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仕事ができる人ほど「だからゆとりは」とは言わない件:ダイバシティを考える

私の日々の仕事は数百名のマネジメントをする上層部との
人事的観点からの戦略、仕組み、人材確保と人材育成の議論をし
実現、実践をして行くということだ。

今日はダイバシティの話をしたい。
ダイバシティと一言に言っても幅広い観点、幅広い議論が行われる。
これを話すのは難しいと思う人も、
言語化し口に出すのが難しいという人もいる。
全てを1つの記事に詰め込むことは不可能なので、
今後少しずつケースベースで投稿したい。

大前提として、人事としてダイバシティは避けては通れない課題であり、
希望であるということ。
今日は掲題の通り、仕事ができる人ほど「だからゆとりは」とは言わない件について話したい。

ダイバーシティとは、多様な人材を積極的に活用しようという考え方のこと。 もとは、社会的マイノリティの就業機会拡大を意図して使われることが多かったが、現在は性別や人種の違いに限らず、年齢、性格、学歴、価値観などの多様性を受け入れ、広く人材を活用することで生産性を高めようとするマネジメントについていう。

「ダイバシティ」と聞くと、人種や性別、LGBTQ、障がい者というようなマイノリティに対しての多様性というイメージが強いのではないだろうか。
私自身も大学時代に学んだ際はこのイメージが強かった。
そしてどの社会でもマイノリティの人々を活用するというのが必要だったし、
今も必要である。

今日は少し視点をそらしたい。
今の会社に入って上層部のいわゆる「仕事ができる人」がどういう視点を持っているのか私が気づいたことを記載したい。
なぜ「仕事ができる人」とわざわざ言っているかというと、
実力主義の会社の中で ①知的能力 ②行動力 ③人から信頼される
という3つの要素がなければそもそもその地位に立っていないからだ。

「だからゆとりは」とは言わない

私がこれに気づいたのは入社して2ヶ月ほどだった頃だ。
新卒社員でなかなかパフォーマンスが出ない人たちに対して
早めにその人に合う環境や教育をするために、
現場から報告のあったメンバーと、
上層部(執行役員手前のディレクタークラス)が個別に会いたいと言った。

そして話を聞く。
どういう課題を抱えているのか、自分で改善するためにどんなことをすればいいと思うのか。
当たり前、雲の上の存在の上層部に対してうまく話せない若手も多い。

だが、シンプルな質問をしながらじっくりと話を聞く。
正直的外れなことも多い。
社会人としてどうなんだと思われてもしょうがない発言をすることもある。
その場では社会人の先輩として本人のできること、
やりたいことを聞いてあげ、
じゃあそれを達成するために環境は整えるという約束と共に、
本人が自分自身と向き合えるようにいくつかの質問をし、考えてもらう。

私が着目したのはこの後だ。
人事という立場は面白いもので、評価含め色々な情報を握る。
ディレクタークラスと親しくなれば親しくなるほど
何でも話してくれるが、「だからゆとりは」と言わない。
前職ではよく聞いたものだ。
直接的な表現でなくともこのような言葉を聞いたことはないだろうか。

「こういうのをなんていうんだっけ?ゆとり?さとり?」
「〇〇さんはゆとり世代なの?さとり世代なの?」
「俺には今の若い子の考えがわからない」
「おじさんついていけないな」
「今時、これが普通なんだろうね」

今に始まったことではない。
きっと私の父親の世代も、若かった頃はその上の代に
「最近の若者は・・・」と言われたのだろう。

だが、ふと「だからゆとりは」的な発言をしないディレクターが気になり、
逆にどういうことを言っているのか自分の学びにもなると思いメモを取っていた。

「〇〇さんの課題は〇〇だから面談ではその点について自分で考えて欲しいと思った、だからああいう質問したんだ。次の面談までにきっとその点は考えてくるだろうね」

「社会人としてのマインドとして欠けている点に関して指摘したが、これをきちんと上司も指導してあげてたか確認してくれる?もしちゃんとできていないのであれば、早いうちに直さないと癖になっちゃうから着目した方がいいな」

「大学との大きな違いは環境を選べないこと。
嫌いな人も苦手な人もいる中で、
それでもどうやって成果を出すために動けるかということが課題だから、
次の上司にはその点に着目してもらいながら指導するように連携しておいて」

わかるだろうか?
人事の私に対しての指示は今の状況x次に何をすべきかである。
「原因」に関しては本人に考えるよう質問する。

「自分としてはなんで今の課題があると思ってる?」と。

だが、その先に原因を追求することはしない。
「ゆとりだからわからないんだ」
「まだ社会人○年目だから」
なんて言わない。
まずは自分のみている組織の管理職がきちんとRole Modelになれていたか、
課題に対して指導やフィードバックをしていたか、
できていなければこれからすればいい。
本人には今のタイミングで認識してもらえば、
次は意識してやれるだろうと期待する。

冒頭で話したようなマイノリティに対してのダイバシティは
大きな会社であればトレーニングが行われ、根付きつつあるだろう。
だが、世代のダイバシティというのはアンコンシャスバイアス(無意識の差別)としてあまり議論にあげられないことなのではないだろうか。

「〇〇だから」というステレオタイプを省き、
まずは目の前にいる人の考えを聞く。
人間は仮定をし、こうであろうという考えを持ってしまうが、
まずはその耳を傾けることでその人を知ることができる。
また、そういう考えを持っている原因を他責にさせない、
〇〇だからと言い訳をつけさせない。
その個人に対して目を向けることができる。

ダイバシティはマイノリティ向けに始まったものではあるが、
多様性というのは自分以外の人全てに当てはまる。
親であろうが兄弟であろうが、同じ育ち、同じ会社であろうが
同じ考えを持っているとは限らない。
経験があるからと言ってそれが正しいわけではない。
自立した個人を個人として見るからこそ、
それはどんな人とも働けるというメリットに繋がるのではないだろうか。
この人だったら理解してもらえると信頼をしてもらえるのではないだろうか。
そして「僕は違う世代だから」という言い訳もしない。
壁を作らない、理解できない部分があれば質問して聞こうとする。

ーーー
私も数字を元に仮定をしがちだ、そして人事としてそれが必要となることはある。
どういう会社からきている人が離職しているのか、
中途の人の評価はどうなのか、
上層部とネゴシエーションする際に膨大なエクセルのPivotを組んだ上で、
最終的にシンプルにまとめそれを元に議論する。

仮定を持つことは悪いとは思わないが、
ダイバシティというのは多様な考えを活用した時に
イノベーションを起こし、新しい視点を見つけることができるメリットがある。

だからこそ数字を元にした仮定の先に必要なのはアンケートや
個人へのヒアリングだ。
実際にその対象になっている人の話を聞かなければ何も確定されない。
そして次のステップを見つけることができない。

自分が持つ人へのステレオタイプや、
アンコンシャスバイアスを意識することが
新たな視点をみるきっかけになるのではないだろうか。



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