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物語の好みについて

ある漫画がバズっていたので読んだ。

おおむね絶賛されていて良い話だなとは思ったけれど、もやもやとした思いも残った。

美しい物語は好きだけれど、人や社会の暗い部分も丁寧に書いているもののほうがより好きだ。

美しいもの、感動するものを書(描)きたいという欲求は誰しも持っているものだし、そういうものを目にすると気持ちが良くなるけれど、気持ちよくなるための仕掛けとして人間を消費していると、なんというか、萎える。

美しい人たちの物語のなかで、顔も名前もなく、ただただネガティブな十字架をシールのように張り付けて小道具のように利用されている人間が出てくると、どうしてもそちらのほうに自分を重ねてしまって、もうその物語が楽しめなくなる。

普段は誰も気にしない、石ころのように扱われている人にも、心があって、物語があるけれど、モブキャストは本筋に関係ないからそこまで描けないのだろうと想像はつく。

でも、キラキラ輝く主人公たちの念入りな描写の一方で、残酷に殺されたり悪を背負わされる社会不適合者は、人ではなく『物』という感じがして、そんな作品が力を持つ社会を生きていくのは怖いなと思うのだ。


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