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ファイナンス思考の組織改編!?会計士の描く「適材適所」の組織とは

今回のインタビューでは、採用広報チームが、CFOの谷垣さんにお話をうかがいます。
 
企業の存続や事業の成長に欠かせないのが、「組織」です。ジョリーグッドでは2024年6月、「全社プロジェクトワーク化」を掲げ、それまでの「機能別組織」から「マトリックス型組織」へ、組織改編しました。組織を変えることで何を実現しようとしているか、なぜいま組織の在り方を変える必要があったのか。組織構造改編の立役者となったCFOの谷垣さんにたっぷり語ってもらいました。


谷垣 圭太(たにがき けいた)

奈良県出身。東京大学法学部卒業。公認会計士、中小企業診断士。2012年、大手監査法人に入社し、マネージャーを務め、監査やアドバイザリー業務に従事。その後、経済産業省への出向を経て2020年に外資コンサルファームに入社。戦略部門にて営業戦略策定・カスタマーサクセス組織立ち上げ支援、海外進出戦略やESG戦略の策定などを担当。2022年6月ジョリーグッドにジョインし、主に管理部長としてバックオフィス全般の体制整備を主管。2023年2月にCFO就任。


資本主義の正解は「ハイリスク・ハイリターンがとれる組織」

——企業の存続や成長に欠かせないのが「組織」だと思いますが、谷垣さんが考える日本の組織文化と課題について教えてもらえますか?
 
そうですね。わかりやすく、欧米の組織文化と比較して話してみたいと思います。よく、日本人は農耕民族、欧米は狩猟民族と言われますよね。ビジネス上、世界で活躍している企業って、狩猟民族と言われる国から生まれていることが多いんです。
 
農耕民族は、毎年同じ時期に種まきし、水をやり、肥料をまいて、収穫します。同じことを繰り返し、みんなで協調することで食事にありつけます。だから村社会は重要で、そこから少しでも外れる動きをすると村八分にされてしまう。日本ではそういう文化が形成されてきました。
 
一方で狩猟民族は、大陸を移動しながら獲物を得ることで食べつないでいきます。かつ、ウィナー・テイクス・オール。つまり、獲物を倒すことにチャレンジをしないと、食うのに困るんです。こうしたハイリスク・ハイリターンが浸透しているのが、欧米を中心とした大陸文化です。

我々は資本主義のルール下でビジネスをしています。資本主義における鉄則はハイリスク・ハイリターン。大陸文化から生まれた資本主義のビジネスというゲームにおける正解は、必然的にハイリスク・ハイリターンがとれる組織ということになります。
 
ただ日本では、「リスクはなるべく避けたほうがいい」「変動がない社会が好ましい」と考えられがちです。長く培われてきた日本の組織文化と、ハイリスク・ハイリターンをとる資本主義の大陸的な組織文化のミスマッチが未だに起こっていると感じています。

——なるほど。古来築かれてきた文化や考え方を変えるのは難しそうですね。 

はい。ただ、ベンチャーはハイリスク・ハイリターンを狙いにいく企業体なので、どちらかというと日本の組織文化から外れていると言えます。そうした意味では、ベンチャーの組織の在り方をもってすれば、世界で戦えるのではないかと思っています。

ブラックボックス化と分断による「船酔い」を解消するために踏み切った組織改編

——2024年6月、ジョリーグッドでは組織構造を改編しましたが、改編前はどういった組織だったのでしょうか。

これまでは、制作や営業、開発といった専門部署が縦割りに並ぶ、いわゆる機能別の組織構造でした。というのも、私が入社する以前、ジョリーグッドは上場に向けて組織体制を整備した時期がありました。

上場準備時には、多くの場合、前例の多い日本の大企業的な組織体制をなぞろうとします。ジョリーグッドもまさにそうした組織体制を整えようとして、機能別の組織体制を組んでいました。
 
なので、私が入社したときには「ベンチャーでありながら大企業病に侵されているな」という印象でした。経営陣は「ベンチャーだからどんどんチャレンジすればいい」という考えを持っているんですが、組織構造ゆえにスタッフたちはその枠組みから抜け出せずにいるなと。

——スタッフと経営層とのあいだで意思疎通ができていなかったんですね。具体的に、どんな課題を感じていましたか?

ひと言で言えば、社員が「船酔い」を起こしているような状況でした。

経営陣は日々高速でPDCAを回していて、「こっちに行ってみたけど行き止まりだったから、今度はこっちに行ってみよう」という進路変更がたびたび起こる。大きな方針・ゴールはそのままなんですが、そこに向かう道筋が変わることはよくあるんです。

本来、そうした経営陣の言葉を翻訳して現場におろす役割を担うのが各部署の部門長ですが、部門長たち自身が、全社横断的に物事を捉える経営陣の言葉を翻訳しきれず、自分の守備範囲からの理解でしかスタッフに伝えられなくなっていました。

それが、経営陣からは情報がブラックボックス化しているように見えるし、スタッフから見ると「CEOの言っていることと違うことをしている気がするけど、大丈夫なのかな?」というモヤモヤを抱えながら進むことになってしまって。

——悪循環になってしまっていたんですね。

そうなんです。それでいざ業務を進めてみると、やっぱり経営層が言っていたことと自分たちがやってきたことはすれ違っていたんだということで、ひっくり返される。そうした事態が重なり、スタッフたちは船酔いを起こしてしまっていました。

たとえば、開発でいうとプロダクトをどう作るか。営業でいうとどういう相手に対してどう数字を積んでいくか。そういった意思決定の部分で、ブラックボックス化と分断が起こっていたんです。

頭=方針・マインドはベンチャーなのに、体=仕組みは大企業。このミスマッチが、「船酔い」につながったと思います。

機能横断でチームを組むプロジェクトワーク化で組織課題の解消に挑む

——そんな課題を解消するために行った組織改編。新しい組織はどんな構造なのでしょうか。

ひと言で言うと、プロジェクトごとに適材適所の人材を配置するマトリックス型の組織です。マトリックスには縦軸と横軸がありますが、縦軸が自分の専門性。従来の組織でいう、「制作」「営業」「開発」といった部署に近いものですね。一方、横軸はプロジェクト。つまり、業務のかたまりです。

この組織では、業務のかたまりであるプロジェクトを動かすプロジェクトリーダーと、チームマネジメントをするマネージャーのもとで、その規模や内容に合わせて制作や営業、開発のスタッフを横断的にアサインします。
 
こうした構造は、全社目線でマーケティングの仕方を考えるうえでも有効です。ジョリーグッドはJOLLYGOOD+事業とDTx事業、大きく2つの事業を展開してきましたが、過去の組織構造では、JOLLYGOOD+事業部、DTx事業部の双方のメンバーがお互いの事業についてよく知らないということが起こっていました。
 
今後は事業部に分け隔てなくプロジェクトにアサインされるので、その中で知見の相互交流が生まれていきますし、各事業に閉じない全社最適なマーケティング戦略を立案できます。また、制作・営業・開発の機能横断でチームを組むことで、お互いの専門領域について知見を持ったハブになる人が増えていくと思っています。
 
先ほど、CEOの言葉を中間管理職層が翻訳しきれないという話をしましたが、それって知見の狭さが要因になっていると思うんです。プロジェクトの中で自分の専門領域以外の人と交流することで知見が広がり、「経営層は全体のこの部分を見たうえで、こっちに進もうと判断しているんだな」という理解ができるようになる。そんな効果も狙っています。

——この組織構造の改編はいつ頃、誰によって発案され、どう意思決定されていったんですか?

最初に話が持ち上がったのは2023年9月です。発案したのは僕なんですが、この話には裏がありまして……。
 
当時、アメリカに現地法人を設立するということで、拠点視察と経営合宿を兼ねて経営メンバーで渡米をしました。AirBnBで一軒家を借りて全員で泊まり、毎晩日付が変わっても会社や事業の方向性を熱く話し合っていました。そんな中、休日の土曜日にみんなで現地の大学を視察しに行こうという話になったんですが、当日あろうことか、大寝坊してしまったんです(笑)。

目覚めると11時。当然みんなはもういない。最初は「時差……かな?」と携帯を二度見したり、プチパニックになりましたが、起きてしまったものは仕方ない。気持ちを切り替えて、いま自分にできることをしようと考えました。それから、みんなが帰ってくるまでの時間で自分が入社して以来感じていた組織課題のモヤモヤをあらためて洗い出し、解消する施策を整理し、スライドも作り、その夜の合宿で発表しました。それがこのプロジェクトワーク化の原案です。

あ、もちろん、みんなの帰宅時には土下座で迎えましたよ(笑)。

それで組織改編のおおよその方向性が決まり、帰国後は2週間に一度のペースで定例ミーティングを重ね、具体化をしていきました。

——まさかの展開だったんですね(笑)。組織改編の議論をする中で、どんな話が出てきましたか?

それまでの価値観をガラッと変えることになるので、そもそも組織の変化にみんながついてこられるかという懸念がまず1つありました。議論の初日に経営陣で懸念点を出し合ってひとつひとつ潰してはいたんですが、これがメンバー層に下りていったとき、具体的な不安が思いつかなかったとしても、「お化けを恐れる」みたいな状態に陥らないかという話になったんです。

——なるほど。具体的な不安は思いつかなくても、全体がぼんやりわかりづらいとだけで、すべてを受け入れられなくなることはありそうですね。どうやってその状態を解消しようとしたんですか?

一度自分たちでじっくり考える機会を作ったほうがいいんじゃないかということで、旧部門長を中心としたマネージャー層を対象に合宿をしました。この合宿の中で、制度をうまく回すにはどうしたらいいかみんなに考えてもらったんです。そうすることで、マネージャーがスタッフに対して、自信を持って伝えられるようになると思いました。

——他にはどんな懸念があったんでしょう。

プロジェクトワーク化することで、会社として知見が溜まりづらくなるんじゃないかという話がありましたね。そこは旧制作・営業・開発の各部署がそれぞれ「ユニット」というゆるいつながりを作り、ユニット内で知見を共有する仕組みを作ることで解消されると考えました。
 
それから、一番大きな懸念は、スタッフのプロジェクトアサインが「人気投票」になりかねない、という点です。優秀な人にはどんどん業務が斡旋されるけれども、逆に実力が足りていない人には業務がこない。それをみんながどう捉えるんだろうとは思いました。
 
ただし、この課題は敢えて解消しないようにしています。

——敢えて、ですか?

はい。なぜなら、ミッション・ビジョン・バリューにもあるとおり、ジョリーグッドは「成長」を大切にする会社だからです。自分に業務が集まらないと感じたら、成長するために死に物狂いになる。それができない人は、そもそも当社にいない、という考えです。
 
人気投票になることでモチベーションが下がらないよう調整はしていますが、大きな方向性として「自分自身が成長しないと会社のスピードについてこられないよ」ということを、手を替え品を替えて訴求しています。

——成長意欲のある社員に対してはどんなフォロー体制を敷いているのでしょうか。

まず、入社時のオンボーディングの仕組みは、ベンチャーにしてはめちゃくちゃ整っていると思います。一例が、「サプリ」という仕組みです。会社で知っておくべき基本的なビジネススキルや専門知識といった、当社でサバイブするために必要な情報を4週間かけてOff-JTでインプットします。
 
OJTは、最初にアサインされるプロジェクトの中で3カ月かけて行います。この3カ月間は、新入社員のコストをゼロで計算しているので、プロジェクト側からすると「ただで戦力になる人が入ってきてくれる」となり、積極的にアサインされます。万一立ち上がらない場合は試用期間を延長し、OJTアサインが継続するわけですが、最終的に人事労務コスト扱いにすることで、人事コストがかさまないように人事としては優秀な人を採用するという循環が生まれます。
 
立ち上がったあとも、さまざまなプロジェクトに携わるなかで成長を高速化させる仕組みがあります。例えば、プロジェクトのはじめに「このプロジェクトを通じて自分は何を達成するのか」を宣言して、終了後には振り返りとプロジェクトマネージャーからのフィードバックが受けられるようになっています。プロジェクト期間は最長で3カ月、人によっては複数プロジェクトを同時進行することになるので、フィードバックの機会が多く、高速でPDCAを回すことができます。

最適なリソース配分でチャレンジを高速で回し、成果につなげたい

——新しい組織構造で、今後どのように会社の成長を実現していきたいと思っていますか?

プロジェクトワーク化の一番の肝は、そのときそのときに求められるリソースを柔軟にアサインできることだと思っています。これまでは、部署間で「自分の部署でこの役割を任せたいから、そっちの部署で引っ張ってくれるな」みたいなしがらみがあったんですが、すべての業務をプロジェクトアサインにしたことで、会社にとって最善のリソース配分ができるようになりました。
 
ベンチャーが勝率を上げる一番の勝ち筋はチャレンジの数を増やすことなんですが、どうしてもリソースが限られます。会社の最適なところに重点的かつ柔軟にリソースを投下しながら、チャレンジを超高速で回していく。それを成果につなげていきたいですね。

——新しい組織構造は、企業文化にどんな影響を与えるでしょうか。

そうですね。当初は混乱が起こらないように、なるべく過去の部署を引き継ぐ形でプロジェクトチームを形成しているんですが、今後は少しずつバラしていこうと思っています。
  
ジョリーグッドはもともと動物園みたいな文化を持っていて、多種多様なプロフェッショナルが集まっています。日々、異種格闘技戦で新しい価値がどんどん生まれていく。プロフェッショナル同士で意見でぶつけ合うおもしろさをみんなに感じてもらえたらいいですね。

——最後に、今後に向けての決意を聞かせてください。

ジョリーグッドを「日本国内で小さく成功するベンチャー」で終わらせたくないと思っているんです。現在も北米に進出していますが、世界できちんと戦えるベンチャーにしたい思いがあります。

今後は個性の幅もグローバル単位で広げていけたらと思っているので、より専門的で、より尖った人材にどんどん参画していただいて、個性をぶつけ合いながらおもしろい化学反応が生まれていく、そんな会社にしていきたいなと思っています。