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自社でプライベートカンファレンスを企画する際に押さえておくべき11のポイント

こんにちは、ユーザベースの酒居です。

最近プライベートカンファレンス(大規模な自社イベント)を企画運営する企業さんが増えているなと思ってます。
ぼくも大規模イベントの企画運営に携わってきた者として、その企画担当者の辛さと大変さが痛いほどわかります。
なので、ぼくがえらそうに話せることはありませんが、自らの拙い経験から少しでもご参考になることがあればなと思い、noteを書いてみました。

今回は、プライベートカンファレンスを開催しようと決めたとき、そもそも何から手をつけたらいいのかわからないとよく聞くようになったので、最初に考えておきたいポイントを書こうと思います。

①目的を決める:なぜやるのか?

そもそもイベントを開催する目的を決めることが、一番大切です。

近年自社主催のプライベートカンファレンス(プライベートイベント)を企画・開催する企業が増えてきています。特にSaaS企業は、結構色んな企業がカンファレンスイベントをやってますよね。

時代の潮流としても、2020年の東京オリンピックを控え、大きなイベント会場が埋まり始め、展示会などが減少するのではないかということも言われてます。その分のリソース(資本、人)やリード(見込み客)確保を自社イベントにあてようという企業も多いのかなと思います。

しかし、一番大きな理由としては、自社の「ブランディング」ということが挙げられるでしょう。
1,000人規模、数千人規模のイベントを開催できるほどの企業であるということは、言わずもがなで認知拡大やブランディング向上につなげることができるという考えもあると思います。

また、自社のメンバーに対しても良い効果を与えられます。企画運営メンバーは準備段階からかなりエグいオペレーションの仕事があり、試練の日々となりますが、当日参加するメンバーにはお祭りの雰囲気を事前から作り出し、みんなのモチベーション向上にもつながります。実際に当日は運営メンバーは大変だけど、とても楽しいです。

注意しないといけないことは、目的に色んなことを盛り込みすぎないこと
できれば開催目的は一つに絞るべきだと思ってます。

しかし、マーケからすればリード獲得に使いたいでしょうし、営業からすれば商談を進める武器にしたいですし、広報からしたら会社のアピール、ブランディングに使いたい、という各部門ごとにそれぞれの思惑がありますよね。

なので、どうしてもすべてを叶える目的をつくろうとしちゃうのですが、そもそもこれは何のためにやるのか、何で自社がこれをやるのか、このイベント参加者や関係者に何を得てもらいたいのか、その根幹となる部分は経営層も合意の上で、しっかり全社的にグリップをとるべきだと思います。
そうしないと、イベント終了後に振り返って「大変だったけど、結局これって何で開催したんだっけ…?」みたいなことになりかねません。

特に経営者自体が、「なぜやるのか」を自分自身で認識して、メンバーに伝えていくことが大切だと思います。そうすれば、イベントを通して、社内に同じ方向感と団結力をつくることにつなげていくことができるんじゃないかと思ってます。

②テーマをつくる:これが決まらなければ始まらない

目的が何より重要と書きましたが、それの次、それと同じくらい大切なことが、カンファレンスの「テーマ」です。

このイベントは何のイベントなのか、そのイメージや想いを社外へ発信し、集客していくために重要で、みんなの「旗」になります。

「いや、テーマなんて適当に決めれば良いじゃん」って思われるかもしれませんが、このテーマを適当に決めてしまうのは、思いの外とてもクリティカルです。
なぜなら、自社のプライベートカンファレンスということは、それだけ費用や人的リソースをかけても伝えたい、自社のビジョンや想いを体現したものにすることが重要です。

さらに、カンファレンスを一度開催した場合、ほとんどの場合、継続的に今後も毎年などの頻度で開催していくことになります。そうなると、毎年のテーマの言葉は変われど、そのイベントシリーズを通して伝えたいことは一気通貫しておいた方が、ブランディング向上や印象付けにつながります。

例えば、Sansanでは毎年数千人規模のカンファレンスを開催されていますが、テーマの根底には「働き方」というキーワードがあり、Sansanが体現したいミッションを形創るものが選ばれています。そして、「働き方」という観点をぶらさずに、毎年の言葉が変わっています。

ビジョンを大切にしている企業なら尚更、テーマには時間をかけてしっかり納得いくものを選ぶべきだと思います。

さらに、このテーマ決定が重要なのは、何よりその後のイベント企画に大きく関わってくるからです。
そもそもテーマが決まらなければ、どういう観点で登壇者を選べばいいかも決められませんし、どういう層を集めたいかも決められません。つまり、企画自体がスタートできないんです。
なので、テーマは時間を使うべきところですが、一方で企画のスケジュールを考えて、期限を設けることも大切だと思います。

③キービジュアルを決める:カンファレンスの象徴

キービジュアルとはそのイベントを象徴するピクチャーです。
これはマスト事項ではありませんが、イベントの想いを表したモチーフとして機能し、イベントを来場者に印象づける効果があります。

社内でデザイナーを抱えてらっしゃる企業であれば、自社でつくることも可能だと思いますが、キービジュアルはブランディングに直結する諸刃の剣のような効果があるので、慎重に徹底して良いクリエイティブをつくった方が良いです。なので、キービジュアルの制作はデザイン会社に依頼するという企業も多いです。

ちなみに、キービジュアルの使い方として注意したほうが良いことがあります。それは、キービジュアルを「使いすぎない」こと。

キービジュアルはインパクトが強い分、使いすぎると目立ちすぎて逆にちゃちくなってしまいます。そうなると逆にブランディング破損につながりかねません。
しかし、キービジュアルが完成すると、どうしても嬉しくなって、会場内や、Tシャツやパンフレット、ギブアウェイ(配布グッズ)など、さまざまな場所に掲載したくなります。でも、そこをぐっと我慢して、使いすぎを制限することが肝要です。

④集客人数を決める:何人に来てほしいのか

そもそもどうやって適切な人数を決めるか?
これはもちろん予算との相談もありますが、一番はそもそも何人を集めたいか、というところから発想していくのが良いんじゃないかと思います。

例えば、「1,500人集めよう!」と仮で決めれば、じゃあどこの会場が使えるだろう、何のコンテンツなら来てくれるだろう、そもそも自社の現状にとってそれだけの人の集客が必要だろうか、と色んな観点からそれをやるべきかどうかが見えてきます。
仮置きでまずは考えていくことが良いと思います。

⑤会場を決める:ここから本当のスタート

目的を決めて、テーマを決めて、集客目標を決めたら、いよいよ行動に入ります。それが「会場選び」です。イベント担当者としての外部アクションはここから始まります。(イベント会社選定も同時進行)

会場選びは、開催目的と集客規模とを加味して考えていく必要があります。目的が自社のブランディングであり、1,000人規模でのイベントを開催したいということになれば、やはりホテルの宴会場は候補に入るかと思います。

一般的なイベントホールと比較して、ホテルのメリットは何よりも「ホスピタリティ(おもてなし)」に優れていること。
会場の装飾や導線もそうですが、スタッフの方々の気遣いや気配りのレベルも高いです。また、その後のカクテルパーティーや懇親会も滞りなく進みます。

なので、おもてなしの精神を重視して、自社のブランディングを高めたいというのとであれば、ホテルは候補としてアリだと思います。ただ、デメリットとしては、その分会場費用は高額の傾向があるのでここは予算との相談もありますね。

また、もう一点会場を選定する際に考えておくのは、分科会などのメイン会場とは別の会場も必要かどうかです。基調講演セッション以外にも、別会場で違うセッションを同時進行させるなら、複数の会場があるか、その導線がわかりやすかも判断基準になります。

さらに言えば、あとで紹介するスポンサーさんの有無によっても変わります。スポンサーがいるなら、会場内に展示ブースを設けるのかどうか、そうなると、ホワイエ(広い通路部分)の広さなどもチェックした方が良いです。書き出すときりがないので、この辺でやめときますね(笑)

ただ、忘れてはいけないのは目的をぶらさないこと。
おもてなしの心をもって紳士的な雰囲気を伝えたいのに、ライヴハウスみたいなホールをレンタルするとその雰囲気だけで、全く意図は伝わらなくなります。

ちなみに、イベント会場を選定する際は、必ず見学に行った方がいいです。天井の高さや搬入経路、ホワイエの広さ、喫煙場所、入り口からの導線などなど、思いつくところをしっかりチェックして、当日のイメージを作っていくことが大切だと思います。

⑥講演登壇者を決める:登壇者が集客の成否を決める

集客の成否、そしてイベントの成否さえも決めるといっても過言ではないのが、「講演登壇者」です。この登壇者候補を選定し、交渉していく作業こそ、イベントの要であり、最も時間を費やすところになります。

講演者はやはり認知があり、人気がある人は集客力があります。その人の話を聞きたいからイベントに行くという人もたくさんいます。

もちろん有名企業ですでに認知がある企業がカンファレンスを開催する場合、企業の知名度がある分、人は集まりやすくなります。しかし、登壇者をうまく選定し、知名度があり、当日のコンテンツもおもしろい登壇者に登壇していただけることになれば、たとえ自社の知名度が低かったとしても、集客を伸ばすことは可能です。

ここで大切になることは、イベントのテーマに合った登壇者を選ぶこと。いくら人気があるからとはいえ、イベントの趣旨と全く異なる人に依頼をすると、そもそも何のためにイベントを開催するのかという目的がズレてしまいますし、本当に集めたいターゲット層を集められず、登壇者の話を聴講したいだけの人を集めてしまうことになってしまいます。

それを防ぐためにも、常にイベントの目的を意識しながらも、その中で「自分だったら誰の話を聴きたいか」「誰の話がお客さんに感動を持ってもらえるのか」という視点で登壇者候補を考えていくことが大切だ思います。

⑦集客方法:どうやって集客するか

そうはいうものの、数百人、数千人をどうやって集めるかっていう集客が気になるとこですよね。

集客の手段は、通常のマーケティング活動時と同様に考えていくことが良いかと思います。
つまり、広告、自然検索、SNS、メールなどが代表的な集客チャネルでしょう。

やってみて一番効果的だと思うのは、Facebook広告です。
特に来てほしい方の属性にターゲットを特定して配信できるので、他の広告に比べて比較的安く集客できます。

また、目的にもよりますが、集客効率が圧倒的に良いのはやっぱりハウスリード(社内に保有している見込み顧客リスト)です。
リサイクルに回ってるリードやまだコンタクトをつくれていない企業でも、カンファレンスであれば相手から来てくださることも多いです。ぜひここも大きな集客チャネルとして活用したいところです。

それ以外にも、メルマガやDMなど集客方法はさまざまあります。自社サービスの集客と同じですが、誰を対象として集めたいのか、ということを明確にして、その人たちが集まりそうな場所に出していくことが効果的です。
予想獲得単価を決め、各集客チャネルの状況を監視して適時最適化していくことが重要になります。

ちなみに、メルマガは媒体によって配信できる属性が異なっていますので、日頃からどんな媒体があるか情報収集しておくことも良いかと思います。Tipsでいうと、メルマガ集客をやるなら、固定金額ではなく、コミット制(最低何人集客するみたいな)の配信形態がオススメです。

あと、「集客開始の時期はいつがいいのか?」っていう疑問もあるかと思いますが、基本的には1〜1.5ヶ月前から集客するのが良いと思います。それ以前になると、イベント自体が先になりすぎて、忘れられてしまい、当日の歩留まりが低くなってしまう可能性があります。焦らず、適切な時期にスタートすることがポイントですね。

⑧VIPの有無:マーケ・営業の武器としても活用する

カンファレンスは、普段営業活動では出会えないレイヤーの方々と接触を持てるチャンスです。普段なかなかコンタクトをつくれていない企業の経営者や役員の方が聴きたいセッションをつくれば、大手企業の経営層の方々などもご来場いただき、接触の機会をつくることができます。

そこでオススメしたいのが、「VIP枠」を設けること。
VIPは特別ゲストとして、専用のチケットを発行し、招待コードを申し込み時に記入してもらうなどしてご来場いただきます。

当日は基調講演(キーノート)の良い席をVIP席として確保しておき、それを特権にするということがオススメです。また、VIPだけが利用できるVIPラウンジを別途会場内に設けるなども効果的です。

注意点として、VIPを増やしすぎないこと。
VIPだらけになると、そもそもの特別感がなくなりますし、ラウンジが混んだり、VIP席に座れないとなると逆効果になります。VIPゲストは全体の10%に留めるのが良いと思います。

VIPチケットを別途綺麗な高級紙で作成し、営業のツールとして、またはマーケティングでのリードジェネレーション(見込み顧客をつくる)の手段としても活用できます。

⑨参加料:無料か?有料か?

これはカンファレンス開催意図次第なので、なんとも言えないところですが、当たり前ですが、無料の方が集客は楽になります。しかし、その分費用は自社負担かスポンサー費用でまかなう形になります。

一方、カンファレンスの性質上、マーケのリード創出につなげて採算を合わせようというのは結構難しいんじゃないかと思ってます。
それであれば、参加を有料化にすることも一案だと思います。実際に最近は有料イベントも結構増えてきてます。そういう我々ユーザベース も今年2018年9月19日に行うユーザベースカンファレンスは有料イベントにしています。

有料イベントにはその他にもメリットがあります。
何よりも熱量が高い層が集まります。お金を払ってでも参加したいという方が来てくださるので、来場者を自動的にスクリーニングできるということありますし、当日の歩留まり(事前申込者に対する当日来場者比率)は無料に比べて高まります。
さらに、代償を払っている分、何かをしっかり得ようと思ってくださるので、そこからのつながりをつくることにも効果的です。

⑩スポンサーの有無:収益だけでなく運営面も考える

自社だけでイベント費用をまかなうのが厳しければ、スポンサーを募ることも一つの手です。

しかし、注意することが一つあります。スポンサーを募るのであれば、スポンサー営業・対応者は、全体企画運営者となるべく別の方をアサインすべきです。

スポンサーのやりとりは予想以上に複雑ですし、当日のフローやブース、セッションの調整など、やることはスポンサー一社だけでもてんこ盛りです。なので、全体企画運営者がそれを兼務して、さらにスポンサー依頼の営業までやろうとすると、ほぼ確実にまわりません。

イベントは側から見ると何がどう忙しいのかわかりづらいので、担当者本人以外がジャッジするのは難しかったりしますが、適切な人的リソースをイベントにはかけるべきだと思います。

⑪イベント会社の選定:コンペで決める

大規模イベントをやる場合、自社だけではどうしても回しきれない部分があるので、イベント会社に依頼して、一緒に企画を進めていくことが一般的です。

イベント会社は、イベント終了・イベント後フォローまでタッグを組む戦友となります。なので、慎重に戦友は選ぶべきです。

元々仲が良く信頼できるイベント会社があるなら、そこに依頼するのも良いですが、初めて大規模イベントを企画するなら、イベント会社をいくつか選定してコンペで判断するのが良いと思います。

その中で注意したいことは、コンペでくる先方の担当者は営業マンで、実際の運営担当者は別でいることが多い、ということです。
営業マンからはとても良い印象を受けて、ぜひここと一緒にやりたい!と思って契約しても、実際の担当者は全く別で全然思ったように進まない…ということにもなりかねません。

なので、コンペでは先方の提案力だけでなく、結局誰が担当してくれるのかをしっかり聞き、実際にその人と会って判断する方がいいと思います。イベント会社は企業のネームバリューではなく、担当者の能力、その人との相性もしっかり見てきめることがオススメです。

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回は11のポイントをご紹介しましたが、実はこれ以外にも決めないといけないことってまだまだあるんですよね(笑)そもそも日程や開催時間によっても、会場の予約が変わってきますし。「いや、ここも重要でしょ!」っていうことあればぜひぜひ言ってください。

この後も、運営事務局をどうするか、LPの制作、イベントのPR戦略などなど、イベント担当者として決めないといけないこと、やらないといけないことは続々と登場します。

イベント担当者って社内外のハブ的な役割を果たし、みんなの調整役としてオペレーションを期限までにゴリゴリ回していかなければいけません。その戦いはとても孤独ですし、過酷です。でも、その分得られることも多く、デカイことを創り上げる喜びも一潮です。めちゃめちゃ辛いけど、めちゃめちゃ楽しいことをやりましょう!

この記事が、カンファレンスを自社で始めることを検討している企業の方の少しでもお役に立てば光栄です。では!

ぼくのイベント企画経験について

ぼくは前職でクラウド名刺管理サービスSansanという会社におりまして、既存セールスを経験した後に、マーケティング部に異動しました。そしてオフラインマーケ部門で、自社主催の数千人規模の大型イベント・カンファレンスの企画運営を担当しました。

それまで数十人規模程度の小規模イベントは企画運営した経験がありましたが、いきなりアサインを受け、最初は右も左もわからない中で、周りの方々に助けていただきながら実践を通して学んでいきました。
東京での数千人イベントや関西、名古屋、福岡など、地方での数百、千人イベントまで、さまざまなイベントに携わらせていただきました。
本当に大変な日々でしたが、貴重な経験をさせてもらい、今となっては良い思い出です。

そして、今はユーザベースグループの新規事業であるFORCASという会社で、マーケティングチームを担当しています。大規模イベントを経験した後、イベントはマーケティングにおいてとても有効な手段であることを実感し、今も週1,2のペースで数十人から二百人程度のイベントをチームメンバーと一緒に企画・開催しています。
また、ユーザベースも今月9月にプライベートカンファレンスを企画しており、ぼくもFORCASパートの担当としてかかわらせてもらってます。

読んでくださってありがとうございます。まだまだ試行錯誤の連続ながら、自分たちの日々の取組みから得た気づきをシェアしていきたいと思っています。