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すずめの戸締まり

鑑賞:2022年11月@TOHOシネマズ二条

登場人物が少数で、キャラクターの奥行きが掘りすぎていないのが好感触でした。主人公とおばさんの関係が、じわじわ判ってきたり。途中で世話になった人が、小さい子供をシングルマザーで育てている訳あり感とか。なにかしら事情があるけれど、あまり強くアピールしないところが素晴らしい。分かりやすさもあるのに、ゴリ押ししていないのは良心を感じます。

ただ、主人公の奥行きも浅くなっていて、ストーリー展開の妙や、画の圧倒が欲しかったです。たまたま女子高校生が自転車通学中に見かけたイケメンが気になって、廃墟にたどり着き、謎のどこでもドアと、言葉を話す謎の小動物に出会う。どこでもドア風の戸を巡ってひと波乱が起こり、作品タイトルへ。いい意味で強引、いい意味でまとまっているのですが、それ面白いかなあ…。妙に淡泊で、冒頭からコッテリじゃないのは嬉しい部分でもあるのですが、いざサッパリしたテイストで始まると、それはそれで物足りない。無いものねだりになってしまいました。

ここからは、ちょっと揶揄した感じの語り口となります。

女子高生meetsイケメン大学生(ワケアリ)。謎のどこでもドアが開けっぱなしだと、災いをもたらす。イケメン大学生がドアを締めるために全国を飛び回る。ただドアを締めればいいのではない。ドアが開いていると、巨大チンアナゴ風の謎の物体が出てきて、ぐんぐん伸びちゃうんです。巨大チンアナゴ風の謎の物体を封じるために、何か特殊なクサビを打つんですが、これがまた言葉をしゃべる猫風の小動物(仮にキュウベエと呼びます)に化けてしまって、逃亡。その一部始終に主人公の女子高生が巻き込まれるのです。このキュウベエが、イケメン大学生に呪いをかけ、小さい子供用の椅子に化けさせられてしまいます。この、女子高生・イケメン(動く椅子)・キュウベエ(猫化したクサビ)の3者でストーリーの前半戦を引っ張ります。
第1使徒(巨大チンアナゴ風の謎の物体)は、女子高生の通学路近くにある廃墟で、なんとか戸締り成功。
しかし、逃げるキュウベエ、追うイケメン。イケメンをサポートする女子高生。なかば家出のように九州から四国へ渡る。
第2使徒(巨大チンアナゴ風の謎の物体)は、山間の廃墟から出現。偶然居合わせた旅館の娘に少し手伝ってもらって、なんとか戸締り成功。旅館で御飯をいただくなど懇意にしてもらう。しかしキュウベエは謎の猫風生物ということもあって、SNSで目撃情報が話題になる。この目撃情報を頼りに、今度は神戸を目指してヒッチハイク。ワケあり風のおばさんがクルマに乗せてくれる。
第3使徒(巨大チンアナゴ風の謎の物体)は、これまた廃墟化していた元遊園地の観覧車ドアから出現。これもなんとか戸締り成功。ワケありのおばさんがスナックで世話してくれるものの、キュウベエが現れ、追跡再開。なんかよくわからない理由で東京まで移動する。
第4使徒(巨大チンアナゴ風の謎の物体)は、御茶ノ水の地下鉄丸ノ内線トンネルから登場。戸じゃないぞ。丸ノ内線の先にはよくわからない事情で地下空間があって、そこに戸がありました。戸締り成功するんですけれど、なんとイケメン(動く椅子)が呪われていたせいで、戸締り役の特殊クサビをイケメンがやらされることになり、チンアナゴを鎮める物体となってしまいます。女子高生は、イケメンをチンアナゴから解放するために、奔走します。イケメンの親族や友人と出会い、行くべき場所を解き明かします。ここでようやく九州から後見人として育ててきたおばさんが御茶ノ水で合流。GPSってスゴイ。ここから東北へクルマで向かいます。イケメンの友人・おばさん・キュウベエ・女子高生の御一行様です。途中でおばさんがBIGキュウベエを召喚する波乱が起こったりするのですが、なんとか女子高生が幼いころに住んでいた場所にたどり着きます。そこには、やはり謎のどこでもドアが置いてあります。誰が置いたんでしょうか。なんだかよくわからない流れで女子高生は戸を開けて、チンアナゴからイケメンを救う謎ワールドへ飛び込みます。ダイブです。
第5使徒(以下略)。イケメンを救出成功。よかったね!

オープニングとエンディングが、やはりミュージックビデオのような仕立てで、ここが見どころなんでしょう。アート作品としては良いのかもしれませんが、面白いのかなあ…。淡泊でライトな仕上がりですが、汲み取ろうとすると、いろいろな文脈が拾えるようにしてあります。でも、それは知らなければ汲み取れないものが多いので、深堀りできるようで、そんなに厚みはありません。ファッションアニメとでも呼ぶジャンルなのかもしれません。


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