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【映画評】ジョン・ハフ監督『ヘルハウス』(The Legend of Hell House, 1973)

 ロンドンの大富豪が死後の生の存在を確認すべく物理学者(とその妻)、心理霊媒師の女、物理霊媒師の男を雇い、有名な幽霊屋敷を調査させる。物理学者が、霊を消滅させるという電磁気装置「リバーサー」を作動させ、幽霊現象は収まったかに見えたが…。
 19世紀的幽霊屋敷を現代のモーテルに接続し恐怖映画史を刷新した『サイコ』(60)を参照しているにも拘らず、古臭い幽霊屋敷ものに先祖返りしてしまった感のあるこれは失敗作であろう。その過程で持ち込まれる物理対心理という二項対立も単純に過ぎる。それでもって、これも、幽霊屋敷映画にありがちな車椅子を主要モチーフとする映画だ。つまりは「立てなかった」男の復讐譚なのである。
 原題は The Legend of Hell House で脚本はリチャード・マシスン。マシスン本人が1971年に出した小説 Hell House を自ら脚本化したのだが、『たたり』(1963)とその原作『山荘綺談』(The Haunting of Hill House, 1959)へのオマージュが強い割に、ポール・ミーハンが言う様に「『たたり』と比べると登場人物同士の関係に劇的奥行きを欠いている」。

〈引用文献〉Paul Meehan, The Haunted House on Film: An Historical Analysis, Jefferson, North Carolina: McFarland & Company, Inc., Publishers, 2020.


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