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読書感想『認知症世界の歩き方』

著書名:『認知症世界の歩き方』
著者:筧 裕介
発行:ライツ社

■どんな本?

私自身、認知症の家族を抱えていて、これまで認知症に関連する本は、けっこう難しそうな本が多くて、あまり読んでなかったのですが、この本は、世界の歩き方のような形で、ある意味、面白みをもって認知症の本人の方がどのような気持ちや問題を抱えているのかをイラスト交えながら説明されています。
なので、非常にわかりやすく、読みやすかったです。

口コミの中で、「この本だと解決できない」という声もありましたが、本だけで認知症の対応が解決できることは絶対にないと思います。
ただ、認知症の方が、どんな世界の見え方をするかを少しでも理解することで、認知症の方をサポート、支援する側の方の“気持ち”が軽くなったりする本だと思います。

■気になった言葉

特に「お風呂を嫌がる」のはどうしてなのか?といった記述が、
非常に面白かったです。

家族としては、お風呂は気持ちが良いもの、汚れを洗い流してくれるもの、という思いが当たり前にあると思います。
そんなお風呂を嫌がる理由が思い当たらないので、本人がお風呂に入らなかったら、単純に「なんで?」となります。
ただ、この本では「嫌がる理由は1つではない」という前提で、例えば、
お湯が極端に熱く感じたり、皮膚感覚のトラブルでお湯がぬるっと不快に感じたりといった身体的なトラブルが発生している可能性もあったり、本人が家族に手間をかけさせたくないと思っている、という気持ち的な理由もあったりと実に様々な理由があると記述されています。

認知症だからといって、理由は1つではなく、その人それぞれで思いや理由があったりするので、単純に目からうろこでした。

■こんな人におすすめ

私のように家族で認知症の方がいて、介護や支援、サポートに少しでも課題を感じてたり、少しでも本人の気持ちやモノの見え方を理解したかったら、この本は非常に有用だと思います。

■著者のプロフィール


筧 裕介(かけい ゆうすけ)
特定非営利活動法人イシュープラスデザイン 代表

1975年生。一橋大学社会学部卒業。東京大学大学院工学系研究科修了(工学博士)。慶應義塾大学大学院特任教授。2008年ソーシャルデザインプロジェクトissue+design を設立。以降、社会課題解決のためのデザイン領域の研究、実践に取り組む。2017年より認知症未来共創ハブの設立メンバーとして、認知症のある方が暮らしやすい社会づくりの活動に取り組む。 代表プロジェクトに、東日本大震災のボランティアを支援する「できますゼッケン」、妊娠・出産・育児を支える「親子健康手帳」、300 人の地域住民とともに未来を描く「みんなでつくる総合計画」、認知症とともにより良く生きる未来をつくる「認知症未来共創ハブ」、他。 GOOD DESIGN AWARD 2019 BEST100「SDGs de地方創生」カードゲーム開発者。 日本計画行政学会、学会奨励賞、グッドデザイン賞、D&AD(英)他受賞多数。著書に『地域を変えるデザイン』、『ソーシャルデザイン実践ガイド』、『人口減少×デザイン』、『持続可能な地域のつくりかた』『認知症世界の歩き方』など。

■本の詳細


著書名:『認知症世界の歩き方』
著者:筧 裕介
発行:ライツ社
発売日:2021/9/15

■良い口コミ


・これまでの認知症の本はXXの症状ならXXというような本が多かったですが この本は認知症の方の立場からの世界を説明してるので 本を読んでみて 今までにはない「なるほど!!」と思うことが多いです. 

・家族に半分認知症の人間がいるのだが、この本を読んで、とてもためになった。認知症の方が周りにいる人には必ず読んでもらいたい。字が大きくて非常に読み易い。

・認知症に対する考え方がかわりました。ボケちゃった、じゃなくて、理由がきちんとあるんですよね。
解決策がない!とお怒りの読者さんがいるようですが、解決策が本でまとめられるくらいなら、医者いりません。

■悪い口コミ


・わたしはもう11年越えの認知症の親の面倒を見ています。
図式で分かるみたいに書いて有り、未だに認知症のおかしな言動や行動に戸惑う事も沢山有り、理解してあげられるかもと期待しましたが、たまにイラストが有る位で95%字です。
それも昔の事しか思い出せないとか。自分の物を盗まれたと思い込むとか・・・・・・・これ只の
認知症の誰でもが知っている代表的な症状で、「何も対処法が書かれて居ません。」

・地球の歩き方 みたいなタイトルで、ミステリーバスなんて書かれるとワクワクしますが、内容は大したことありません。文字があちこち散乱し、認知症のことが書かれてありますが、この本をわざわざ買うくらいなら、地域の認知症サポーター養成講座を受けるほうがよい。

■まとめ

「はやくも13万部突破」という帯にあるように、これまでこういった、ある意味ライトな感じでの認知症の本は見なかったので、買ってよかったです。

また、個人的には、この本は何かを解決するための本ではなく、本人を少しでも理解し、少しでも介護や支援、サポートする側の方が笑顔になれるように書いた本なのかなと感じました。

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