一人称の使い分け

音楽を聴いていて、一人称が気になってしまうことがよくある。
最も共感を得られそうな例を出すとするなら、大人数の女性アイドルグループの曲。
一人称はほとんどが「僕」なのだ。歌っているのは女性、なのにである。

曲の中の一人称は、いわばその歌詞が表す物語の主人公なんだと思う。
そう考えると彼女たちは1人の男性のストーリー・心情を音楽にのせて歌っている、ということになる。

ここでぜひ、少しだけでもいいから考えてみてほしい。
貴方が心の中で何かを思うとき、そこに一人称はあるだろうか?
あったとしたら、それは自分の性別と一致しているだろうか?

先ほど「僕」という一人称を男性固有のもののように取り扱ったが、必ずしもそうではないということは書き加えておきたい。

一人称を使い分ける、ということは見せたい自分にはそれぞれ範囲があって、それを時と場合によって自然に入れ替えているわけだ。この複雑な作業を意図せず行っているところがとても面白い。

自分らしさ、そして誰かの「らしさ」を認めることも、この異なる一人称に気付くことと似てはいないだろうか。
「相手にはあなたに見せたいらしさがある」そう思うだけで、目の前の人々を肯定的に、魅力的に受け取ることができるかもしれない。

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