ごちうさの聖地巡礼に行ったら大陸文化の複雑さを実感した話
あぁ^~心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~
誰もが一度は聞いたことのあるセリフだと思う。
もし聞いたことのない方がいたら私とは別の世界の住人ということになる。
そんな異世界人の方々のためにWikipediaの説明を引用しておく。「ご注文はうさぎですか?」(略してごちうさ)という作品から生まれた流行語だ。
第1期の放送時には「あぁ^〜心がぴょんぴょんするんじゃぁ^〜」という流行語が生まれ、「アニメ流行語大賞2014」で第4位となった。これは作中の台詞ではなく、オープニングテーマ「Daydream café」の冒頭の「心ぴょんぴょん」というフレーズと、既にあった別のインターネットミームが合わさって、ファンの間で広まったものである。その後、2015年4月25日、26日に行われた「ニコニコ超会議2015」のアニメブースでは、挑戦者がランニングバンジーのゴムの力に耐え、「あぁ^〜心がぴょんぴょんするんじゃぁ^〜」と叫びながら抱き枕の獲得を目指すアトラクションが公開された。
( Wikipediaより引用 )
そんなわけで、今回は前回のパリに続き留学から帰る途中でごちうさの聖地巡礼に行った際のお話。
ナンシーを目指す
パリ東駅を出発したTGVはすぐに都市部を抜け出し大平原の中を東へ向けて疾走した。
この列車の行き先はナンシーと呼ばれる都市でパリから東に300kmほどに位置する。
途中なんもない駅で停車、後続列車に抜かれる。
この列車は運行距離が短いため鈍行的な扱いなのだろう。
虹が見えた。
なぜナンシーへ?
ナンシーという都市を知らない人は多いだろうし、わざわざ観光に行く場所ではないと思われる。
ではなぜナンシーを訪れることにしたのだろうか?
もちろん聖地巡礼!……というわけではなくどちらかというと中継地点で、ごちうさの聖地であるコルマールに行くにはさらに列車に2時間ほど乗らなければならない。
コルマールに直接行くなら通過してしまう街なのだが、なんと私の父の知人がナンシーに住んでいるということで急遽泊めていただけることになったのだ!
事前に乗車するTGVの到着時刻は伝えてあり、時間通り1時間半ほどでナンシーに到着。
お互い顔を知らないため合流できるのか?という不安はあったもののこの街には東洋人は全然いないため一瞬で合流。
街を少し散策してからご自宅へお邪魔させて頂いた。
……とここで、お土産にと思ってアメリカで買ったお菓子類が悲しいまでにぺたんこになっていることが判明。NYの空港で難民となっていた際に荷物をイス代わりにしていたのを思い出す。
そんなわけで、至れり尽くせりのおもてなしを受けるも差し入れはないというなんとも無礼な状態になってしまった。自責と悔恨の念、ここに極まることこの上なし……。
コルマールへ
翌朝、始発列車に乗って東へ向かう。
ストラスブール行き。ストラスブールはドイツ国境の街。
のんびり車窓を眺めていると、途中で反対側の線路と立体交差して左側通行から右側通行に切り替わった。
SNCFは歴史的にイギリスと同様の左側通行なのだが(メトロは右側通行)、アルザス地方は右側通行となっている。
この地域は歴史的にも複雑で、三十年戦争により神聖ローマ帝国からフランスへ割譲された後、普仏戦争後から第一次世界大戦までは再びドイツ領となっており、この時期に複線化工事が進んだためドイツ式の右側通行となっているのだ。
ドイツとフランスに挟まれたこの地域の歴史的複雑性を表す作品としてアルフォンス・ドーデの「最後の授業」が有名だと思う。
"私のフランス語の授業は今日が最後です"というやつ。
ただ、実際のところ現地語であるアルザス語はドイツ語に近い言語で、フランスの同化政策に対する反対運動も盛んだったなど小説の内容とは随分異なっているようである。
文学作品ひとつ取ってみても、その背景にある歴史や政治を知るだけで違った側面が見られ面白い。私には「最後の授業」はプロパガンダにしか見えなくなってしまった。
2時間ほどでストラスブール駅に到着。すぐにコルマール方面の列車に乗り換え。
フランスの鉄道はパリを中心として整備されており、パリに向かわない地方路線はめちゃくちゃ本数が少ないこともあるためご注意。
田舎景色をのんびり眺めていると30分ほどでコルマール駅に到着。
ごちうさの舞台となっているのは旧市街。駅があるのは新市街のため、住宅街を15分ほど歩いていく。
見えてきた。
いい町並み!
アルザス地方の建築物の特徴として、コロンバージュと呼ばれる、柱や梁を木材で作りその間を石材や煉瓦で詰めるという手法が使われている。
また、建物の上の部分が少しせり出しているのも特徴で、かつて1階部分の面積で税金がかかっていたため税金対策で1階は小さくなったらしい。
ちなみにコロンバージュはフランスというよりはドイツの文化であり、建築物を見てもこの地域の複雑な歴史的、文化的背景が読み取れる。
旧市街はガッツリ観光地となっており、ツアーなどで訪れる観光客も多いようだ。
ちなみにごちうさ目的の人は見かけなかった。というか日本人がいなかった。お盆休みの時期だというのに!
旧市街の範囲は意外と狭く、歩いて見て回るならあまり時間はかからない。
裏路地がとてもいい雰囲気!
水路があるとヨーロッパ感爆上がりな気がする。
ちなみに美術館にふと寄ってみたところ、なんと前回見損ねたゲルニカが展示されていた。なんという偶然!
そして観光地ゆえの人の多さ。中国人団体客もいたが、普通にフランスやドイツから来たと思われる人が大半だった。
結局、人が多いこともありあまり長居はせず、予定よりも一本早い列車で帰ることにした。
結果として7時間ほどの滞在予定だったが4時間で切り上げ。
というのも、ナンシーを完全スルーしているのに今更ながら心が痛んでしまったため、余った時間をそちらに使おうという企みがあったのだ。
帰りはストラスブールで2時間ほど乗り換えの時間があるため散策してみる。途中下車は自由だ。
ストラスブール散策
ストラスブール駅は古い建物を半透明のドームで覆うというなかなか面白い構造をしている。
ここから直線距離でだいたい5kmほどでドイツ国境があるため、全力ダッシュすれば国境で反復横跳びができたのだが今回はやめておいた。
まさかのオタクショップ発見!
大聖堂。めちゃくちゃでかい!
めちゃくちゃ並んでいたため中には入らなかった。
ストラスブールも水路が多い。
ナンシーに戻る
散策を終えて駅に戻り、ナンシー行きの列車に乗車。往路とは違い客車列車だった。
ナンシー散策
ナンシーはアール・ヌーヴォーと呼ばれる芸術運動の発祥地であり、花や植物といった自然の形状や緩やかな曲線による美しい装飾が建物のあちこちに見ることができる。
歴史的にもアルザス地方のドイツ併合によって多くの芸術家がナンシーに逃げてきたということもあり、ドイツ文化の侵略に対する文化的砦にもなっていたそうだ。
アルザス地方の建築物と比べるとやはり全然スタイルが異なっている。
同じ国にも関わらずこんなに文化が違うのかと驚いた。
ドイツ文化とフランス文化が複雑に融合しているアルザス地方、フランス文化を必死に守り抜いたナンシー、どちらの建築物も違ったベクトルで美しさがある。
ちなみに駅前だけはモダニズム全開な建物がある。
中心部は路面電車もバリバリ走っているため便利。
やっぱり裏路地が大好き。
公園の中を孔雀が普通に歩いていた。
夜になるとプロジェクションマッピングが開催されていた。かなり壮大!
さらばナンシー
そして翌日。
もうちょっと滞在したかったが、旅程の都合上朝の便でナンシーを出発。
2階建て車両だった。
目的地はルクセンブルク!
(チケットの行き先を写すはずがお菓子類で見事に隠れるという失態)
そんなわけで、ごちうさの聖地巡礼に加えナンシーに滞在したことで文化の違いが明らかになり、歴史的に複雑に混ざりあった大陸文化を実感することができ、短期間ながらも密度の濃い旅程になった。
……といったところで今回はここまで。
次回はベネルクス三国編!
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