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じゅらくビルをゆく(東京)

PCを整理していたら、ものすごく昔に撮った写真がでてきた。すでに現存しない建築物もある。なんだか懐かしかったので、さらしていきます。


うだるような暑さのなか、上野で電車を降りた。今見ると、ものすごく違和感を感じる。しばらくして、ホームドアがないことに気づいた。すでに当たり前になっているけど、結構最近の話なんだよね。


中央口を出て、まずはアメ横方面に向かいます。


このレコード屋さんは現在もある。間違いなくここでしか入手できない作品がありそう。ザ・専門店ってやつです。駅前なのでかなりにぎやかな雰囲気。


でも、アメ横に入ると、ちょっと脇道にそれただけでいきなりディープになるんだよね。


居合刀の看板とか


石鹸やローソクのお店もある


上野パレス。キャバクラかな? 看板の記載内容がいいね。ここはもう現存していません。


この時のおれは何かが降りてきていたのか、幻想ショットに恵まれていたみたい。シャッターチャンスを逃しませんよ。


でも、正直なところ日本な感じがしないね。九龍城塞があったころの香港とか、そういうアジア裏通りみたいな空気をビシビシ感じる。


扉を開けると通行できなくなる路地。古いタイプのガス湯沸かし器とかも結構あるんだけど、下町はホント火事には気を付けないとダメなんだよな。


この時点ですでに撤去中の家屋もあり、二階の壁がむき出しになっていたり


具体的に退去指示が出ていたりしたみたい


表通りに出てきました。喧騒と活気に目を奪われがちですが、建物は戦後闇市の空気をいまに残しています。とくに2階部分は事務所や倉庫になっていて、外壁とか塗り直しがされている部分もありますが、現在でもこんな感じで残っています。


関係者以外立ち入り禁止、とは書いていないので、失礼しますー。


表のにぎやかさから隔絶された、静まり返った空間。工場で無機質な工作機械にかこまれているような錯覚に陥る。でも、夏だから暑い……


ジージーとセミが鳴いている。時空のおっさん的な今日イチのベストショット! それにしても室外ファンはたくさんあるけど、空調がきいていない(当たり前)のでたまらん。逃げるように表へ……


上野公園側からじゅらくビルを眺めてみる。そうそう、グリーンの網がかかっていたんだよね。老朽化が進んで外壁の崩落防止だったとか。でも、この時は取り壊す予定だなんて知らなくて、あらかた補修工事だろうくらいに軽く考えていたのを覚えています。


この時すでにじゅらくビルは上層階に入れなかったと思う。1Fから2Fにかけて大きく回り込むように幅の広い螺旋階段が敷設されていた。この写真はその階段の途中から見下ろすように撮ったもの。天井から下がるシャンデリアの意匠がとにかく凝っている。


地下に降りていくと、京成上野駅へつながる地下道があります。いまでも、京成上野駅から丸井方面へ流れる回廊があり、その区画は昔の構造なので天井も低く、壁に埋め込まれた旧式の空調とか、この写真と近しい雰囲気が感じられる。少し行くとまたあか抜けたエリアになるんだけどね。こういう過去と現在がちぐはぐにモザイク模様になっている空間が面白いです。


ここも結局いったことなかったなぁ。


そして、となりの扉


おいおい、何があった……


そして駅へと続く地下道。


調べたら、じゅらくビルは2006年に解体されたらしい。たぶん写真は最晩年の姿だと思うけど、保存するにしても安全性や費用負担の問題もあるし、貴重な近代建築が姿を消していくのも仕方ないことなのかもね。自分にできることといったらその雄姿を記録しておくことくらいで、それを思えば当時の若い自分はよくやったよ。
そんな、15年前の、暑い夏のできごとでした。

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