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#3 カウントダウン寸前

大会4日前に早坂さんと知り合い、そこから4日間多忙を極めた。
それは、チームのメンバー変更やら駐車場手配やランチケータリングメニューのリクエストなどその他諸々あり、昼間は交渉調整に追われた。
夜は最終稿のマニュアル作りに再び追われることに…

気づけば20:32を回り、
メールボックスを確認すると「1」の新着メール。
早坂さんからだ。心配が上回りメールを速攻読む。
見終わると『ふー、大したことない』と安心し、ものの3分で返事をした。
不安はなるべく早くに取り除いてあげたいから。
ただでさえビギナーなのだから、丁寧にやってあげたかった。
言い訳にしか聞こえない?かな?(笑)

もちろん他のチームに対しても迅速に…は、やっているのは言うまでもないが(笑)早坂さんほど慌てはしない。

特にラグビーすら知らない人に対しては丁寧に連絡をしていた。
今回の7人制の大会を早坂さんのチームは初出場だし、全く知らない人がチームマネージメントをするわけで…大会運営側としても成立させるためには丁寧にやるべきだと、思ってるわけで。なんか言い訳をしているみたいだが、この時はただただ癒されていたと思った(笑)

早坂さんからの連絡は、とても楽しみだった。
丁寧な社会人としてのメールだが、社交辞令でも一文最後に口語文で入っているのがズルイと思った。
「まだ、仕事してるんですか?無理しないでくださいね」
とか。さりげなく入れてくれた。
たいていCCに、誰のアドレスもない時に限るけど。それも、後少しで終わりか…。

実は、自分のメールの署名欄に会社名と部署名、氏名、会社の住所、電話番号と、自分の携帯番号を付けていて、早坂さんから27日、長電話した後にショートメール(携帯番号からメッセージが送信できる)でお礼のメッセージをもらって、差し支えない程度に連絡を取っていた。といっても、[メンバーが変わりましたー]という業務的な内容ではあるが、日に一度もらってたりした。
夜遅くのメッセージの時は、
[まだ、仕事やってるの?ブラック…だねー無理しないよーに]とか話して励ましてた。
彼女は、チーム(現場)ではなくフロントにいる同僚とあまりうまくいっていないらしく(特に室長?)、説教ではないが、励ましを込めて、
[しんどいけど、なんでもさせられるっていう経験は信頼がないとできないし、できない人には頼まないから。便利屋サイコーさ!テルマに…おっと、「早坂に頼んどけばうまく行く!」って思われれば、違う場所に行ってもうまくいくよ]
そう、テルマというのは、彼女は肌が色黒?小麦色らしく、[テルマに似てます!雰囲気が]とこの間の長電話の時教えてくれた。
俺の励ましに彼女は、[一旦頑張りますね]と返事をくれた。

どさくさに紛れてLINEの交換をして、より愚痴を聞いたり励ましあったりする話をするようになった。
彼女は、今時ではあるが、とてもハツラツで元気の良い女の子という感じがした。

大会前日、運営備品とテント三脚をバンに一人で積み込み、横浜は山手にある、YC&ACグラウンドへ向かっていた。

彼女のチームは午前中にトレーニングが終わり、明日の買い出しやらなんやらするということで準備に少し追われていたが、移動中に連絡をしていた。いや、してくれていた。
[桜がソロソロ満開じゃない?彼氏と行かないの?]
ジャブを入れた。
[そんな予定ありませーん(笑)]
やはり、彼氏がいるのか…
カウンターパンチを受けたみたいに少し痛い気持ちになっていた。

[彼氏は忙しいのかな?]
[そーなのかもー]
[そーなのかもー?ってどゆこと?]
と、ボクシングなら右ストレートのパンチがヒットしてふらふらしている状態に…返信してからすぐには返事はなかった。
会場に14:30頃について、テントの準備をし始めた。
彼氏の存在が気になりつつも、せっせと4-5人で会場を設営していく。

風も無く花見日和で、そのグラウンドには一般の方や、近所の方々が散歩がてら訪れていた。
その風景をiPhoneのカメラに収め、次の連絡が来たら送ろうと準備していた。

2時間ぐらいかけて設営を終わらせ、冨木さんという共催のマネージャーの方と最後の打ち合わせをして、17時くらいになり、また、外苑の事務所までバンで帰っていった。

LINEメッセージの短い着信音がなる。
[そーなのかもっていうのは、把握しないといけない彼氏や相手がいないってことですよー]
と、返事があった。10カウント寸前に立ち上がり、なんとかドローに持ち込むボクサーの心境に近かった(笑)
カマかけて自分でショックを受けていたが、少し嬉しかった。いや、今思えばかなり嬉しかったんだと思う。

[しゃあさ、今度花見行こうよ。]
[いいですねー!でも、まだ、会ってもないし何もわからないのに、誘っちゃっていーんですか?]
[こんだけ話せるようになってたらもう大丈夫かなって。]
[後悔しないでくださいねー(笑)]
俺が後悔なんてするかよ。今の仕事についたことの方がよっぽど後悔に近い。が、5年も仕事をしているが、やはり彼女だけではなく、ラグビー関係者に出会える奇跡だけは、本当に感謝している。

それだけは。

話してるだけでも癒されて楽しいのに。
彼女を励まして、彼女が少しでも元気になってくれてることが不思議と自分にとっての癒しだった。

俺なんかで喜んでくれることがとても人として必要とされていることか久しぶりの感覚と感情だった。

[明日は、本部につきっきりになるから、ちゃんと顔見せてねー]
[行きます!お礼も兼ねて!]
[テルマイメージでいとくわー]
[あっ、そんなこと言うと行きづらい…やっぱやめよーかなー]
[いやいや、早坂さんは早坂さんでしょ?大丈夫だから!それとも、こんなに丁寧に色々してあげたのに顔見せに来てくれないのー?]
[そ、それを言われたら。でも、本当に期待しないでくださいねー(汗)]
[俺もどう思われるかわからんじゃん。変なおじさんだなってなるかもしれないし…]
[塚越さんは大丈夫!]
どゆこと?彼女の大丈夫は、よくわからない時がある。

そんなやりとりをしていたら事務所について、
最後の仕上げを0時過ぎまでして、
彼女との連絡もひとまず終えた。

自宅に会社のバンで帰り、
LINEメッセージを見直して…
そうこうしているうちに、
出発の5:00になっていた。

to be next story...


(あとがき)
かっこの「」[ ]の違いなのですが、以下の通りになります。

「」口頭会話
  [ ]  Lineやメールなどの会話

以上になります。

昔の仕事の状況と恋を感じているの久しぶりだったことを思い出しながら
あることないこと書いているので、楽しんでいただければと思います。
引き続きよろしくお願い致します。



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