記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

書籍紹介 岬龍一郎『「仕事」論 自分だけの「人生成功の方程式」をつくる』

1.はじめに
 本書は、仕事と人生の成功に関する深い洞察を提供する一冊です。著者は、アインシュタインの成功の方程式に着想を得て、自らの成功の方程式として以下を提示しています。

「仕事の成功 = 志(大志)×意欲(情熱・熱意)×才能(努力)×魅力(人徳・人柄)」

 この方程式を軸に、著者は歴史的偉人や著名な思想家の教えを引用しながら、各項でのアドバイスを展開していきます。

2.仕事を通じて人生の成功者になる
 著者は、志を最初に置く重要性を強調しています。「何があってもへこたれない」という「忍耐力」と「意欲」の重要性を強調し、これらが成功の鍵であると説きます。

 たとえ仕事に苦しもうと楽しもうと、能力や才能に差があろうと、「何があってもへこたれない」という「忍耐力」と「意欲」だけは、誰にとっても不可欠なのではないか。そして、これを加味したうえでのあなただけの「成功の方程式」をつくることだ。

出所:本書(P19 )

3.志を立てることからすべてが始まる
 志を持つことの重要性について、著者「大事の前には、どんな小事も油断するな」という諺を引用し、日常の小さな行動が大きな成果につながると述べています。

 やはり、志を貫くことは大変なことである。ありふれた日常茶飯事の所作動作の中に自己規律をつくり、それを守り抜くことだというのだ。
「大事の前の小事」という諺があるのだが、「大事を成し遂げるには、小事の犠牲はやむを得ない」という意とともに、「大事の前には、どんな小事も油断をするな」の意もある。こと「志を遂げる」ということにおいては、後者の意が正しいのかもしれない。

出所:本書(P42 )

 また、日本人としての志を持つことが大切であり、社会のために働くことが真の生き甲斐を生むと強調しています。志を持つことが自己の運命を切り開く源泉です。

 そして、それが楽しいものになるのは、「自分だけ儲ければよいとの私欲よりも、世のため人のために役立っている」との自覚が、生き甲斐を生じさせてくれるからである。
『論語』にも、「命を知らざれば、以て君子たることなきなり」(いまだ何のために生まれてきたかを知らない者は、ひとかどの人物とはいえない)との言葉もあるように、天職を得た人は天命を知ったということであり、極論するなら、この天職を求め探すことが「志を立てる」ということなのである。

出所:本書(P54)

4.自らを鍛え 魅力あふれる人になる 
 
筆者は、幸せとは自分の才能を最大限に活かし、他者の幸せに貢献することで得られるものであると述べています。

「幸せ」になりたい。それはごく普通の人ならば誰もが抱く、ごく自然な気持ちであろう。その「幸せ」像にも千差万別があるだろうが、やはり、自らの才能を努力により最大限引き伸ばして、自分や自分の周りにいる人、さらにはもっと多くの人々に、ひいては世の中の人々が「幸せ」になるために貢献をしていくという生き方こそが、最上であるというのは、誰も否定しがたいことだろう。

出所:本書(P64-65)

 松下幸之助の著書『人間としての成功』を引用し、与えられた天分を活かすことの重要性を強調します。

じつは、この人間として成功することを世間に説いた経営者が過去にいる。晩年期の松下幸之助である。松下電器という大企業を創業し、長年経営者として日本経済の躍進に大いに貢献し、富も名声も得た人物が晩年に探し求めていたのは、「人間としての成功」である。
そのことは、自らの著書『人間としての成功』に述べられている。松下は、「自分に与えられた天分を、そのまま完全に生かしきる」ことこそが「人間としての成功」であり、その〝真の意味での成功〟は、「社会的な地位や名誉や財産が成功の基準となるのではなくて、自分に与えられた天分に沿うか沿わないか、これを十分に生かすか生かさないか」が基準となるとしている。 そしてさらに、「この天分に生きることによって、はじめてほんとうの生きがい、幸せというものを味わうことができる」ともしている。

出所:本書(P65-66)

 また、中村天風の教えを引用し、逆境を自分を鍛える機会として捉える心構えが大切であると説いています。

〈どこまでもまず人間を創れ。さすれば幸福は向こうからやって来る。 それにはまず心を鍛えること。人間が人間として生きていくときいちばん大切なのは、頭の良し悪しではなく、心の良し悪しなのである。人間の本質であるところの心というものを大事にしないところに現代人の過ちがある〉
(中村天風述/財団法人天風会 『成功の実現』日本経営合理化協会出版局)

出所:本書(P69)

5.人の上に立つ者が心得ておくべきこと

 指導者としての心得を十項目にまとめ、具体的な指針を提供しています。

 仕事を通じて自らを鍛え、人生で成功し幸せになろうと志す人ならば、大小の差はあれ、必ず人の上に立つことになり、指導者になる。だから、指導者として心得ておくべきことを知り、日々実践していくことが必要になる。そうした人たちに参考になるようまとめたのが、以下の一〇項目である。
①心身ともに健康である。
②仕事に対して哲学を持つ。
③人間的魅力がある。
④強い意志と行動力がある。
⑤大局観を見る能力がある。
⑥自己啓発がある。
⑦孤独に耐えうる力がある。
⑧演出力がある。
⑨人材育成の能力がある。
⑩尊敬されるところがある。

出所:本書(P90-91)

 また、部下の諫言に耳を傾けることの重要性にも触れています。

 君子たる者、一流の幕賓を得るためには爵禄(身分と俸禄)を惜しむことなかれといっている。この例にならって、関ヶ原での西軍の総大将・石田三成は、参謀役兼家老として島左近を迎えたとき、自分の領土の半分を差し出したという。
いずれにせよ、進言してくれる部下、 忠告してくれる人などを近くに置き、つねに耳を傾ける姿勢を保つことができるか否かで、リーダーとしての優劣が決まるのかもしれない。

出所:本書(P99)

6.よりよい人間関係があってこそいい仕事ができる

 人間関係のバランスを保つことが、仕事の成功には欠かせないと強調しています。伊達政宗の言葉を引用し、自分を客として捉えることで謙虚な心を持つことの大切さを説いています。

 では、人間関係のバランスを保つとはどういうことか。伊達政宗という戦国大名がいいことをいっている。自分を主人公と考えているから不満が生じるのであって、この世に客に来たと思えと。「伊達政宗五常訓』にこうある。
「仁に過ぎれば弱くなる。義に過ぎれば固くなる。礼に過ぎれば諂いとなる。智に過ぎれば嘘をつく。信に過ぎれば損をする」と。さらにこのあとこう続く。
「気ながく心穏やかにして、(中略)この世に客に来たと思えば何の苦もなし。 朝夕の食事は、うまからずとも誉めて食うべし。 元来、客の身になれば好き嫌いは申されまい」
なるほど、たしかに客として来た以上は遠慮というものが必要で、出された食事を「まずい」などとはいえない。どんなものでも「ありがたい」と感謝するのが礼儀というものである。となれば、人間関係も「俺がオレが」とシャシャリ出ないで、つねに謙譲の精神を持って一歩引いて考えれば、角が立つこともなく、穏やかに過ごすことができる。

出所:本書(P120-121)

 また、縁を大切にすることが良い人間関係を築くために重要であると述べています。

 その意味は縁尋機妙のほうが、「よい縁はさらによい縁を尋ねていき、その様が奇妙である」ということで、多逢聖因とは、「よい縁に交わっていると、知らず知らずのうちによい結果に恵まれる」ということである。ともに縁が人脈を増やし、人生を開き、縁を大切にしろとの教えだ。

出所:本書(P130 )

7.逆境がある仕事と人生ほど素晴らしいものはない

 逆境に対する積極的な心構えを持つことが、人生を明朗で勢いのあるものにするために重要であると説いています。天風先生や森信三の教えを引用し、逆境を乗り越えるための心構えを具体的に述べています。逆境を成長の機会と捉え、それを乗り越えることで得られる成長と幸福について述べています。

「天風先生の、逆境について取り上げた次の言葉はまさに至言である。
〈幸福になりたいならば心を積極的に保て。さすれば人生はどんな場合でも明朗、颯爽、溌剌と勢いの満ちたものになる。そのためにはまず「困った」「弱った」「できない」「悲しい」といった言葉は悪魔の言葉と思って意識的に排除しろ。 そうすればどんな逆境でも乗り越えられる〉 (中村天風述/財団法人天風会 『成功の実現』日本経営合理化協会出版局)

出所:本書(P139-140)

「〈宇宙の根本的な統一力を、人格的に考えたとき、これを神と呼ぶ(とするなら)、わが身に降りかかるいっさいの出来事は、実はこの大宇宙が、そのように運行するが故に、ここにそのようにわれわれに対して起きるのである。かくしてわが身に降りかかるいっさいの出来事は、その一つひとつが神の思し召しであるという宗教的な言い表し方をしても差し支えないわけです。(だとするなら)わが身の上に起こる事柄は、そのすべてが、この私にとって絶対必然であるとともに、またこの私にとって、最善なはずだというわけです。それ故われわれは、それに対していっさいこれを拒まず、素直にそのいっさいを受け入れて、自己に与えられた全運命を感謝して受け取って、天を怨まず人を咎めず、否、怨んだり咎めないばかりか、楽天知命、すなわち天命を信ずるが故に、天命を楽しむという境涯なのです〉森信三著『修身教授録』 致知出版社、※()内は筆者補足)
これを森は「最善観」と呼んだ。この言葉は、何ごとも善きこととして受けとめるライプニッツの「楽天主義」と相通じるものであるが、森はさらに進めて「全運命をも感謝して受けとめよ」というのである。とても、われわれ凡人には理解できるものではないだろだが、人生の山坂を越え、挫折を味わい、「まさかの坂」の辛酸に出合ったとき、この言葉は輝きを増す。」

出所:本書(P149-150)

8.最後に~仕事とともに人生という道を楽しんで歩いていく~
 著者は成功の方程式を再び取り上げ、新鮮さを保つためには常に心を「無」にし、初心を忘れずに好奇心と感動の心を持つことが重要だと説いています。宮沢賢治や吉田兼好の思想を引用し、人生を楽しむための心の持ち方を具体的に述べています。
 以上、ここでは紹介しきれない歴史的偉人や思想家の教えの引用と具体的なアドバイスが本書には収められています。仕事を通じて獲得する豊かな人生への指針となり、実践していくためのヒントを得ることができます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?