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1977年生まれ。東京のはずれ、野川周縁に棲息。書店勤め。職場は西荻。ソーダ書房社長。…

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1977年生まれ。東京のはずれ、野川周縁に棲息。書店勤め。職場は西荻。ソーダ書房社長。カニ文庫そうじ係。十七時退勤社顧問。八画文化会館社外営業部長。立川読書倶楽部幽霊部員。偏愛詩歌倶楽部サブホスト。花本武物産展代表。

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    2006年6月~2008年7月まで新文化オンラインで連載したコラムです。

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佐久間薫『お家、見せてもらっていいですか?』書評

 家に興味のない人はいない。家が気になる。他人の家が異様に気になる。散歩しながら見るものと言ったら家しかない。家ばっかり見てる。憧れなのだろう。人間はまあむきだしで生きているから、守られたいと常々おもって暮らす。そこに必要なのが家だ。家は人間を守るし、人間は家を守ろうとする。  家と少し似ているのが家族だ。こどもは親に守られていて、家にパッケージングされている。親は基本的には選ぶことが出来ず、親と子は宿命の関係になりがちだ。宿命な親子は物語になる。それだけで話が駆動する。そう

    • 『百の太陽/百の鏡』刊行記念トークイベント 新井卓×小林エリカ 光の眼差すところ

      ダゲレオタイプで撮られた写真はなんだか虚ろに見える。現実の一瞬を捉えるのではなくて、折り重なった時間の層を全て含んでいるのかしら、情報量が渋滞している。それを自分の脳は処理することを拒否しているのかしら、「虚ろ」で誤魔化そうとする。「虚ろ」の深淵を見つめる。その時間は潜行の体験で、自分の内奥への問いかけのようだが、答えはその都度違うし、いつしか言葉を見失う。 新井卓という芸術家がまとう「ヤバさ」についてかんがえる。対面した際の物腰の柔らかさは、一見「ヤバさ」の対極にあるよう

      • 『夫婦間における愛の適温』刊行記念トークイベント向坂くじら×紗倉まな適温をさぐる私たち

         「言葉」に愛されている人。詩人、向坂くじらさんの文章で使用される「言葉」は、置かれるべき場所を完璧に把握していているうえに、通常の響き以上の意味を盛ったり、効果をあげられるよう計算されているように感じる。大仰な言い方をしてしまったが、実際そのように大仰なことを無理なく、どこか余裕すら感じさせる散文に仕立てあげているから、ついつい安易にこう評してしまいたくなる。向坂くじらはまぎれもなく「天才」である、と。  百万年書房から刊行された『夫婦間における愛の適温』は言ってしまえば

        • 『現代詩ラ・メールがあった頃』刊行記念トークイベント棚沢永子×文月悠光疾走する詩誌、その激動の物語

          「現代詩ラ・メール」をご存知でしょうか?1983年から1993年のあいだ、全40号が発行された伝説の詩誌です。 新川和江と吉原幸子。ふたりの詩人が編集人となって「女性詩」の系譜をつなぎ、女性アーティストをフィーチャーすることを念頭に編纂されておりました。 吉原さんの対談連載は名物企画で、毎回多彩なゲストを迎えて、熱のこもった対話を掲載。新しい才能をかかげる詩人の船出を後押しし、その活躍の舞台としても機能してました。 その知られざる舞台裏が開陳されているのが『現代詩ラ・メールが

        佐久間薫『お家、見せてもらっていいですか?』書評

        • 『百の太陽/百の鏡』刊行記念トークイベント 新井卓×小林エリカ 光の眼差すところ

        • 『夫婦間における愛の適温』刊行記念トークイベント向坂くじら×紗倉まな適温をさぐる私たち

        • 『現代詩ラ・メールがあった頃』刊行記念トークイベント棚沢永子×文月悠光疾走する詩誌、その激動の物語

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        記事

          声がしても 声がしても もう遠くのほうで 雷鳴をきいても どうかおしえて いやおしえないで ひみつをかかえて いやかかえないで わすれてもいいように それを大事にしたように たったのそのたったの どっかの公園の まちあわせはいつものそこ どっちかしんない おしえてくんない わすれないように どこでもいって でもぜったいかえってきてね っていったのいつだっけ? みんなの祈りを ろうかの先の しるしの場所の まいごの子らの みんなの祈りを まい夜の庭の ぼ

          バスのって

          夜はまだはじまらない むきだしの鉄骨に光はまだあたらない 見なれた空気を吸って 聴きなれた声をおもいだす 少しはなれていて 地図をひろげて ペタペタと歩く人 けむり吐く円筒 よそゆきの言葉でさがして 見つかった気がして 追い抜かれたたずんで こういうことは起こりえるのか? 逡巡して 建築というのは何をふうじこめようとしたのか 少女は問い 「桃とか都市とかあるいは記憶?」 東京の全ての窓は輝く 全てのプールが流れる 残った人 車 カラス ペン

          バスのって

          追跡のための二行詩

          打ち明けたことは 全て内緒じゃないからね 休日のミナゴロシ つづきは今度にする 切手貼った果物 ほうり投げた夕方 感情的な人形に託した 思惑にはタイムラグが ビルでも家電でも思慕でもなく これは川に似たなにか 偶然知っていた 全然語れないこと 企みに便乗か 消滅するがどうか 流木発生に立ち合う 燃えさかれ地球 第一声、狂ってる あらゆる扉はしまった 残忍な距離 平凡すぎた約束 まわってまわって軌道

          追跡のための二行詩

          真夜中にランチ

          まずはじめに清潔な服に着替えたら どこからともない誘いの風をうけて よろよろ歩きだそう そこいらじゅうでうけとる 手紙をしまってしまって どこからもまねかれて どこまでも歩きだそう わかったら電話してほしい だいたいいつでも いるからみんな たくましいことをしたら たからかになるラッパ よそゆきの帽子に つめたおくりものを 両手で空に えがいた来月の予定を この手帳はあなたが 生まれた年のもの と言った なにもしない日 なにもしないしかしない日 その日をどう過ごすかかんがえる

          真夜中にランチ

          everyday

          つぶれたヒキガエルをみた Sさんのことが好きだった 博士の愛した数式が3冊売れた つぶれたヒキガエルをみた Sさんのことが好きだった 博士の愛した数式が5冊売れた つぶれたヒキガエルをみた Sさんのことが好きだった 博士の愛した数式が売り切れた つぶれたヒキガエルをみた Sさんのことが好きだった 博士の愛した数式がこない Sさんのことが好き つぶれたヒキガエル Sさんのことが好きだった 博士の愛した数式が50入った Sさん Sさん 入らない 博士の愛した数式70注文で50 ヒ

          愛の詩の、

          それからのこと 「ずっーとなだらかな道がつづいて ぼくはあてもなく歩いてるわけで 荷物や目的もないにこしたことはないだなんて うそうそで 歩いてるうちにみつかるはずだし 恋人は盲目だけど もうぼくをみつけることは できてるわけだし 「タイヘンなことはある?」 ってぼくがきくと 「ない」 って笑うし 雨がふると ぼくはすぐに傘をさすし わかりづらい意味の言葉は なるたけ使わないし 暴力に有効な知恵は 親と友達がおしえてくれるし このなだらかな道のさきには さらになだらかな道がつ

          愛の詩の、

          ディスコ・フラメンコ

          祝福 ファック パッション 芸術はエロスに寄り添う タナトスは忠実な番犬 避雷針 広島 風俗街の天使 四次元の住人 わたしは今 ガンジス川下る ドザエモンのコレクター ポコポコ見つかるみたい 生きること 死ぬこと 水面映る キレイ事 戯言 わたしは赤い 火曜日の夜は 一人でもパーティー また対岸でわたしが生まれる リズム 腰のグラインド クラッシュ データベース 毎日がベーシック 全て書かれたアカシック 真夜中に一人アルコール わたしは赤い わたしは赤

          ディスコ・フラメンコ

          birth

          まだ廃墟ではない この空中庭園の窓越しに ヒビ ピシッ 色素のうすい顔 金はいくらあっても足りない 坂道登る一群の 白い 息 そのての夢はわりとよくみる 歯を磨くのは一日おき 中三日でもけっこう気にせず カーテンを開けると 独り言でも無口なたち 部屋は大通りに面していて だいたいいつも震度1 女が右に左にゆれている どうにもならなくて ただおなかはへる ラミネートされた左手は リモコンを探すためだけに存在する くねくねして白目で語って黒目は性器 あ

          ナサニエルとフローレッタ

          ナサニエルとフローレッタ わたしたち仲良し 裏原でお買い物してるの かわいい日傘が売ってるお店と雑貨屋さんの路地抜けて 楽園にいたれば ナサニエルとフローレッタ おなかがすいてくる   ラーメンの味するキャンディなめて わたしたちは真夜中のストレンジャー ためにならないのはどっち? どうせわたしらビッチ? みつからないコンセントをあきらめ インストールしてあなたの背中を蹴り上げたのわたし ねえ、フローレッタ そばかすなんて気にしないで そのキスマークなんとかすれば い

          ナサニエルとフローレッタ

          宣告

          今 風吹く暗渠に おれは 鳥とティッピ・ヘドレンに向き合い 煌々と月光背に おまえと セックスをしている 中央線に選ばれたおれは ゴールドラッシュなおまえを抱いて チカチカと 点滅を繰り返す 引き金を引くやるせなさ 生き死にの曖昧を 歴史教科書の少年兵 その口元に見て こっそりと おれ達のセックスは 上映されている

          サブリミナル

          ある場所 ある時間 「ここにしよう」 足跡をのこす その裏で回転するよ 空の天井にひっかかって 風船みたいな帽子 残さず食べたら 足跡をのこす 空気 軌道を逸れ いつになく いつにない 傘? 色彩 赤い 爆ぜる バチッ バチッ 物語 降る しばし ありふれる ふれて 「ここがいいとおもう」 シャリッ 霜柱 よくものをなくす癖 を 忘れてる ここで 一端 おわる 塗り潰された黒が記号論的冒険を繰り広げたエピソードが挿入される  (ひどいわ あんまりだわ わたしヒステリッ

          サブリミナル

          プレミア

          ラストステージは幕引きむかえ 枯れ尾花 咲き誇る庭園をあとにする 二十七年間眠りに眠り アストロノーツのみる夢は マザーシップのクラッシュ 残光をたよりに 花崗岩に刻まれた兆し 自らの明滅のうっとうしさ にごった語尾 世紀末の宿題は回避 予言通りの未来を廃棄 殺伐と砂漠 明け暮れる賭博 夜の帳おりる セブンがならぶ かさねがさねの奇跡に飽きて 愛想笑いで 飛び込むプール ループして 全財産をプール 幽閉中の黄昏 ストライプ描く太陽光線 値札とバーコ