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一億円のパラレルワールド


昨年の11月半ば頃、ある方から連絡が入り、カフェに使っていた店を譲ってくれないかということでした。

12月に入ってからも別の方が店の方にやって来
て売ってくれるかどうか聞かれました。

年明けて1月10日を過ぎた頃、また関係者のかたから夫の携帯に連絡が入り、

「いくらだったら売ってくれますか?」

ということでした。

私の夫がとっさに

「一億円!」

というと、

「離れの古民家も一緒につけて下さい!また連絡します。」

と言われました。

「もし先方さんが本気だったらどうするの?」
と私が夫に聞くと、

「あの建物には自分の想い入れがいっぱいあるけど、そのまま残しておくと、あとのものに迷惑がかかる。屋根の修復には高額の費用がかかるから今が売り時だと思う。」

と言いました。

「そうね、でも一億円貰っても自宅のメンテナンスと車の買い替えに使ったらたくさん残ってしまう。この前、学者の先生が近い将来お札は紙切れになりますよと言ってたわよ。」

「そんなことないよ、そのまま置いとけばみんな食べるに困らないよ!」
と夫。

それからというもの、私は近未来の経済がどうなるかわからないから早く形のあるものに変えておかなければとそのことばかり考えていました。

私は時々散歩に使わせてもらっているMさんの敷地に、いつかハワイ島の森の中で見た光景ととてもよく似た場所があっていつもそこが気になっていました。

道なき道にブルドーザーのタイヤの跡だけが残っていて、両サイドはシダやツタが木々にからまり、ところどころにピンク色の寒椿やなんてんの赤い実が垂れ下がっていました。

しばらく歩くと左側にキャンプ場の跡地の
ような場所があってそこは久しく人が入っていないのかいくつかの大木の切り株には青ゴケがびっしりはりついていました。

奥の方に赤茶けた硬い岩壁があってその脇のなだらかな坂を上がると舗装された道路になっていました。どうやら私が車を置いてる駐車場につながっているようでした。

私の目の前に3メートルくらいの崖が立ちはだかっていました。上を仰ぐと金網が張り巡らされています。ツタにつかまったら私でも上に上がれそうでした。

少し破けている金網を潜って中に入ると
開発を途中で放棄したような広々とした手付かずの土地が見えて来ました。

次の日私の娘と一緒に表の坂道からそこの場所に行くと、意外と簡単に目的地に着けました。

「わあー、ここは360度山々で囲まれているわね!空が近くに見えるわ!」と娘。

「ここに、おとぎばなしに出てくる可愛らしい家を建てて、露天風呂を作るの。広いリビングには暖炉があって、お客さんは瞑想をしたり体操をしたり、手作業をしたり好きなことをするの。お料理は地鶏の蒸し焼きと採れたて野菜のフレッシュサラダ!
昼間はハーブや色とりどりの花を植えたり
季節野菜を植えるの。
夜は星を見上げながらアロマの香りのする湯船に浸かって、、、
「いいわね、まるで天国ね!」

私は早速土地の持ち主であるMさんに声をかけてあの土地を売ってくれないか尋ねました。

作業所で薪割りしていたMさんは、

「あの土地、うちのんとちがいますねん。持ち主は遠方の人で連絡つかなくて困っているんです。いろいろゴタゴタがあるんですわ。」

「ガーン」
私の夢は一瞬で覚めてしまいました。

それからというもの私は他の物件探しにあちこち回りました。

温泉近くに広い土地と古民家があると聞いて現場に着くと、入り口に崖崩れ注意⚠️とかいてありました。それでも中に入ると、ボロボロになった腐りかけた建物が二棟、庭の雑木林の上を見上げると墓が立ち並んでおり、その一角が今にも崩れて来そうになっていました。

2月に入ってすぐ、あの縄文の家を買いたいという人の代理の人がうちの自宅にやって来て、
あの建物を建てたいきさつと想いを聞かせて欲しいということでした。夫が、あの当時全財産を投げ打って日本の美しい建物を残すために建てたことをとうとうとその方に話しました。

その方が帰られてから4.5日経ったころ、同じ方から電話が入り、

「うちの社長が、お断りして欲しいと言うんです。オタクのあの建物に対する想い入れが強過ぎて、買うには荷が重過ぎると言うんです。」
「、、、、、」夫。

本当はどっちでも良かったような気がします。
早くお金を形に変えなくてはという私の焦りから、私の妄想だけが大きく膨らんでしまったようです。

何だか、自分に、「お疲れ様でした!」
と言いたい心境です‼️

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