の涙腺はぶっ壊れました。
歌舞伎で泣く人そうそういらっしゃらないと思うのですが、いかがでしょうか?
こういう涙もろい性格をしていると、ちょっと恥ずかしいですね。
でも、最愛の人との別れを惜しんでいるのは、
葵御前だけじゃなかったんだなというのが垣間見ることができて、
個人的にはとても好きなシーンの一つです。
義賢様としては、葵のお腹の子の義仲に源氏の未来を託しているというのが
キーであり、メインだとは思います。
とはいえ、この作品上の義賢は葵のこともちゃんと愛していたんじゃないのかな?
と、思わずにはいられませんでした。あくまで個人的な見解です。
想いを断ち切るかのように一度も振り返ることもなく、葵のいる場から少しずつ離れゆく義賢様の、あの漢らしい背中が強く印象に残っています。

「攻め入ったる平家の軍勢〜」を皮切りに義賢最期も佳境に入ります。
このシーンでは、義賢が薙刀や鳴り鍔の刀を用いて
延々と平家と死闘を繰り返していくシーンが続くのですが、これがもう圧巻。
特に薙刀は、イヤホンガイドさんによると扱いが凄く難しい武器らしく、
たしかに何回か宮舘くんは、薙刀を天井にぶつけていました。
それでも頑張って薙刀をぶん回す宮舘くん、痺れます…。
ちなみに、千秋楽近いときには、もうあまりぶつけることはなくなっていました。
ほかにも、はしごや戸板倒しなど、滝沢歌舞伎でもよく見かける演出が何個か出てきます。
はしごを使った演出は江戸時代から続いているそうで、見ていて迫力があります。
あ!あと逆手から順手に空中で持ち変えて敵を切り捨てるシーンがあるのですが、
そこもお見事で、とても見応えがあって素敵でした。
そして戸板倒し。風の噂では、近年の歌舞伎ではもうあんまりやっていないという
話を聞いたのですが、本当なのでしょうか?
だとしたら「とてもレアなものを見た!」と、感動しました!
滝沢歌舞伎でも取り入れているときがありましたが、
今考えると大怪我のリスクがある演出を、1人で32公演もやり遂げた宮舘くんには盛大な拍手を送りたいです。というかスタンディングオベーションです。

ここで義賢最期を観ていて思ったのですが、
宮舘くんの見得の切り方が、明らか荒々しくなった気がします。
滝沢歌舞伎のときは「綺麗に見せよう!」という意識が強かったのか
少し軽く見えていたのですが、
今回のSANEMORIの宮舘くんは、表情の作り方や所作、唸り声などまるで別人のようでした。
さらに、もっと凄かったのは断末魔の声の上げ方。
「本当にこのまま召されるんじゃ…!?」と、思うくらいのリアルさでした。
推しの壮絶な死に際を擬似的に見ることができるこの歌舞伎の舞台…最高だと思います。
普段、宮舘くんはロイヤルにおすましをされているか、ロイヤルプリティな場合が多いです。
そもそもライブでもここまで息を荒げたり、唸ったりももちろんしないので、
目が逝っちゃっているところを見れた日にはゾクゾクしました。
完全に義賢様が御降臨なさられて、一体になっているなと感じました。
壮絶な義賢の最期を、32公演すべて体を張って演じられていたと思うので、
無事に完走できて本当に良かったです。大きな怪我もなくて良かった!

序幕「矢橋の浦・湖水御座船」の感想

※ここから宮舘くんはしばらく出てきません。宮舘くんの感想だけかいつまみたい方は、
大詰「篠原の戦い」まで飛ばしてください。木曽義仲としてもう一度出てきます。

ここで一旦場面を切り替えるために幕が引かれ、花道には風変わりな平家の侍と家来たちが並びます。
聞くところによると、落ちている最中の葵御前一行を襲って
源氏の大切な白旗を奪ったというのですが、人自体は取り逃してしまったそうです。
それを家来のせいにする風変わりな侍、お旦那。

旦那「手柄は主人!しくじりは家来!」
家来「そりゃあんまりじゃ〜!!」

家来一同「「「パワハラじゃ〜!!!!!」」」

まさかの現代言葉!!かなりわかりやすかったので、会場爆笑!!
これは余談ですが、ある日見学に来ていたSnow Manの佐久間大介くんも
大爆笑していたらしいですね。あのシーンです。

そこから今度は矢橋の浦に場面は切り替わります。
ここで登場するのが、中村児太郎さん演じる九郎助の娘・小まん。
白旗を取り返しにきたというのだ。女性なのに勇敢!!
そしてバッタバッタと武器も何も持たず敵を倒す様はそう、怪力娘。
滝沢歌舞伎でいうところのお丸さんが当てはまると思うのですが、
お丸さんも怪力娘ということになるな〜なんて考えていたら、もう白旗取り返していました。早い。
ちなみに、小まん姐さんが裏拳した後にクスッと笑う仕草、かなり大好きです。
その後、追い詰められた小まんは琵琶湖に飛び込み、逃げていきます。
しかし、途中溺れてしまうのです。

場面はまたまた切り替わり、ここで巨大な御座船が出てくるのですが、
これがまぁ…デカい!!デカすぎる!!
演舞場のステージの横幅ギリギリを攻めているというか、
床が回る舞台装置の限界ギリギリの大きさがあれくらいなのですかね?
もちろん、御座船から最初に出てくる人物こそ、今回の主人公・斎藤実盛。
演じているのは市川團十郎さんです。
この実盛、元は源氏の身でありながらやむを得ない事情で今は平家に仕えていました。
しかし、心は平家ではなく、源氏にあり!という役柄です。

まさかの序幕の終盤でやっと主演が出てきました。
てか團十郎さん、見得の切り方がハンサム!そしてお顔立ちもハンサム!
こんなにカッコいいのか…と、思わず息をのんでしまいました。
テレビやネットニュースでは何度か拝見したことありましたが、
生で拝見するのは今回が初めてでした。カッコいい歌舞伎役者さんだなと思いました。
「名も改まって演舞場〜」と、襲名のご挨拶を交えたセリフから始まります。
ちなみに、千秋楽の夜公演では「本日、千秋楽〜!」というセリフが追加されていました。
もちろん、会場大拍手。

話が逸れました。琵琶湖を進む御座船の行き先は現在もパワースポットとなっている竹生島。
ここには神社があるそうなのですが、平家も繁栄を願う目的でそこに参詣する道中だったようです。
ここで出てくる赤地錦の綺麗な直垂。(ひたたれと読む。名高き大将でない限りは着られないという甲冑の下に着るお着物のようです)
平の一族からこれをありがたく頂戴する実盛。
すると、前方に溺れている女性が発見される。
引き上げてみると、それは平家から逃げている最中に溺れてしまった小まんでした。
その際、実盛はその女性が小まんという名前であることを知ります。
しかし、皮肉にも敵である平家の船に助けられた小まんは、
ついに源氏方で白旗を隠し持っているということを、
御座船の連中に知られてしまいます。
当然奪いにくる平家の武士たち。
その際、実盛はとっさの判断で白旗を握って離さない小まんの片腕を
なんと切り落とし、海に投げ捨ててしまいます。源氏を守るためでした。
これで平家に白旗は渡らなくなりました。
それでも白旗を追いかけるために、もう一度湖に身を投げる小まん。
しかし、ここで小まんは力つきてしんでしまいます。
悲しい…小まん姐さん大好きな私も一緒に悲しみに暮れます。

そして、團十郎さんの刀さばき、とにかくカッコいい。
実はこの実盛、SANEMORIの作中で刀を抜いているのは
このシーンだけなんですよね。殺陣のシーンはありません。
私は團十郎さんの殺陣も一度観てみたいなと思いました。
歌舞伎座とかでやってくれませんかね?
機会があれば観に行ってみようと思います。

二幕「実盛物語」の感想

幕間が明けると、九郎助の家に場面が切り替わります。
葵御前とお腹の子・義仲はこの家にかくまわれているのです。
すると、花道から登場したのは九郎助と太郎吉。
この太郎吉は、プロローグで登場した義仲の家来・手塚太郎光盛の幼少期です。
漁に出ていたようですが、何やら奇妙なものが網にかかったというのです。
ここで登場するのは梅花さん演じる婆の小よし。
3人で網を開けてみると、なんとかかっていたのは白旗を握って離さない女性の片腕ではありませんか。
そんな片腕、九郎助によると、こじ開けようとしても白旗を離さなかったそうです。
しかし、なぜか太郎吉が指を一本ずつ剥がしていくと、すんなり指が開きました。

選ばれし勇者の剣じゃん…エクスカリバーかよ。

すみません、後々冷静になって考えてみたらそれが脳裏をよぎりました。

と、ここでまたまた登場人物が増える。平家の名高き侍・瀬尾十郎と斎藤実盛でした。
平清盛から義賢の子供が男なら葬り、女なら生かしておけと命ぜられてやってきたというのです。
密告者は金に目が眩んだ、九郎助の親戚でした。ひどいよね〜!
瀬尾は赤っ面と呼ばれる悪役です。葵御前の腹の中を裂いてでも性別を知ろうとする。その上すぐ怒るし恐い。
そのため、すぐさま仲裁に入る実盛。見聞役は実盛だったのです。
しかし、実盛は源氏の味方。もし男だったとしても女と偽って逃すつもりだったのです。
ところが、小よしから差し出された赤ん坊は何か様子がおかしい。
お包みを開いてみると、出てきたのはなんとあの女の片腕でした。
もちろん、葵御前が片腕を産んだというのは嘘。
もしこうなったときは片腕を産んだことにしようと、裏で口合わせをしていたそうです。
とはいえ、何も知らずこれに驚く瀬尾と実盛。でも実盛は続けます。
昔、鉄の球を産んだ女がいたという話もあるので葵御前も片腕を産むこともあろうと…。

私「そんなわけなかろう!無理がある!(心の声)」

しかし、とりあえずはそういうことになって場は一旦収まります。
瀬尾は私と同じことを思っていたようなので、帰ったふりして草むらに身を隠して一度はけます。
隠れて実盛に感謝をする葵御前と九郎助一同でしたが、実盛はあることを切り出します。あの腕を御座船で切り落とした覚えがあると。
ここで九郎助たちはあの片腕が娘であり、母でもある小まんのものであることを知らされます。
老いの一徹!は聞いてて悲しかったです…。
何があっても実盛「様」って言わなければならない複雑さも垣間見れて、
胸が締め付けられました。
と、花道から登場したのは地元の漁師さんたち。運ばれてくるのはなんと小まんの亡骸でした。
ここでも実は私、泣いてしまいます。
花をたむけてやれと小よしに言われる太郎吉。
しかし、母が亡くなったことを受け止めきれない幼き頃の太郎吉は、
「母が物言わぬうちは聞かぬ!聞かぬ!」と泣き出します。
これめちゃくちゃ悲しかった。受け止めきれないよね…。

そこからは話が長くなるのでちょっと割愛するのですが、
蘇りがあったり、小まんは実は九郎助夫婦の実子ではなく、拾われ子ということ。
さらに一緒に置いてあったかなざしには光盛と書かれていたこと。
小まんは平家の侍の子であることが、九郎助から語られます。
葵御前は突然産気づいて別室に移るのですが、
覗きたがりの太郎吉と、それを阻止する実盛の攻防戦が面白かったです。
そして誕生する義仲。喜ぶ一同。
実盛は義賢の幼名を取って駒王丸と名づけ、成人するまで木曽で暮らすこと、
そして義仲の家来になるため、太郎吉もこの日を持って手塚太郎光盛と名づけられました。
ちなみに、葵御前は小まんが平家の血筋であることから、平家の落とし子かも知れぬということで、
太郎吉が成人するまでに一つの功をたてるまでは家来にしないで欲しいと言います。

と、ここで一連の流れを全部見て聞いていた瀬尾が草むらから飛び出てくると、
小まんの亡骸を足蹴りします。
それを見て怒った太郎は、かなざしを手に瀬尾の脇腹目掛けて切り掛かりますが、
瀬尾はなぜか自らの腹にそのかなざしを誘導させて突き立てるのです。
実は、ここで明かされるのは小まんは自分の娘であって、かなざしと一緒に捨てたのも自分であるという事実でした。
そして瀬尾自身も思うところがあったのか、小まんが平家の血筋であることを嫌われては小まん自身も浮かばれぬと、
孫である太郎吉に平家の武士として名高い自分の首を討たせることで、
孫の太郎を義仲の家来にしてもらおうと図るのです。
歌舞伎の世界では、悪人だった人が実は善人だったという表現をもどりというらしいです。
この後自分の刀を太郎に持たせて自らの首を斬り落とすシーンがあるのですが、
ここでも私は泣きます。泣きすぎです。でも一番の号泣ポイントです。
瀬尾が自分の首を斬る前に、太郎の頭を抱き寄せて愛おしそうに撫でるシーンがあります。
それがもう、孫とお爺ちゃんそのものなんですよね。
とても愛を感じるお別れのシーンでした。

瀬尾の首を出産直後の葵御前に献上し、無事に義仲の家来となった太郎。
この後、花道から馬が出てくるのですがこの馬のシーン、
初日は上から見ていたのですが、これが本物の馬にしか見えなくて驚きました!
足元を見てやっと人が二人入って演じているとわかるのですが、
それにしてもリアルだったな…。
ほかにも、母の敵討ちで実盛に勝負を仕掛けてくるも、
鼻垂れ小僧になっていた太郎の鼻をちり紙で拭き取るシーンが微笑ましかったです。

こうして太郎の母・小まんの敵討ちは、義仲と太郎が成人して大きくなって
挙兵したときに戦場で会ってからと約束をする実盛と太郎。
しかし、20年も経てば実盛も老いて容姿が変わるのでは?と疑問を抱く九郎助。
それに対して実盛は「その時は髪も髭も墨で黒く染めて、時を戻した状態で会おう」と言ってその場を去ります。

実盛物語、一切自担出てこないけどめっちゃ面白かったです。
The・歌舞伎の世界だなというのが感想です。
義賢最期もそうですが、抜粋されたバージョンもちょっと観てみたいなと思いました。
余談ですが、実盛の馬が花道に出た瞬間何やっても全然動かなくなったくだり、
何度見ても面白くてずっと笑っていられました。

大詰「篠原の戦い」の感想

ここで時はプロローグの時間に戻って、篠原の戦いに移ります。
義仲はつかいの者を実盛側に送り、実盛にある交渉をはかったのです。
要約すると、実盛を源氏側に迎え入れたいということでした。
しかし、実盛の返答はNO。
平家として戦うという意思表示以外、返答はありませんでした。
しかし、義仲は自分の命の恩人であり、太郎も母をころされたとはいえもう恨んではいませんでした。
そのため、義仲は「老いたる武者と見るならば、刃を向けずに必ず退け」と、
兵士たちに命じます。実盛の命だけはとりたくなかったのです。
しかしこのとき、白髪と白髭で年老いた姿の実盛が墨をする場面が織り交ぜられるのですが、実盛のセリフの中でも特に印象的だったのが、

「運命を決めるのは天ではない。この実盛自身じゃ」

実盛はその後、戦場で太郎と再会した際に、あの赤地錦の直垂を身にまとい、
あえて名乗らず身分を隠し、墨で髪と髭を黒く染めた20年前の姿で
1人も兵を引き連れずに太郎と勝負し、太郎に討たれて首を斬られてしまいます。
実盛は、太郎に首を取られて気持ちよく討ち死にしようと心に決めていたようです。
20年も長い時間があれば、皆さんはどうしますか?
ここまで年月があれば十分逃げることも隠れることもできたでしょうし、
太郎も義仲も幼いうちに葬り去ることもできたはずです。
しかし、元は源氏に仕えていた身であり心は変わらず源氏側。
実盛は源氏の未来を明るいものにするため、自らで運命を選択し、生涯を終えたのです。

途中の演出で義仲様と巴御前の客席降りがありました。
私自身もありがたいことにお席のご縁に恵まれて、
真横を義仲様と巴御前が殺陣をしながら練り歩かれるという経験もさせて頂きました。ありがたやありがたや…。

そして次のシーンから最後までの義仲様の表情がとても豊かだったことは、
今でも忘れられないです。
例えば、源氏が勝利をおさめ、首実験で太郎が討ち取ったこの侍の首は
一体誰なのかを義仲が見定めると、なぜか懐かしく感じるという場面や、
実盛の亡霊と会話をするシーンで無念そうにする義仲の表情などです。

なぜこんなに宮舘くんを見てきて、表情が豊かに感じられたのか?

もしかすると、テレビやライブでお見かけする宮舘くんは
ポーカーフェイス、あるいはロイヤルなすまし顔なことが
多い印象があったからかもしれません。
また、今思えば表情で演技をしている宮舘くんを見る機会が
個人的にはそこまでなかったのかもしれないです。

ある意味、新鮮だったのかもしれません。

というのも、滝沢歌舞伎の鼠小僧では少々気性の荒い徳俵の旦那の
役柄をずっと続投し続けていたので、わかりやすい怒り顔に慣れ親しんでいました。
だからこそ、義仲様の繊細な表情の作り方が新鮮に感じられたのではないか?と、思います。これも個人的な見解です。

話がとっ散らかったので戻します。
要約すると、実盛に似ている!もしかすると実盛かもしれない…でも若く見える!
では、池の水で首を洗おう!
すると、墨が落ちて真っ白な髭と髪を生やした老人の首が現れます。
これでこの首の主は実盛だったのか!と全員が悟るのでした。
義仲は、生捕られた平維盛の首…ではなく、縄を切ります。
実盛が望んだ平和な世界を築くため、この戦を終わりにするため、
「平家は都を空け渡して西国(イヤホンガイドさん曰く、現在の兵庫県のあたりのようです)へ参られよ」と平維盛に命じます。
史実でも、後に都に源氏が入ったとあるそうですね。

クライマックスで白旗を大きく振って、実盛を弔う義仲様はとてもカッコよかったです!
煌びやかな小殿堂から、都に向かう義仲の後ろ姿を見つめる実盛の姿もグッときました。

ちなみに、千秋楽公演ではカーテンコールが6回ありました。
個人的には、撤収のお時間が迫っている中にも関わらず、
カーテンコールを通常の2倍も行なってくださったという事実だけで、
ボロ泣きしてしまいました。お隣の方驚かせてしまってすみませんでした…。

以上がSANEMORIを1ヶ月間観て感じた、私個人の感想になります。
SANEMORI千秋楽まで皆さまお疲れ様でした!
そして、感動をありがとうございました!
ちなみにこの記事、1万字を超えています。
こんな拙い私の感想を読んでくださった皆さまにも感謝です。
本当にありがとうございます。

SANEMORIを見届け終えた今

正直、歌舞伎についても歴史に関しても、まだまだ理解できていない部分は多いと思っています。
現に調べ直しも行なったので、この記事を書くのに丸2日もかかりましたし、
それでも自信がない場合はその部分は書かないようにしました。
これだけボリューミーな記事だと、イチ宮舘担の歌舞伎初心者の感想とはいえ、
全部自分の思い通りに読み手に伝わるとは限らないと思っています。
不安になって何度も書くのをやめようとしました。
それでも、初めて飛び込めた歌舞伎舞台の世界で目の当たりにした自分のこの感覚を、演者様方から受け取った想いを、いつか忘れてしまわないように書き残したかったのです。
また、己の生き様を魅せ続けた推しの宮舘くんや、襲名してもなお、新しいことにチャレンジし続けた團十郎さん、演者や裏方の皆さんが、
どれだけの熱意を持った凄い方たちだったのかを、自分なりの言葉で書き記しておきたかったのもあります。

今回、SANEMORIを3年越しに観ることができて本当に良かったと思っています。
正直、私は現代人なので忠義とかそういうのは、全部は理解できていない部分もあるかもしれません。
しかしその中でも、人と人との愛情は、いつの世も健在だったんだなということを感じられ、とても素敵な作品に巡り会えたと本気で思えました。

市川團十郎さん、宮舘くんをもう一度歌舞伎の世界にお招き頂きありがとうございました。
宮舘くん、人の記憶は曖昧なものです。
その勇姿を絶対に忘れたくなくても、もしかしたらいつかは記憶が薄らいでいってしまうかもしれません。
しかし、宮舘くんの挑戦やそこにいた事実はもちろんのこと、
いかに宮舘くんが歌舞伎の世界でときにかっこよく、ときに漢らしく泥臭く、ときに真っ直ぐに生きていたのかは、ずっとこの先も事実として残っていくと思っています。
私はアイドル・Snow Manとして生きてくれている宮舘くんも大好きですが、
歌舞伎の世界で命を削る勢いで演じるその姿も、美しくて、愛おしくて大好きだと新しく発見することができました。
こちらこそたくさんの学びと発見、感動をありがとうございました。

またこのような機会があれば、ぜひ足を運びたいと思います。
そのためには、徳を積んで頑張ります!

今後も歌舞伎の舞台に、宮舘くんが立たせて頂けますように。

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