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読書記録:『怒鳴るだけのざんねんコーチにならないためのオランダ式サッカー分析』

著者
白井裕之
18歳から指導者としての活動をスタート。24歳でオランダに渡り、アマチュアチームで監督経験を積む。現在はアヤックスのワールドコーチングコンサルタントとして、外国のサッカー協会やクラブとのパートナーシップ下での活動や選手のスカウティングを担当している。また、2016年10月からオランダ代表U–13・14・15Futureチームの専属アナリストも務めている。オランダサッカー協会指導者ライセンスTrainer/coach 3, 2(UEFA C, B)を取得。(著書プロフィール欄より抜粋)

概要

 「怒鳴る」だけのお気持ちコーチングや、根性論が未だに根強い日本サッカー(スポーツ)界。解説者は自分のプレー経験を基にした主観をベースにした感想家に終始し、ピッチ上で起きた現象に触れることが少ないことからも、サッカーを客観的に観ることの重要さが浸透していないことが伺える。オランダでは客観的な分析からプレーの評価、改善が求められ、「怒鳴り散らす=無能」と見なされるそうだ。
 客観的な判断を下すためには、サッカーという“ゲーム”において目的である勝利へ向けたゲームモデルの構築、トレーニングが不可欠である。その為の分析の基本がまとめられた1冊。指導者はもちろん、部活の指導者なしで練習を考えなければいけない中高生に是非読んで欲しい。また、サッカーの試合を戦略的・戦術的に観ていくための参考や、トップレベルの分析ノウハウに興味のある方にもおすすめ。

コミュニケーション、日本との認識の違い

オランダで定義されているコミュニケーションは、日本的な考え方に寄せれば試合中の「戦術」に近い意味で使われます。自分と味方の選手がどう関わって動いているか、チームの動きの中で自分はどう関わっていけばいいのか。設定された原則をもとに、選手が適切なポジションを取り、お互いに協力ししながらチームファンクションを進める、「チーム全体のインサイト」のことだと思ってください。(pp94‐96)

 一方、日本でコミュニケーションと言えば、「声を出せ」「話し合え」といった抽象的なものが多いと本書でも指摘されている。“コミュニケーション”の曖昧さと言えば、ハリルホジッチ事変における不明瞭さ、不可解さが記憶に新しい。引用したのはオランダでの定義のため、フランスやその他の欧州でも全く同じ文脈が通用するかはわからないが、「コミュニケーション不足」の持つ意味合いの日本と欧州での乖離が怒りを助長したのかもしれない。

コミュニケーションの捉え方の違い

 この他、日本における“自分たちのサッカー”や、プレー原則の欠如(主にトランジション時)など興味深い指摘がされている。決して「欧州最高!日本は遅れている!」という内容でもなく、あくまで客観的な考察がなされたフットボリスタらしい内容となっている。また、分析を上達するコツとして「試合で起きていることを声に出しながら観てみる」が挙げられている。冒頭で解説者を揶揄するような事を書いたが、コレが実際非常に難しい。しかし、難しいからこそプロとしての違いを出している方々が報われるようになっていって欲しいものだ。

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