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エネルギーデータの恵みを世界中の人々に届ける

インフォメティス社員インタビュー
代表取締役社長 只野太郎

2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す、と政府が宣言し、エネルギー業界にとって強い追い風となりました。エネルギーというと、身近なものでありながらも詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。しかし理解を深めていくと、社会的な影響力が大きく、非常に意義のある業界であるということが分かると思います。

私たちインフォメティス株式会社は、エネルギー分野から次代の社会インフラを創り出し、日本のみならず世界全体に貢献しようと日々奔走しています。今回は、当社の掲げるミッションや事業、そして求める人物像などについて、代表の只野に話してもらいました。


プロフィール インフォメティス株式会社 代表取締役社長 只野 太郎(ただの たろう) 1991年、東京都立大学を卒業後、ソニー株式会社に入社。回路システム設計やシステム商品の事業企画、海外マーケティングなどを経て、新規事業創出部門ホームエネルギーネットワーク事業開発部の事業企画に従事。2011年より事業開発責任者となり、2013年にインフォメティス株式会社を設立。 

ミッションは、「エネルギーデータの恵みを世界中の人々に届ける」こと

―インフォメティスが掲げるミッションと、その内容について教えてください。

当社では、エネルギーデータを脱炭素化に向けて役立てることはもちろんのこと、そのデータから生活に関わる様々な情報を抽出して、エネルギーの領域から社会全体に貢献していくことを目指しています。

まず地球を持続させるためには、CO2の排出が少なく、枯渇の心配がない再生可能エネルギーを増やしていかなければなりません。ここで重要なのが、電力は発電量と消費量が等しくなければならないという基本原則。人々が電力をいつどれだけ使うのかは、いわば「気まぐれ」です。これまでは燃料をくべて火力発電を調整するなどして、一瞬一瞬の需給バランスを調整していました。その後、自然エネルギーが参入してきますが、自然エネルギー自体、発電量の調整が難しいのです。需要側も供給側も気まぐれ状態となった今、どのように需給バランスを取るかが課題となっています。

需給バランスを調整する様々な方法の中で、最もシンプルな考え方が「蓄電」です。しかし、地球全体における電力の増減をすべて蓄電池で補うのは現実的ではありません。そこで、より正確な予測を立てたり、調整可能な消費を把握したりするためにIT技術を活用することで、需給バランスを調整する必要があります。

需要側・供給側の双方から電力量をコントロールできる送電網のことを、グリーンエネルギー=スマートの意も込めて「スマートグリッド」といいます。私たちが実現したい「エネルギーの超効率利用」「再生可能エネルギーの普及」「持続性への貢献」を成し遂げるためにも、スマートグリッドを普及させなければなりません。当社は、当社の持つAI技術やソフトウェアに係る技術などのIT技術を活用することにより、エネルギーの需給バランスを調整し、スマートグリッドの実現に貢献したいと思っています。

さらに、エネルギーデータから生活に関する情報を導いていくことでエネルギーインフラが、例えば自動車のバッテリーとつながったり、健康医療に活用されたりすることで、生活全般に役立つ社会インフラになり得るのではないかと考えています。

このように、テクノロジーでエネルギーデータの価値を導くことで、持続可能な地球づくりと人々の豊かな暮らしの両立を実現することが我々のミッションです。

ーミッションを達成するための技術には、どのようなものがあるのでしょうか?

当社の持つ技術にNILM(ニルム)があります。Non-Intrusive Load Monitoringの頭文字をとってNILMと呼ばれますが、Non-intrusiveとは元は医学用語で「非侵襲」、大きな手術などなしに検査や治療をすることを指します。つまり、大げさな装置を使わずにLoad(負荷:電力の使用状況)をわかるようにすることです。

例えば、家で消費している電力を把握するには通常、各家電に直接計測器をつけて測定しなければなりません。しかし当社のNILMを用いれば、分電盤に小さなセンサーを設置するだけで、流れていく電流の特徴をAIで分析し、今どの家電で何ワット使用している、ということが判断できるようになります。海外でもいろいろな企業がNILMに取り組んでいますが、比較的安価なセンサーと少量のデータから高精度な推定ができることと、電流の波形まで測定することで、将来的に機器の異常検知などにつなげていけるのが当社のNILMの強みです。

エネルギーデータから、見守りや活動ログ、在・不在、異常検知のようなことまで様々な情報を得ることを、遺伝子情報などから様々な情報を得る「バイオインフォマティクス」にちなんで、当社CTOが「エナジーインフォマティクス」と名付けました。NILMもエナジーインフォマティクスのひとつです。まだ一般的な言葉ではありませんが、いつか「エナジーインフォマティクスといえばインフォメティスだよね」と言われる時代がくれば本望ですね。

「次はエネルギーが来る」その言葉がまだ現実味を帯びない中での起業

―インフォメティスについて、設立に至った経緯を教えてください。

私がまだソニーに在籍していた頃、ソニーの技術を使って環境・エネルギーに貢献する事業をつくろうというプロジェクトを率いていました。それが今のインフォメティスの元になっています。環境・エネルギー事業を推進したのは、すでに手掛けている映画や音楽、ゲームの既存事業だけでなく、次に重要になる環境・エネルギーなどの市場にも、ソニーの技術が活かせると考えたことがきっかけです。当時はソニーの持ついくつかの技術領域を組み合わせて事業創造に取り組んでいました。

その後、紆余曲折がありソニーの中での事業継続はしないことになったのですが、この優れた技術を手放すことはあまりにもったいないと思い、NILMの技術でチャレンジできる場を模索していました。その出口の一つが、外部で出資してくれる会社を探すことでした。

―エネルギーへの関心がここまで高まることは当時から分かっていたのでしょうか?

当時から「エネルギーが次に来る」と言われ、再生可能エネルギーの普及をサポートしてくれる追い風は必ずある、と思っていました。全世界的に、エネルギーが注目を浴びる流れがきて、エネルギー業界がこれからどんどん動いていくはずだという予測はしていたんです。

ただ、当時はまだ、そう「言われていた」だけ。補助金を使ってスマートシティ化構想を練ったり、スマートグリッドの実証実験をしていたりしている段階で、事業化されることなどまだ現実味を帯びていない頃でした。2016年に電力の小売自由化が行われましたが、私がインフォメティスを設立する前の2012~2013年頃は、本当にスムーズに導入されるのだろうかという疑念があったくらいです。実際に電力自由化が実現しても、騒がれたほどマーケットは活性化せず、今になって本格的に動き始めました。

例えば、家庭やビルなどの電力消費をまとめて制御することで電力の余剰を生み出し、仮想的に1つの発電所のように機能させる「バーチャルパワープラント(仮想発電所、以下VPP)」が、日本でも2021年から少しずつ始まることになりました。以前からVPPの時代が来るといわれてきたのが、やっと現実になろうとしています。

あらゆる分野での課題解決に期待が高まっている

―いくつかの企業から出資いただいていますが、どういった部分で期待されているのでしょうか?

当社は、株式会社日立製作所(以下、日立製作所)様、ダイキン工業株式会社(以下、ダイキン工業)様、関西電力グループの合同会社K4 Ventures(以下、関西電力)様、株式会社博報堂DYホールディングス(以下、博報堂DY)様から出資いただいています。(2020年12月インタビュー当時)最初に出資いただいた日立製作所様には、様々な事業を拡げていらっしゃる中で、エネルギーを課題としている事業や場所への貢献に期待していただいています。

ダイキン工業様には、弊社の持つエネルギーの分析、制御技術とダイキン工業様の持つ空調技術によってシナジーを生み出すことを期待され、出資いただきました。特にエネルギービジネスにおいて先進的な欧州地域での進展を期待しています。

また、関西電力様とは産業分野での活用を視野に入れています。インフォメティス設立当初から産業分野での利用は多くの引き合いをいただいていたのですが、これまでは家庭用中心にビジネス開拓を進めてきました。我々のビジネスも少しずつ安定してきたこともあり、出資をきっかけに産業分野でもビジネス化を進めていきたいと考えています。

そして博報堂DY様には、エナジーインフォマティクスで絞りだしたデータの活用を検討していただいています。人の活動分析やタイプ分析、人の活動や購買との相関性など、当社のデータをもとに一緒に分析を進めている状況です。

当社に出資いただいているのはこちらの4社ですが、逆に当社が出資をしている会社もあります。当社が40%、東京電力パワーグリッド株式会社が60%を出資している「株式会社エナジーゲートウェイ」という会社です。NILMなどの技術をお客様の課題解決に資するようなサービスに転化して普及させることをミッションとして設立されました。同社はIoTプラットフォームの会社として、エネルギーをもとにしたデータプラットフォームを普及することで、幅広い価値提供を広く届けられることを目指しています。

目指すは、最大限の力を発揮できるプロフェッショナル集団

―ずばり、どのような会社でありたいですか?

当社がバリューとして掲げている「『超えてやりぬく』EXCEED、『誠実を貫く』FAIRNESS、の精神を持ち、『独創的な技術』と『共創的な事業』を生み出し続けるプロフェッショナル集団であること」が、自然と根付く文化を作りたいと思っています。とくに「FAIRNESS」には、当社の考え方が表れているような気がします。
たとえば、利益の最大化が経営使命であっても、それが搾取的であることは良しとしません。逆に取引先に「これだけ貢献していると思うのでこれだけの対価がほしい」ときちんと主張して、お互いの主張を理解し合える関係でもありたいのです。社員に対してもフェアでありたいので、何がフェアな関係なのかを考えて給与や制度などを決めたいと思っています。会社は社員の貢献に正当な対価を払うべきだし、社員も不満ならいつでも辞められる、そんな関係性が本当のフェアではないでしょうか。
自分がプロであるという誇りを持って、責任も背負って、最大限の力を発揮できるプロフェッショナル集団になりたいと思っています。自由でありながらもみんなが自然とベストを尽くせる環境や文化があって、それを誇りに思える会社であることが理想です。「インフォメティスで働いているの?すごい!」と言われるような会社になりたいですね。

―最大限の力を発揮してもらうために、会社として行っていることはありますか?

当社では全員、入社の際に自分史を発表してもらっています。最大の目的は「その人がどんなときに熱くなるのか」を知りたいからです。1番熱くなることを仕事としてしていれば、最大限の力を発揮できると思うんです。だからといってすべての希望を叶えられるわけではありませんが、少なくとも、結果を出すことが命だと思っている人に結果の出ない仕事を延々とさせても力を発揮できないということくらいは分かります。
個人が最大限の力を発揮できるのは、仕事を楽しいと思えたとき。仕事を全く辛いと感じず、ずっと続けていきたいと思える状況を作り出すことが、究極の目標です。そのためにも社員一人ひとりが、何に熱くなって、何が嫌なのかは知っておきたいと思うんです。

―実際にインフォメティスで働いているのはどのような方々なのでしょうか?

きっちりこなす人というよりも、自由な発想でチャレンジする人たちが集まっていると思います。もちろんきちんとこなすことも必要ですが、設立当初から共に頑張ってきたメンバーは、荒波さえも楽しむ気持ちや度胸を持った人たちが多い気がします。当社の雰囲気に合う人たちが自然と集まってきて、当社の文化を大切にしてくれています。ソニー創業者の「自由闊達にして愉快なる」ではありませんが、みんな分け隔てなくコミュニケーションをとっています。

―では、社長は自分自身をどのような人物だと思われますか?

私は、いわゆるカリスマではないと思っています。一方で、決断力のないリーダーでもダメだと思うんです。自分一人の思いだけで進めるのではなく、みんなの意見も尊重する。大企業にいると少しやんちゃだけど、世の中のベンチャー企業の若い社長に比べると落ち着いている。このバランスが、私だと思っています。

―最後に、どのような人に仲間になってほしいですか?

今はチャレンジャーな社員が多いですが、いろんなタイプの人がいて然るべきだと思います。ただ、自分がプロフェッショナルであるという誇りを持ち、自分に厳しく、目標を実現するどころか、超えていけるような強さを持った方に来ていただきたいです。きちんとこなすことももちろんですが、プロフェッショナルとしての自覚と誇りを持って働けることが一番の条件ですね。
――ありがとうございました!


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