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【読書感想文】『歴史思考』深井龍之介 著(ダイヤモンド社) 

 『歴史思考』というタイトルから難解な話題の本かと身構えてしまいましたが、違いました。笑いながら読めて、しかも深い話が詰まっている本でした。歴史上の偉人達が多く登場してきますが、著者の切り口が面白くて、大局的な視点を持つことができ、歴史を学ぶ意義を再認識することができました。

 歴史を振り返りながら、価値観には「絶対」がないということが良くわかりました。現代社会の常識は、過去の世界では非常識になる場合や未来の世界でも非常識になってしまう可能性があることに気づかされました。著者は「社会の価値観は変わるもの」だから、悩みや苦しみの原因になる特定の価値観に縛られないようにするために歴史から学ぶことを薦めています。そして、価値観の指針を得るためには「古典から学ぶ」という手法をオススメしていました。我々が遭遇する悩みは、実は昔の人たちがあらかた考え尽くしているそうです。直接的な答えは得られないかもしれないけど、類似例は見つかる可能性が高いとのこと。人間社会で生きていく上での悩みは、今も昔もそんなに変わらないのかもしれないと思いました。自分が「悩み」と考えていることは、実は捉え方を変えると「悩み」でもなんでもない可能性があるとのことです。ある事象の問題を「問題として認識」できた時点で、何らかの価値観の上で判断しているのだと思います。あとは意識的に、「問題として認識」できる範囲を広げたり変えたりできるかどうか。歴史を知り、特定の価値観や考え方から自由になるための教養を身につけることができれば、精神状態も安定し、生きることが楽になっていくのだと学びました。人類の歴史の重みを考えると、瞬間的な悩みなんて、ほぼどうでも良いような気持になってきます。

 本書では歴史上の偉人達として、チンギス・カン、イエス・キリスト、孔子、マハトマ・ガンディ、カーネル・サンダース、ヘレン・ケラー、アン・サリヴァン、武則天などが登場してきます。後世に多大な影響を及ぼしている人達ですが、彼ら・彼女らの生きざまを知ることで、短期的な視点で人間を評価しても仕方ないなと思いました。著者の「歴史にとってはある人が「存在すること」が決定的な意味を持つ」という主張に勇気づけられました。「存在」が複雑な連鎖反応を生み、後世では歴史的な偉業と称えられることが生じる可能性があるということがよくわかりました。生きている間の評価と、亡くなった後の評価は必ずしも相関しないということが歴史的な事実からわかりました。

 カーネル・サンダースの生涯を知ることで、不屈の精神を持つことの重要さと、人生を長期的な視点で捉えていくことの大切さを学びました。これからの社会環境の変化で私の人生に浮き沈みが生じるかもしれませんが、カーネル・サンダースに思いを馳せると乗り越えていけそうな気がします。挫けそうになったら、ケンタッキーでフライドチキンを食べて、カーネル・サンダースの生涯を思い出そうと思いました。

 歴史は点として存在するのではなくて、点と点が結ばれている因果関係があることがわかりました。人類の歴史の中では色々な苦難があったと思います。でも、その苦難を乗り越えて我々はまだ存在しています。先人達の知恵を借りれるところはできるだけ借りて、この変化の多い現代社会を乗り越えていこうと思いました。歴史を学び、俯瞰的な視点から物事に対処できるようになれば、よりよく生きやすいようになると思いました。素敵な本をありがとうございました。 

#読書の秋2022
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