佐々木正美氏の子育て論 -待つ-

私の子育てにおいて「我が子を信じていいんだよ」と本を開くたびに背中を押して励ましてくれた佐々木正美先生の著書は、私の運命を切り開いてくれた命の恩人のような子育てバイブル本である。


私は育児に迷っていた。彷徨ううちに深みに入り込んでしまっていた。何も考えなしで感情のままに生きていた大馬鹿で若かった頃の自分とは人格が変わる程、子どもを産んで思慮深くなった。

子育ては「待つ」ことが肝要だと佐々木先生から教えて頂いた。その子育ての中での「待つ」は、時に途方もなくしんどいものになる。それでも子どもを待つことは、見守ること、焦らせないこと、あなたのペースで生きていっていいんだよ、あなたを信じている、という姿勢そのものだ。その子なりの「成長を待つ」のだ。



私は待ってはもらえなかった。元来とてものんびりしているのに、いつも追い立てられ、後から生まれる兄弟たちのために、一番上に立つものであるのならばしっかりしろと言われて育った。環境が許さなかったのだろう。しかしそれは条件付きであって、私自身をまるごと認めてもらえるものではなかった。

私は待ってはもらえず、いつも意味がわからなかった。状況を把握できなかった。わかっていないまま、進まねばならなかった。いつしか私は未完成で未成熟で、そして不完全であるという感覚が拭えなくなってしまった。

佐々木先生の著作に触れて、そうだったのかと自分の苦しみの理由を静かに悟った。その状態を指摘されたようだった。私はずっと辛かったのだ。


だから自分の子どもには、私のようにはならないでほしいと、ゆっくりと自分の足で一歩一歩踏みしめながら生きていってほしいと願った。「待つ」を第一信条として子育てをしようと決めた。

そして私の息子も時間がかかる、ゆったりとした流れを生きるマイペースなタイプで、私の子らしいとも思った。

時にそんな我が子に、待てども待てども響かないことに焦りすぎて、待つが出来なくなって失敗したことも何度もあったけれど、そのたびに佐々木先生の「待つ」ことの大切さが頭をよぎった。子どもだった私と若かりし母の姿が、同時によぎった。私が体験したことを自分の子どもに引き継いではならない。瀬戸際で私は、なんとか踏ん張ることが出来たのだ。

私の育児は無我夢中で疾風怒濤で右往左往であったが、おおむね待つことについては出来たかと思う。二の舞は踏まずに済んだ。息子は大らかにのびのびと悠々と生きている。「あぁ、これでいいんだ」と彼らしく生きる日々の姿に、私自身の人生を生き直しているような感覚に陥る。佐々木先生の著作によって導かれた、私たち親子の幸せと再生を噛みしめるのである。

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