目標設定と過剰な明晰さに抗うこと
こんにちは。noteでプロダクトマネージャー(PdM)をしているじつぞんです。note社は11月決算という珍しい会社で、この6月から下半期がスタートしています。7月からが下半期という会社では、今まさに今年の初めに設定した目標を評価し、来期の目標を設定しようというところだと思います。この記事では、僕の目標設定の考え方をまとめます。どなたかのお役に立てば嬉しいです。
この記事で言いたいこと
目標設定というのは、組織にとって大事なものであるがゆえに論理的な明晰さが求められます。しかし、時には過剰に明晰さを求めてしまうことがあります。論理的にわけたすべての数値をカバーしようとしたり、そのために単純な分解をしてしまったり。この記事の中では、割り切れないものも認識して受容しよう、むしろ積極的に諦めよう、ということを書いています。そこに至る考え方と、目標を決めること自体の目的、実践的なテクニックを合わせて書いていきます。
世界は不条理である
突然の哲学を失礼します。小説家で哲学者のカミュ(代表作『異邦人』『ペスト』)が言うように、世界というものは単純に理解できない不条理なものです。人間が真理だと認めるもので世界をある程度説明はできるものの、それはあくまでも暫定解です。地球がかつては平らだと信じられていたように、ある時点での了解に過ぎません。
何が言いたいかというと、世界でも、市場でも、会社でも、プロダクトでも、チームでも、家族でも、完璧に把握しコントロールするというのは無理なのです。僕は前提としてその考え方を持っています。
明晰さが失わせるもの
しかし、論理的に世界を把握しよう、という人間の本能的な欲求が現代の繁栄を生んでいます。明晰さへの欲求がなければ、僕がインターネットのnoteというサービスで文章を書くなんてことは成り立ちません。論理的、科学的に世界を1つずつ解き明かすことで僕たちは進化しています。
ただその一方で、世界を無理に割り切ってしまうと、本当はたしかに存在するグラデーションや現時点の科学では説明しきれないものが排除されてしまいます。「人間には男と女しかいない」と言ったときに、生物的にはそうだとしても精神的や文化的にある多様な性別(あるいは無性別)は存在ができません。たとえば人間の多様性は、以下のツイートのように言葉ではとても言い表わせられないイメージになるのではと思います。
組織やプロダクトの目標にも同じことが言えます。MECEでロジックがパーフェクトな分解をして、各個人の目標に当てはめることはできますが、そこには本来大事にされるべき要素が存在できていないかもしれません。たとえばInstagramが持っていたオシャレさやニコニコ動画が持つ創作への熱気は、わかりやすく証明できるものではないでしょう。各組織やプロダクトが持つ「色」をグラデーションと共に尊重する、という積極的な諦めをする勇気が目標設定には必要だと僕は思います。
目標とは光を選択すること
数多ある選択肢の中で、到達すべき未来(会社だとミッションが実現された未来)に進むために「今はここを歩く」という宣言をすることが目標を決めるということです。逆に言うと「この道は通らない」と選択することです。「すべての道を通る」というのは無数に道がある現代では相当無理筋です。
道の選択は明晰であることが必要です。なんとなく判断したのではなく、僕たちが限りある明晰さの中で精一杯決断したものであるべきです。明晰さを求めるのは世界との終わりなき戦いです。他方で、同じ方角にあるはずだが選択されなかったもの、という明晰さから漏れた光を認識することが大事ではないでしょうか。
説明できないけど大事なもの、それは未来と現在の道筋に確かにいるが目印にするには僕らの知性が足りない、と謙虚に認める勇気が必要ではないでしょうか。OKRでObjectiveとKeyResultsの間にある"何か"を、Objectiveを信頼することでなんとか回収しようとする、その覚悟と柔軟さのある目標設定が理想だと思います。光に照らされなかった絵の部分は存在しないのではなく、まだ見えていないだけです。
「納得」のために陰を抱擁する
前述のように目標というのは焦点を合わせることです。何のためかというと、効率よく未来に向かうためですが、明日の一歩においては僕たちが納得してパワフルに踏み出すための道具です。明晰さはその「納得」において大いに役立つでしょう。やはり共通言語として論理はとても有用です。「『納得』は全てに優先するぜッ!!」と言われるように「納得」があれば人は力強く踏み出せます。また「納得」は論理の正確さだけで組み立てられるものではありません。明晰さという光の陰で確かに存在している宝があります。その陰をうっすらでも認識し抱擁することで、僕たちの本当の「納得」は作られるでしょう。わからないけど大事なものを、わからないけど大事であると認める勇気が僕たちをさらに前に進めます。過剰な明晰さは、薬も飲みすぎると毒になるように、判断を誤らせる要因となりえます。
実践編:状態目標を前提にする
ようやく、という感じですがじゃあ具体的にどうするんだ、という問いへの解答が以下の記事です。筆者さん本当に良いまとめをありがとうございます!
つまり、最優先すべきは状態目標の適切な設定です。明晰さと陰の抱擁を持って納得できる目標にすり合わせる。そして行動目標で着実に状態に近づく。僕が上記を意識してよくやるチームでのアプローチを以下に書いて終わります。目標設定とチームビルディングを同時にするやりかたです。
チームみんなで目標についての情報を揃える
確実なもの、捨てるもの、見えてないが重要なことをチームメンバーそれぞれが発散することによってあぶり出す
チームの状態目標を対話によって導く(ステートメントシートというのを使ったり、「チームが優勝(比喩)するとどうなる?」というのを書いたりします)
評価者たちと一次チェック
行動目標を決めていく(数値調査や達成につながる行動の列挙と優先順位づけ)
行動を定期的にふりかえりしつつやっていき
「優勝」というのは僕が「Objective」の代わりに使っている独自の語彙です。優勝するチームのつくりかた、みたいな記事を今度書けたらなと思っています(追記:書きました!)ので、ご興味あるかたはフォローしてお待ちいただけると嬉しいです。
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