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ポストSDGsへの道筋、エコシステム社会デザイン

  一般社団法人エコシステム社会機構(Ecosystem Society Agency:略称ESA(イーサ))の設立記念シンポジウム 「社会イノベーションの新メカニズム ~ポストSDGsの答えはエコシステム社会デザイン~」が8月23日にあり、参加しました。

 ESAは、以下の引用のとおり、「循環」と「共生」をコンセプトに公民の共創を促進を目指すことを目的に設立されました。

ESAは、「循環」と「共生」というコンセプトに基づき、地方自治体、企業、研究機関等の共創を促進し、制約条件下でも心豊かな生活を送ることができる持続可能な社会の実現を目指します。あらゆる人・もの・自然・地域が、互いに補い・支え合う関係性のもと、多様な価値を発現できる自律分散・域内循環型の「エコシステム社会」の構築を使命としています。

(出所:ESAホームページ)

1.末次貴英ESA代表理事の挨拶
 末次貴英代表理事(一般 社団法人エコシステム社会機構 代表理事、アミタホールディングス株式会社 代表取締役社長 兼 CIOO)からは、「2020年、「パーマクライシス」という時代に直面する中で、私たち一人ひとりが「社会をつくる当事者」として、どこまで真剣に取り組んでいるのかを問い直す必要がある」との冒頭の発会趣旨の説明、「自らの領域に固執せず、他者との繋がりを大切にしながら、困難な状況の中で価値と豊かさを最大化するような社会を築くという」使命を述べられました。
 また、ESAでは、自治体、企業、団体が「社会をつくる当事者」として構成されていくことを狙っており、イノベーションの創出する機能として以下を掲げています。
・ボトムアップで課題を解決する
・エコシステムとしてつなぐ
・変化の胎動を共有する
詳細は以下のリンクからもご覧ください。

 そのため、に「現場を起点とすること」「点と点を面と面に変えること」「早期に共有し、展開すること」を重視すると述べられました。
 
2.野中幾次郎先生からのビデオメッセージ

 イノベーションと共通善の実現に向け野中幾次郎先生(一橋大学名誉教授)によるビデオメッセージが放映されました。
イノベーションは技術革新だけでなく、社会全体を変革する広い概念です。その中心は人間です。人間の「野生」と創造性を解放することが重要です。考える前に五感を使って現実を感じ、直感や洞察から真のイノベーションが生まれます。個人を超えて、集合知を作り上げることが不可欠です。そのためには産官学の協力が必要です。異なる要素がぶつかり合う中で新しい価値が生まれ、それに挑戦し続けることでこそ共通善が実現されます。

3.田中優子先生の「江戸4.0—未来のエコシステム社会への道標」
 基調講演は、田中優子先生(法政大学名誉教授 江戸東京研究センター特任教授)からです。
 イノベーションの答えは外に求める必要がなく、私たちはその知恵を忘れているだけです。江戸時代は、ヨーロッパやアジアの技術を取り入れつつ、「日本化」して独自に進化させた時代であり、常に「面白さ」や「日本らしさ」を追求してきました。江戸時代は、資源を有効に使い、過剰な消費を避けるような循環型社会でした。節約と工夫が倫理として根付いていました。田中さんは「江戸4.0」を提唱し、江戸時代の知恵と現代技術を融合させた未来社会のモデルを提案しています。このモデルは、効率性よりも「面白さ」や「粋」を重視し、持続可能なエコシステム社会の構築を目指しています。江戸時代の知恵は、未来の持続可能な社会を創るための重要な手がかりとなります。


.鼎談「未来を創るエコシステム社会」
 石田秀輝先生(一般社団法人エコシステム社会機構OPaRL研究代表、地球村研究室代表、一般社団法人サステナブル経営推進機構理事長、酔庵塾塾長、東北大学名誉教授)、田中先生、末次代表理事による鼎談です。それぞれの視点から未来のエコシステム社会について意見を交換し、その実現に向けた道筋を考えました。

 
(1)OPaRLの紹介
 OPaRLは、ESAの基礎研究部門であり、地球環境問題の解決に向けた研究を行っています。

 生物多様性の喪失、窒素循環の乱れ、気候変動、マイクロプラスチック問題などに焦点をあて、2030年までに解決策を見出すことを目指しています。人間活動が自然の修復能力を超えない範囲での生活に向け、「奄美群島の沖永良部島には、一つの地球以下の環境負荷で暮らす世帯が多く存在すること」を定量的に説明し、「沖永良部島の暮らしを下敷きとして、多くの低環境負荷ライフスタイルを定量化できるモデルの研究を進め」ています。
 その研究成果を企業と連携しながら、公開シンポジウム等で発表していく予定とのことです。
 
(2)エコシステム社会の本質
 石田先生は、エコシステムの本質は「お互いに影響し合いながら持続すること」であり、その実現を呼びかけました。末次代表理事は、日本の「日本化」というプロセスがエコシステム社会の構築に役立つと考え、田中先生は江戸時代が限られた資源を有効活用し、「面白さ」を追求した点をポイントとしてお話されました。
 
(3)集合知とエコシステム社会の構築
 石田先生は、暗黙知を共有するプロセスが重要だと述べ、田中先生は、それが社会システムとして成り立つような継続性を求めました。末次代表理事は、コミュニティのつながりの強化から新しい価値を生み出す力を引きだすことの必要性を述べました。
 
(4)制約の中で豊かに生きる
 田中先生は現代の競争社会が若者に自己肯定感を失わせていることを懸念し、石田先生からは、そうならないように新しい価値観の構築が転換期だと述べました。末次代表理事は、エコシステムの本質はゴールがなく、持続可能な価値観の共有が大事だと述べました。
 
(5)新しいエコシステム社会の構築
 3者は、地域とコミュニティとの連携が不可欠である点、資源を循環させるビジネスモデルの必要性は一致しておられ、強調されました。その点で田中先生は江戸時代の情報交換の重要性を振り返り、コミュニティが新しい価値の源になるとも述べました。
 
4.まとめ
 私は前半部分のみの参加となりましたが、今回のシンポジウムは非常に示唆に富む内容であり、エコシステム社会の未来に向けた深い議論を拝聴できました。
 エコシステム社会の構築には、集合知の創造が不可欠であり、個人を超えた協力とつながりが必要だという点も重要な示唆でした。共に創り出す力があってこそ、これからの社会での持続可能な発展を可能にしていくものと感じました。
 限られた資源を有効活用し、面白さや粋を追求することで、効率だけではない豊かさを生み出すことができるのかもしれません。現在の社会が抱える様々な問題に対しても、今回、例にあった江戸時代の文化や風習、沖永良部島の方々が培ってきた自然との接し方や知恵が現代の技術と融合し、統合していくことで諸問題への解決策が見えてくるかもしれません。
 ESAから説明会の案内が届きましたので共有いたします。本日(9月5日)掲載時点では、10日(火)10時からと12日(木)14時からのオンライン参加が日程的には可能です。以下のリンクからご確認ください。私も参加します。


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