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映画のDVDを買ったのは初めて

Amazonで注文していた、映画「コーヒー&シガレッツ」のDVDが届いたので、早速鑑賞した。

ジム・ジャームッシュ監督による本作は、2003年公開のアメリカ映画で、11本の短編で構成されているオムニバス作品である。喫茶店に居合わせた二人の人物が、コーヒー(時に紅茶)を飲みながら、タバコをふかして会話を繰り広げるという内容。ストーリーらしいストーリーも、大きな展開も起伏もなく、ただただ何気ない会話だけで作品が成り立っている。それだけの内容なのに、画面から目を離すことなくずっと観ていられる一本である。

ジム・ジャームッシュにそのような意図があるかはわからないが、この作品は観客をハラハラさせる派手な映画をフリにしているように感じた。世の中には、現実ではまず見られない光景を提供する、刺激的な映画で溢れている。映画とは、そういったファンタジーな世界を描くものだという先入観があるからこそ、コーヒー&シガレッツのような、現実離れした派手な描写が一切含まれていない作品が成り立っているのだと思う。

実は、私が本作を観るのはこれで二度目。最初に観たのは大学生の時で、映画サークルに入ったはいいものの、映画の知識が無かったので、TSUTAYAで名作や話題作を借りまくっている時期だった。

その時は、映画に詳しくない自分でも知っているタイトルを中心に借りていた。当時、コーヒー&シガレッツは名前すら知らなかったが、何かのきっかけで手に取ってレンタルした。映画を楽しむことに関してはまだ初心者だった私だが「こういう映画もあるんだ、なんとなく良いな」と思ったことは覚えている。

今回再び鑑賞して、前回観た時より、作品の良さを感じ取れるようになった気がした。数多くの映画を観ている人ほど、本作の凄さがよくわかると思う。普通の人物が座って会話をするだけの映画が公開されたら、もし自分が映画監督なら「やられた!」と思うだろう。

本作で特に印象的だったのは、会話が途切れて間が空いたシーンだ。普通の映画で間が空いたら、次のシーンやセリフは大体重要なものになる。しかし、本作では間が空いた直後のセリフは、取るに足らない普通のものだった。間を空けるというのは、観客を引き込み期待させるということに繋がる。間を空けてから重要では無いセリフを差し込むのは、一歩間違えると肩すかしを食らわせることになりそうだが、不思議とそうはならなかった。むしろ、期待通りの展開が待ち受けていたように思えた。

繰り返しになるが、本作では派手な展開は一切ない。観る側の感情を揺さぶるような会話も存在しない。笑わせよう、泣かせようといった、そういう狙いのない会話が延々続いていく。こういった、意味を極限まで抑えた平坦な会話劇は、書こうと思ってもなかなか書けない。それでいて、会話のリズムはそのままに、要所要所でユーモアによるくすぐりを入れてくるのがニクい。

もう一つ凄いなと思ったことを書く。もし自分だったら、散々平凡な会話を見せた後で、最後の11本目に派手な展開の話を置くような真似をするかもしれない。本作は、そういった今までの自分をフリに使うようなこともしない。喫茶店で2人の人物が何気ない会話を見せるというコンセプトを、最後までぶれずに忠実に描いている。

せっかく円盤を購入したので、会話の内容を覚えるくらい観ようと思っている。今度は、同じくジム・ジャームッシュ作品である「パターソン」も購入したい。

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