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流れゆく世界内の存在として|オラファー・エリアソン展・相互に繋がりあう瞬間が協和する周期

麻布台ヒルズギャラリーの開館記念展示として、オラファ―・エリアソン展を見てきました。

オラファー・エリアソンとは。

アイスランド系デンマーク人のアーティストであり、
光の輝きや水の揺らめきという自然現用を用いて作品を制作し、気候変動といった社会的な地球規模の課題にも積極的に関わっています。ニューヨークの川に巨大な人工の滝をつくったり、美術館の中に太陽のような光源をつくるインスタレーション作品など、想像をはるかに超えるスペクタクルな体験を届けています。実際の生活や経済に関わるプロジェクトを行っていて、美術が一部の特権者の独占物とならないように仕掛けている前衛的な姿に、刺激を受けます。

The Weather Project, by Olafur Eliasson, at Tate Modern《ウェザー・プロジェクト》(2023)


オラファー・エリアソンの展示を訪れた際、彼の作品に込められた深い社会的意識とアーティストとしての独自のアイデンティティに強く感銘を受けました。展示されていた作品は、非科学的な形の組み合わせやシンプルな円の運動を取り入れており、まるで水が静止したような体験を与えるインスタレーションは、まるで水の写真をコマ送りで見ているかのような写真的な視点を提供してくれると思いました。

《瞬間の家》(2010)

アーティストであり、社会の市民として

エリアソンは受けてきた多くのインタビューにおいて、アーティストであると同時に、社会に属する市民として、まったく特別な存在ではないことを自認していると語ります。世界に生きるものとしての責任があり、だからこそ政治や建築、社会や制作の安定、グローバリティ、社会福祉などへの興味を持ち続け、アイデンティティを形成しています。

ノイズを減らし、透き通った目で世界を見渡すこと

身近な自然現象を取り上げつつも、それに新たな深さや豊かさを吹き込む彼の能力は、私たちが慣れ親しんだ世界の解像度を高めてくれます。まぎれもなく移り変わる世界において、全体を見通し予想する精度ではなく、一つ一つの当たり前な事象に向き合い豊かさを追い求めることは、透き通った目を持たせてくれる、そんな気がしました。

最後に、頂くだけで、何もあげられなかった世界にぬくもりの記録、一つは残したいという、個人的にはどうしよもない虚無感に押しつぶされそうになりながらも、人間存在として与えられ時間、現存在としての瞬間瞬間に価値を見出し、自己の本質を理解する表現をし続けたい。という志を胸にちょぅっとしたメモを書き留めます。


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