シェア
J
2023年10月2日 20:24
「ネジ巻きの詩」ぼくのネジは緩んでゆく油断すると緩みっぱなしだから、ぼくはネジを巻く毎朝、毎晩、隔週、隔月、エトセトラ…こっちのネジを巻くのに気をとられるとあっちのネジが緩んでいるすべては同時進行だ巻きそびれ、外れ落ちたネジもあるそういうのって、時が経って気づくもう巻き直せないネジに馳せるセンチメンタルぼくの人生の至るところに満ちている、たくさんのネジぼくは今日も
2019年11月4日 17:42
雨に濡れた路上を行き交う、急ぐ人々年老いた女が膝をつき、ずぶ濡れの画用紙を拾い上げるアジテートのための言葉たちが滲んでかすれているぼくの胸にそれらの言葉は響かないむしろ、女の皮膚に刻まれた深い皺のほうがぼくを怯えさせるのに十分だこの怯えの正体は何か?憐れな女の姿になど、みんな目もくれず通り過ぎる誰にも届くことなく、雨に溶けて流れてゆく女の訴えこんな瞬間を幾千回もく
2019年1月21日 01:40
美しくセンチメンタルなものだけを眺めて生きることができたならもっと品良く繊細にふるまうことができるのに、生気を失ったたくさんの人の手がぼくを摑むものだから、ぼくの口唇はしだいに青くなる。《口を開けば、もうおしまい》きっと重要じゃない情報がまるで酸素のようにぼくの体にもぐりこみ全身をかけ廻る。ぼくの目はさらに過激なポルノグラフィーを求め、とどまることなく動き続ける。安らぎを求
2018年9月17日 03:41
君自身の醜さを何度も修正し、もはや原型をとどめない君。造られたイメージは持てはやされ、ある時には対価すら支払われる。君が君であることを削りとることで、君は高く評価される。君がそれに耐えうる間は、上手く生きていくことができそうだ。しかし、イメージは生き物だ。ある日、ある瞬間、君の生身の肉を噛みちぎり、飼い主だったはずの君の手を離れ、ひとりでに歩き出すかもしれない。その時
2018年7月17日 01:00
きみがいなくなって困るのはきみがぼくの中で占めていた場所が空洞にならないことだ。たとえば、ぼくが食事を作るとき、パソコンに文字を打ち込むとき、きみはひょっこり顔を出す。厄介なことに、きみが立つ場所はくっきりと色濃い。そこに流れる時間は「過去」とは言い難い。あと何度洗い流して、あと何度拭い去れば、その場所は空洞になるのか。答えはわかっている。しかし、ぼくは今夜も同じ問いを一人くり
2018年4月30日 20:58
ゴミ箱に溜まっていく、いくつもの痕。ペットボトルのラベル、丸めたティッシュペーパー、つぶしたヨーグルトの容器。それらは、ぼくが消費した時間の痕だ。この痕を拾い集めたら、ぼくが生きた時間は再現されるのだろうか?そんな疑問がこびりついて、ここ二三日離れない。ただ消費する以外に、きみは生きていない。目の前のゴミは、強迫観念をぼくに植えつける。 #詩 #小説 #ポエム #言葉 #詩作 #写真
2018年1月15日 00:49
君に届かなかった言葉が地面にそっとこぼれ落ちた。自由を感じようとして跳躍したぼくは弧を描いて元の位置に戻ってしまった。このぼくという存在をつなぎとめている重力それは目に見えない透明の鎖なのだろうか、それとも、真綿のようにやさしくぼくを包みこむ透明の羽根なのだろうか。ぼくにはよくわからない。ただ、それは静かにいついかなるときもぼくをつなぎとめ続ける。
2017年11月6日 00:05
2017年10月31日 00:16
しあわせは遠くから眺めるぐらいでちょうどいい近づきすぎるとその光は眩しくてわたしのボロボロの皮膚を照らし出すこの醜い素肌を晒せる相手が現れたならその人を運命の人として大切にしようだけど、いつまで経ってもそんな人は現れなかったわたしの体を欲しいままにした者ですら白日の下でわたしのありのままを見ることはなかったしあわせは遠くから眺めるぐらいでちょうどいい暗がりの中からそっと覗き見
2017年10月6日 21:46
取るに足らないことには目くじらを立てて口汚く責め立てるなのに、ここぞという場面では怯んでしまって言わねばならぬ言葉が出てこないこれじゃ、あべこべだよね。恋人のつれない態度を厳しく糾弾するくせに、自分の身勝手にはそっと目をつむるこれじゃ、あべこべだよね。あるべき姿は、いつも鏡の向こう何だか歯がゆいね。 #詩 #詩作 #写真 #小説 #言葉 #ポエム
2017年9月19日 01:02
ナマケモノよりもナマケモノ。朝から晩まで、画面の上を流れる文字や画像の虜になっている。お前は何がしたいんだ?その問いに即答できる大人になりたかったな。手を伸ばして届く範囲にないものはいらない。このベッドさえあれば、ぼくは安心して眠っていられる。暇や退屈ですら、ぼくを肥やす栄養になるのだから、ぼくは当分餓死することもないだろう。 #詩 #詩作 #写真 #小説 #言葉 #ポエム
2017年8月14日 00:55
好きっていう言葉が嫌い。口にするたび、喉の奥で嘘が絡むのがわかるから。胸のうちで分泌される打算、恐怖、投げやりを飲みこんで声を身にまとった「好き」は加工しまくった自撮り写真のように醜い。きめの粗い凸凹の素肌それが私です。そんなふうに言えたら、好きなんて言葉はいらないのかもしれない。 #詩 #詩作 #写真 #小説 #言葉
2017年8月17日 23:39
青白い画面をつけたり消したりしてきみからの言葉が届くのを待っているぼくが必要としているのは、きみという存在なのか?それすら、こんな夜闇にはあやしいものだふちどってくれるものがなくちゃ、ぼくがここにいることすら浮かび上がらないね結局はぼくの ぼくによる ぼくのための孤独な営みか。四角い画面から放たれる人工的な光だけがぼくにほんの少しの輪郭を与えてくれる #詩 #詩作 #写真 #
2017年8月20日 20:31
酔いそうになるほどいっぱいの人、人。おっちゃんが怒鳴り声をあげて、ベビーカーを押すお母さんが思わずふり返る重そうなスーツケースを引きずる外国人の家族は素知らぬ顔で通り過ぎるこんなにも人であふれているのに、多分この中にいる誰もわたしのことを知らないそれって、何となく気持ちいいわたしは、この人にまみれた空間において孤独だ一人ぼっちなんてたくさんあるその事実はわたしの肩をちょっぴり軽