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リモートワークで、「秒単位で仕事ぶりを監視」されるというディストピア

 恐ろしいものを見た。在宅で働く従業員の挙動を、Webカメラで強制的に撮影するシステム。元々は監視のために作られたものではないらしいが、導入する企業の中には、リモート環境で仕事をする従業員がサボってないかを、上司がチェックする目的の利用もあるという。

 四六時中ずっと、真正面のカメラで顔を撮られながら仕事をするって、はたしてどんな気持ちなんだろうか。


リモートワークでは、メンバー全員が自主的にパフォーマンスを出し続け、あとは成果で評価されるのが理想とされる。

 しかし、それを完璧に実践できている企業は非常に少ない。そもそも、多くの企業の評価制度やマネジメントスタイルがそのようになっていなかったし、働く方も、突然「今日から成果だけを見ます」と言われても、これまでそんな風にやってこなかったので戸惑うばかりだ。

 完璧に自己マネジメントができて、在宅でも黙々と成果を出せるような人は、日本の大企業、中小企業全体だとほんの1割以下とかしかいないのではないだろうか。理想じゃなく現実的にみるとそう思ってしまう。

 元々そういうマネジメントスタイルだった外資系企業やリモートワークが中心のスタートアップなら適応も可能だろうが、多くの現場ではまだリモートのマネジメントに混乱が続いている。上記のシステムは、「リアルでやってたマイクロマネジメントを、強制的にツールに落とし込んでみた」企業の試みの例である。従業員は「時間も含め、細かく管理するもの」という思想の表れだろう。


 また、先日のNHKでは、200人規模のある都内IT企業の事例が紹介されていた。リモートで「勤怠管理」をするためのシステムを導入し、運用している。

 パソコンのデスクトップ上に、「着席」「退席」というボタンがあり、テレワークを行う社員が業務の開始時と終了時にそれぞれクリックするだけで、自動で日々の勤務時間を管理してくれます。また、昼食などで休憩に入るときも、そのつど、「退席」と「着席」のボタンをクリックすることで、休憩時間も1秒単位で記録されます。
 記録された内容はシステム上で管理され、会社の上司は、部下が今働いているのかどうかや、月の勤務時間がどれくらいになっているかを確認できます。

引用:NHKニュースサイト(太字は筆者)

 仕事の効率や成果ではなく、まずは「席に座っているかどうか」にものすごく重点が置かれているのがわかる思想だ。「机に座っていない」= 「サボっていると思われても仕方がない」なのだろう。トイレに行く回数が多いとか、長いとか、そういうこともすべてバレてしまうのだろうか


 そしてこのシステムの機能の説明は次のように続く。(引用同じ)

 さらに、このシステムでは、社員が「着席」のボタンを押して仕事をしている間の、パソコンの画面がランダムに撮影され、上司に送信される仕組みもあります。いつ画面が撮影されるか社員には分かりません
 会社では、自宅で働く社員に一定の緊張感を持ってもらう効果があると考えています。また、上司は送信されてくる画面を見れば、部下が今どんな作業をしているか把握ができます。


 恐ろしい。「抜き打ち」っていうのは、高校生くらいの時に「抜き打ちテスト」とかはやらされたけど、大人になってからはあまり馴染みのない言葉だった。しかし、このシステムでは

 「抜き打ち画面スクリーンショット」→「上司に送信」。 

 という機能。すごい。「君のことなどまるきり信用してないから、しょうがないよね」というメッセージがひしひしと伝わってくるようだ。


 先日別の記事で書いたように、リモートワークで最も大切にすべき前提は、まず働くメンバーの「心理的安全性」を確保することだと思ってる。


 ところが、過度な管理システムの導入や監視体制を強化することは、逆にメンバーの心理的安全性を奪ってしまう結果になる


 リモート環境にあっても、会社とメンバーのつながり、そしてメンバー同士のつながりを保つことは非常に重要だ。しかし、その根底にある姿勢、そしてやり方がとても大切なことは言うまでもない。

 打ち合わせをできるだけ細やかにやっていく、テキストメッセージのやり取りを工夫する、そうなどしてコミュニケーションの総量を増やすことによって、上司は部下の心理的状況や仕事の進捗具合を把握できるし、またそれに応じた適切なサポートもできる。

 しかしメンバーに対し、「とりあえず席に座ってるかを撮影してチェック」「抜き打ちで作業画面を撮影してチェック」などのやり方だと、働くほうが会社のことを信頼し、安心して仕事できるとは到底思えない

 問題なのは、そういう仕組みを強化すればするほど、「自律的で優秀なメンバーから先に会社を見限ってしまう」ことだ。実際、リモート環境になってから、会社に対して急速に嫌気がさしてきている人の声も増え始めている。

 

 まずはメンバーの心理的安全性を最大限に確保し、そしてお互いが信頼し、最高の「成果」を上げられる環境づくりを進める。こうした考え方が、いまとても必要とされている。


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